リサーチクエッションのつくりかた:②実践につながる効果的な勉強方法
CQを感じたら、いきなり臨床研究を実践してはいけない。勉強によって、既知と未知を分け、その後FINERのフルイにかけ、優れたCQ(≒RQ)であることが明らかとなってから臨床研究に着手すべきである。(CQの中からどのようにリサーチクエッションを厳選するのか?)
今回は、その中でも勉強 Studyについて深掘りします。
そのCQが学術体系の未知かどうかを明らかにするために、勉強が必要です。
「はい、じゃあ勉強してください」といわれても、行動できないのが僕たちです。
知ることと、行動することは、別個のものです。
「医理に詳しければ、治療ができるのか」と、玄白が「形影夜話」に書いているのを蔵六は読んだことがある。玄白はこの設問を否定した。医理にいかに詳しくても臨床はできない、それはちょうど馬術の本だけを読んで馬を御そうとするようなものだ、と玄白はいう。
花神(中)
勉強を実行に組み入れていくためには、勉強の方法自体を知り、実践していく中で身につけていく必要があります。
今回は、Super Humanが実践する効率的な勉強方法を紹介します(あくまで個人的な一例であって、一般的なものではありませんのでご注意を)。
▶︎勉強の4つの流れ
勉強の4つの流れを以下に示しました。
1. Clinical Question(CQ)に気付く・意識を向ける
2. CQをPICOやPECOの観点から捉え直してみる
3. 文献検索 → 勉強をしてKnowledge Gapを明らかにする
4. いま、研究すべき課題なのか、研究すべきとすれば具体的に何を研究するのか?
今回は「下肢装具の装着に難渋した脳卒中症例に対して執筆者が実際にとった思考・勉強」を例にします。
順を追って説明していきます。
▶︎1. CQに気づく・意識を向ける
これは前回までの説明に含まれますが、CQを見つけるプロセスです。
このプロセスでは、とくに自分が臨床上解決しにくい難渋点は良質なCQにつながる可能性が高い印象を持っています。
そして、見つけたCQを無くさないようにメモや記録ができることも重要です。
本症例の場合「どうやったらこの方の装具装着が自立できるだろう?」が生のCQでした。
▶︎2. CQをPICOやPECOの観点から捉え直してみる
CQが見つかったら、そのぼんやりとした疑問をPICOやPECOの観点から捉え直してみます。
「PICOとPECOってなんですか?」という方は日本理学療法士協会のEBPTの実践手順ページを参照してください。
PICOやPECOの観点から捉え直すことで、その疑問を「調べやすい(検索しやすい)形」に転換できます。
本症例に関して言えば、「どうやったらこの方の装具装着が自立できるだろう?」と検索サイトに入力しても、うまく検索結果を得ることができないのです。
実際、PICOのフレームワークを用いた方がより多くの関連論文をヒットさせることができることが明らかになっています [Schardt, 2007]。
ですから、その質問を以下のように転換することが必要になります。
▶︎3. 文献検索 → 勉強をしてKnowledge Gapを明らかにする
いよいよ、PICO・PECOの観点から下ごしらえされたCQから勉強を開始します。
<Step1:検索し文献を収集する>
文献を検索する前に、いきなり調べ出してはいけません。
PICO・PECOによって下ごしらえしたCQを用いるのです。
そして、コツは最新のレビュー論文を探すことです。
「なぜレビュー論文か?」
答えは、圧倒的に早いからです。
原著論文や学会発表は、極端には「これまで先人たちが築き上げてきた学術体系の上に立って、踏み出した次の一歩」だけの記録になります。そのため、これまでの学術体系についてを一気に勉強するための教材にはなりにくいです。木でいえば、新たな枝葉です。
一方で、レビュー論文とは、「これまで先人たちが築き上げてきた一歩一歩をまとめますと、こういうことが言えますよね」というもので、これまでの学術体系についてを一挙に勉強するために最適の教材といえます。木でいえば、すでに確立されてきた幹です。
では、具体的な検索方法に移ります。
Super Humanは「google scholar」の利用を推奨します。
理由は以下の3つです
①学会発表か論文化が一目でわかる
②期間指定が容易に可能
③引用(Citation)機能が使える
このgoogle scholarの期間指定(執筆者は最新10年間にすることが多い)をした上で、検索ワードを打ち込みます。
検索ワードは、下ごしらえされたCQのPatientやInterventionなどを入力します。
レビューや総論を検索したければ、検索ワードに“review”、“総論”、“総説”、などを加えてもいいでしょう。
そこから文献を収集し、google sholar上で論文がダウンロードできれば検索終了です。
Google scholar上でダウンロードができない場合には、メディカルオンラインで再検索をかけたり、紙印刷を検討したりします。
<Step2:収集された文献からKnowledge Gapを明らかにする>
次に、収集された文献から得られる情報を、総合し、整理します。
本症例の場合、装具の装着困難という問題に対して、「装具の改造といった構造面からの報告は多いが、その患者が装具をどのように装着するかという装着方法についての報告は少ない」ことがわかりました。
▶︎4. いま、研究すべき課題なのか、研究すべきとすれば具体的に何を研究するのか?
以上の勉強からKnowledge Gapが明らかとなりました。
勉強によって至る結論は、次の2つしかありません。
①勉強によって疑問は解決し、個人のCQは学術体系にとっての既知であることが判明した
②勉強によって疑問は解決せず、個人のCQが学術体系にとっても未知であることが判明した
①の場合は、勉強を終了します。
②の場合は、研究すべき課題であると判断され次のステップへ進みます。
この段階では、「具体的に何を研究するべきなのか?」を明らかにします。
本症例の場合には、「足が組めない方の装具装着とくつの装着を自立できる方法を考案・実践し、その有用性を検証する必要がある」ということが研究課題となりました。
この勉強の最後の段階で研究すべき課題であると判断されたCQは、FINERのフルイにかけられ、最終的に優れた疑問であればRQとなります。
▶︎まとめ
■ 勉強が必要であるということを知るだけでは、勉強という行動に結びつかない。勉強方法自体の勉強が必要
■ PICO・PECOフレームワークを用いることで、効果的な検索を行うことができる
■ 文献収集では、まずは最新のレビュー論文から入った方が効率的である場合が多い
■ 勉強の結論は、「解決」か「未解決のため臨床研究が必要」の二択
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