入院関連機能不全:メタアナリシスにより10のリスク因子が明らかに。
📖 文献情報 と 抄録和訳
高齢者における院内機能低下の患者関連リスクファクター。システマティックレビューとメタアナリシス
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 機能低下(FD ≒ 入院関連機能不全)は、入院中の高齢者によく見られる深刻な問題である。目的この系統的レビューとメタアナリシスの目的は、高齢者における院内FDの患者関連リスク因子を特定することである。
[方法] このテーマに関する過去のレビュー(1970~2007年)およびPubMed,Embase,CINAHLの各データベース(2007年1月~2020年12月)を検索した。含まれる論文の参考文献リストをスクリーニングした。急性期老人病棟または内科病棟に入院した高齢者の(入院前から)退院までのFDの患者関連リスク因子を調査した研究を対象とした。研究の質は、修正Newcastle-Ottawa Scaleを用いて評価された。プールされたオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルを用いて推定された。エビデンスの質は、GRADEを用いて評価した。
[結果] 29の研究が組み入れ基準を満たした。以下に統計的に有意な危険因子をオッズ比の高い順に列挙する。なお、ナラティブシンセシスでは、病院前のFD、歩行補助の必要性、低体重指数などがさらなる危険因子として示唆された。
[結論] 入院時にFDのリスクのある高齢患者を特定するために使用できる、いくつかの患者関連の院内FDの危険因子が特定された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
「専門化」&「チーム医療」、近年の医療体制のキーワード。
各科が専門化して、より深く、より狭く。
そして、各専門科が協働して、理想のチーム医療を!
確かに、聞こえはいい。
だが、その実、総合的人間としてのあなたの担当医は誰なのか?、という問題が出てきていないか?
たとえば、「私はあなたの主治医です」ではなく、「私はあなたの胃がんの主治医です」になってきているということ。
その外科医に「あの・・・、なんだか足が弱くなってきている気がするのですが・・・」と言っても、「胃がんはきれいに切除しましたよ。足のことは・・・、私は専門外なので分かりませんね」とあしらわれる。
わかりやすくするために、デフォルメした、ひどい医師を登場させたが、それに近い会話も多くなされているのではないだろうか。
その中で、「入院関連機能不全」、この弊害は年々明らかにされつつある。
そして、いまのところ「入院関連機能不全科」や「入院関連機能不全医」は存在しない。それが、何を意味するか?「私は門外漢なのでね」と軽視され、極端な場合、黙殺される。近年の医療において、専門科がない・専門医がいない領域は、着手されない可能性が高まってきているから。
胃がんの手術後、ずっとベッドの上で寝ていても何も言われない。それでは機能も低下するであろう。
『入院関連機能不全』とは、近年の高度な専門化が引き起こした、新たな問題の1つかもしれない。そう思っている。
ただ、嘆いていてもはじまらない。現在の医療体制の中で考えうる、入院関連機能不全を防ぐ方法とは何だろうか。
そして、今回の研究によって明らかになった10のリスク因子は、危険の大きい患者の特定を可能にするツールの作成に役立つ。
たとえば、今回の10のリスク因子からチェックリストを作成し、入院時に担当看護師がチェックをつける。そのチェックリストが3つ以上当てはまった場合、①リハ介入マスト、②入院関連機能不全ラウンドマスト・・・、といった具合に対応とリンクさせておく。
現代医療における「ミイラ取りがミイラになる」現象、入院関連機能不全。
「病気を治しにいったら、違った病気になる」、それでいいのだろうか。
いいわけがない!
なにせ、その大きな構成因子の1つは「不活動による廃用」。
思いっきり、理学療法士の守備位置ではないか。
総合病院に勤務している僕には、常日頃から肌に感じている切実な問題だ。
目を逸らすな。真正面から、問題に取り組め。
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