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骨格筋内脂肪組織(IMAT);運動介入のメタアナリシス

▼ 文献情報 と 抄録和訳

慢性疾患患者の異所性筋間脂肪組織を減少させる運動トレーニング;システマティックレビューとメタアナリシス

Tuñón-Suárez, Mauro, et al. "Exercise Training to Decrease Ectopic Intermuscular Adipose Tissue in Individuals With Chronic Diseases: A Systematic Review and Meta-Analysis." Physical Therapy 101.10 (2021): pzab162.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ ピンポイントハイライト
有酸素運動(例えば、ウォーキング/ジョギング、サイクリング)を単独で、あるいはレジスタンス運動(フリーウェイト、ケトルベル、ジム機器を用いた筋力トレーニング)と組み合わせて行うことは、特に慢性疾患を患っている成人において、筋肉に浸潤し、筋肉の機能と成長を損なう脂肪線を減少させるのに有効である。

[目的] 本研究の目的は、慢性疾患を有する成人集団において、骨格筋内の異所性脂肪(筋肉間脂肪組織[IMAT])に対する運動トレーニングの効果を評価することである。

[方法] 関連するデータベースで文献検索を行い、開始当初からの無作為化対照試験(RCT)を特定した。選定した試験は、有酸素トレーニング(AET)レジスタンストレーニング(RT)、または複合トレーニング(COM)が、非侵襲的な磁気共鳴画像やコンピュータ断層撮影で評価されたIMATに及ぼす影響を調べたものである。適格性は、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先報告項目)を用いて判断した。データ抽出は、集団(P)、介入(I)、比較(C)、結果(O)、タイミング(T)、設定(S)のアプローチで行った。方法論的品質は、Cochrane risk of bias assessmentにより分析した。標準化されたエフェクトサイズ(ES)と95%CIを算出した。研究間の不均質性は、I2統計を用いて定量化した。サブグループ分析およびメタ回帰分析を行った。出版バイアスのリスクはEgger回帰検定で調べた。

[結果] 19件のRCTには、異なる慢性疾患を持つ成人962人(女性628人、年齢幅=34.8~93.4歳)が参加し、AET10件、RT12件、COM5件の介入が行われた。研究の質は中程度であった。全体的に、運動のIMATに対する効果は、運動を行わない場合や対照的な介入を行った場合に比べて小さかった(ES = 0.24; 95% CI = 0.10~0.37; 異質性I2 = 0.0%)。中程度の強度のAETとCOMは、強度にかかわらずRTと比較してESが大きかった。この効果は、運動による体重および脂肪量の減少と関連していた。サブグループ解析の結果、IMATをCTと比較して磁気共鳴画像で評価した研究では、高齢者と比較して成人と中年で、また他の診断と比較してHIV陽性の参加者でESが大きかった。

[結論] 慢性疾患のある18歳から65歳までの人では、中程度の強度のAETとCOMがIMATを減少させる。この効果は、運動による体重および脂肪量の減少と関連している。虚弱な高齢者や進行した病期の患者では、運動によって逆説的にIMATが蓄積される可能性がある

[影響] 慢性疾患のある人では、IMATの蓄積により、筋肉量や筋力の低下、身体能力の低下、炎症、代謝の変化などが引き起こされる。今回の研究では、中強度のAETやCOMがこれらの状態でのIMATの蓄積を予防・抑制することが示された。このように、骨格筋のホメオスタシスに対するIMATの悪影響は、適切に処方された運動療法によって元に戻せる可能性がある。今回のシステマティックレビューの結果は、運動の治療的役割を強調し、最終的に疾患の経過、機能の回復、自立にプラスの影響を与える運動処方の推奨事項を提供するものであり、理学療法士や医療関係者にとって非常に重要なものである。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

IMATが筋力低下の直接的な下手人であることが、華麗な方法で証明された論文を紹介した。

今回の論文は、その犯人であるIMATを捕まえ、なんとかする方法の効果について書かれている。
しかも、【Physical Therapy】である、信頼できる。
結論としては、有酸素運動 or 有酸素+筋トレの複合運動が有効らしい。
エルゴメータ or トレッドミル介入をデフォルトにしてもいいかもしれないが、高齢者に対しての効果については、今後さらに検討される必要がある。
エルゴメータが直接的に筋力をあげるのではなく、エルゴメータが筋内脂肪を減らすことで筋力の向上が期待できる
今回のIMATに対する一連の知見は、僕にとって発芽だった。早速、日常を変えてみようと思う!!!

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