ケアパスウェイ:Transitional Careの新たなプラットフォーム
▼ 文献情報 と 抄録和訳
外傷性脳損傷後の最初の6ヵ月間におけるケアトランジション;CENTER-TBI研究からの教訓
Borgen, Ida MH, et al. "Care transitions in the first 6 months following traumatic brain injury: Lessons from the CENTER-TBI study." Annals of physical and rehabilitation medicine 64.6 (2021): 101458.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 外傷性脳損傷(TBI)による急性期入院中および入院後のケアトランジションを調査した大規模な国際研究はない。目的は、TBI後の最初の6ヶ月間における様々なTBIケアパスウェイとそれに関連するトランジションの数を特徴づけ、人口統計学的要因と傷害関連要因を考慮した上で、これらがTBIの機能的転帰に与える影響を評価することである。
[方法] 本研究は、Collaborative European NeuroTrauma Effectiveness Research in TBI(CENTER-TBI)研究に登録された様々な外傷センターに入院したTBI患者を対象としたコホート研究である。トランジションの回数と特定のケアパスを特定した。多重ロジスティック回帰分析を用いて、Glasgow Outcome Scale-Extended(GOSE)で評価した受傷後6カ月の機能的転帰に対する移行回数とケアパスの影響を評価した。
[結果] 合計で3133名の患者が急性TBIのケアパスを通り、6か月後のフォローアップで少なくとも1回の院内移行が記録されていた。転移回数の中央値は3回(四分位範囲は2~3回)であった。移行回数は6ヵ月後の機能的転帰を予測しなかった(オッズ比1.08、95%信頼区間1.09-1.18、P=0.063)。合計378の異なるケアパスウェイが特定されたが、少なくとも100人の患者で同一のケアパスウェイが8つあり、「共通パスウェイ」と呼ばれた。これらの共通ケアパスウェイのうち5つは、6ヵ月後の機能的アウトカムの改善を予測し、残りの3つのパスウェイはアウトカムとは無関係であった。どちらのモデルにおいても、年齢の上昇、傷害原因としての暴力、傷害前の全身疾患の存在、頭蓋内および傷害全体の重症度、南/東ヨーロッパの地域は、6ヵ月後の機能的転帰が悪いことと関連していた。
20人以上の患者を対象としたケアトラジェクトリー。ICU:集中治療室、HCU:ハイケア・ユニット。
[結論] TBI患者、特に重症患者には、多様で複雑なケアパスが多く見られた。このようにケアパスの可能性が多く、多様であることから、今後の研究においては、標準化と「TBIケアパスの共通データ要素」の開発が必要である。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
まず、図が秀逸だと感じた。 #どうやって作るの ?
発症後、様々な施設軌跡を辿ったことがよく分かる。
そして、この研究の重大なところは「インフラ整備」の要素があることだ。
この研究が発展し、多種多様な疾患の、多種多様なアウトカムに対して、ケアパスウェイの影響が明らかになったとしよう。
その未来では、医療現場ではこういうことが起こるかもしれない。
股関節骨折で、男性、年齢80歳、身体機能は〇〇、病前は〇〇。じゃあAコースで行けば6ヶ月後には日常生活が全自立する可能性が90%ですね。では、ケアパスAコース第一選択でいきましょう。
発症後超早期に、発症後6ヶ月までに辿るべき「道」が明らかになってしまう。
現在地と目的地が決まれば瞬間にルートを示してくれる「カーナビ」に似ている。
その他にも、このケアパスウェイ構想はたくさんの用いられ方がありそう。
たとえば、患者の機能予後に悪影響を与えるパスウェイが特定されれば、そこの環境整備に力を入れるとか。
とにかくも、今後のトランジショナルケアにおける主要なプラットフォームとなりうる概念だ。
とはいえ、まだまだこの道の路面工事は進んでいない。
どのような道をつくるかは、これからの僕ら次第だ。
まずはこのような鳥の目をもって、臨床に臨みたい!!!
われは道を探す 道なくば道をつくる
古代スカンジナビアの紋章
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