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運動は「薬」に劣らない:認知機能改善に同等の効果

▼ 文献情報 と 抄録和訳

アルツハイマー病および軽度認知障害者を対象とした身体活動に関する無作為化対照試験のメタ分析とドネペジルとの比較

Pisani, Sara, et al. "A meta‐analysis of randomised controlled trials of physical activity in people with Alzheimer's disease and mild cognitive impairment with a comparison to donepezil." International Journal of Geriatric Psychiatry 36.10 (2021): 1471-1487.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ ハイライト
- 無作為化比較試験では、身体活動がアルツハイマー病(AD)および軽度認知障害において有益な効果を持つことが示唆されているが、この介入が薬物療法と比較してどの程度効果的であるかは分かっていない。
- 今回のメタアナリシスは、これら2つの臨床集団において、身体活動の効果をドネペジル(ADで一般的に使用されている薬)と比較した初めてのもの。
- 身体活動の効果はドネペジルの効果と同等であった。

[目的] 運動は、アルツハイマー型認知症(AD)や軽度認知障害(MCI)の患者にとって有益であると考えられる。しかし、運動に関するランダム化比較試験(RCT)では、相反する結果が示されており、一般的に使用されているコリンエステラーゼ阻害剤であるドネペジルと同等の効果が得られるかどうかは不明である。

[方法] Embase、Medline、PsycINFO、PsycARTICLES、SCOPUSで、ADおよびMCI患者を対象に、運動を対照条件と比較したRCT、およびドネペジルをプラセボと比較したRCTを検索した。効果サイズは、前後のMMSEおよびADAS-Cogスコアから算出し、ランダム効果メタ分析を用いてプールした。

[結果] 運動のメタ分析には、19件のRCTが含まれた(AD、N = 524、MCI、N = 1269)。運動は、AD群(Hedges' g = 0.46)およびMCI群(g = 0.63)のMMSEスコアを改善した。MCI群では、ベースラインでMMSEスコアが低かった人ほど、運動の効果が強く現れた(p=0.022)。ドネペジルのメタ分析には、18のRCTが含まれた(AD、N = 2984、MCI、N = 1559)。AD患者では、ドネペジルは認知機能を改善したが(MMSE g = 0.23、ADAS-Cog g = -0.17)、MCIでは認知機能の改善を示す証拠はなかった。

[結論] 身体運動は、AD群とMCI群の両方で認知機能を改善した。比較が可能な場合には、運動の効果サイズは一般的にドネペジルと同等であった。これらの結果は、運動がADおよびMCIに対する効果的な介入であるというエビデンスベースを強化するものであり、今後の臨床試験では、ADおよびMCIに対する最も効果的な介入を決定するために、コリンエステラーゼ阻害剤に加えて、運動の種類、強度、頻度を検討する必要がある。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

臨床研究の本質は比較することである
「臨床研究の道標」福原俊一

薬との比較!これほど説得力のある比較があるだろうか?
「薬を飲むのと同じくらいの効果が、運動にはあるんです」と胸を張って言える。

EIM:Exercise is Medicineという言葉がある(>>>参考サイト)。
多くの分野で運動の威力が実証され、「もはや薬レベル」との捉え方がある。
死亡リスク、骨強度、抗がん、若返り、炎症抑制、疼痛軽減、認知機能改善、脳構造の改変・・・
古代、アリストテレスは、いま辿り着こうとしている結論に達していた。

生命は運動にある
アリストテレス

ミクロな理論的なことは、たぶん枝葉だ。とりあえず、運動セヨ。

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