
映画「室井慎次 生き続ける者」感想
前編を観ず、後編だけ鑑賞。
でも、大丈夫。
最初の5分くらいで「ああ、だいたいわかりました」という感じなので。
逆に前編が気になってきました。
こんな5分で説明できることを2時間かけて描いてるの?
そして、本編が始まると、令和とは思えない演出。
音楽を鳴らさないでほしいところでバンバン鳴るBGM。
テレビ屋の悪い癖。
地方にやってきたよそ者と地元民との軋轢の描き方が昭和過ぎる。
昔は本広監督、好きだったんだけどなあ。スタイリッシュで。
ただ、時々、「いい画」が入る。
まあ、昔からこの監督はそうだった気もする。
基本、ダサいのに、時々、かっこいい画を入れてくる。
ということは、ダサダサな画づらはひょっとしてわざとなのかもしれない。時々、昔の映像を使った回想シーンが入る。
ああ、これは室井さんの話にかこつけた「総集編」なんだな、と気づく。
ある意味、「劇場版パトレイバー2」。あるいは「ローガン」。
以下、ネタバレあり。
もうすでに公式もネタバレしている通り、最後に青島が出てくる。発表前から「まあ、そうなんだろうなあ」という気はしていたので驚かなかった。「デッドプール・ウルヴァリン」のスナイプスのほうが衝撃的だった。あるいは、「フラッシュ」の映画版のジョージ・クルーニーとか。だから、正直に告白すると、「どうやって青島が登場するんだろう」というのを確かめるためだけに劇場に足を運びました。あと、室井さんの死が描かれることも知った上で観に行きました。
いちばん気になったのは昭和な演出。
ひそひそ話をしていたら本人がやってきて気まずくなるとか、いかにも昭和なヤンチャしているお兄ちゃんたちとか。食卓の場面とかも「北の国から」かよ、と思うくらい昭和でした。というか、BGMが時々、「北の国から」っぽくなるのもやめてほしい。
物語も散漫で、ステレオタイプで、どこに向かっているのかわからなくて、室井さんが引き取った小泉今日子の娘の部屋にノックもせずに入り、勝手にリュックを開けるシーンに至っては、あまりに室井さんが「こいつ、やべえ」って感じで、笑わせたいシーンなのかなんなのかもう謎過ぎて頭がバグりそうになりました。
そんな「昭和な物語」で、室井さんが引き取って育てている高校生の男の子が好きになる女子が1人異彩を放っていました。
魔性の女すぎる。
「ああ、これは絶対男をダメにする女だ」と思っていたら、やっぱり男の子がフラれてしまう。
途中まで、いったい俺は何を見せられているんだ、と混乱させられていました。
唯一、僕の大好きな矢本悠馬さんだけがまるで「ザ・ノンフィクション」のようなストーリーの中で癒しになっていました。
が、室井さんが小泉今日子さん演じていたサイコキラーの娘に猟銃撃たせるあたりから急に物語のトーンが変わってくるんですね。
それまでクソ女のようだったその子が、突然、倉本聡のドラマの登場人物みたいにいい子になっちゃって、「カンニバル」より怖い町の人たちも急に優しくなっていく。
かと思ったら、急にSATの突入シーンみたいなのも入ってきて、緊張感も増加。
さらに加藤浩二さん演じるダメダメな父親も登場。
加藤さんはこの映画の中でMVPといってもいいですね。「ブラックペアン」の時も思いましたが、完全に「役者」でした。
で、その加藤さんと室井さんのバトルの後で、逃げ出した犬を追って室井さんは亡くなってしまうわけなんですが、ここからはひたすらズルい。
それまで昭和臭プンプンの「ザ・ノンフィクション」的地獄絵図でどこに向かっているのかよくわからない映画が、雪山で行方不明になった室井さんを捜索するシーンから突然、「踊る」になるんですよ。
「ああ、この感じ、完全に『踊る』だー」となる。
多くの人は「事件は会議室で~」とかスリーアミーゴズとかに「踊る」を感じると思うんですが、僕にとっては、あの捜索シーンこそが「踊る」なんですよね。
それまでユルい刑事モノだったのが、真下が撃たれたところから急に「ただごとではない」感じを出してくるあの雰囲気。
そこでもうすべてを許してしまいました。
映画館に観に行ってよかったあ~って。
で、まあ、最後に裕二さんが出てくるわけですが、正直、怖かったですね。
20年前と同じコートを着て、同じ感じで現われる青島が。
いや、わかりますよ。あのグリーンのコートがトレードマークというのはね。
でも、室井さんが味のある大人になっているのに、まったく変わってない青島はヤバイでしょ。
なんか自分がイメージしていた登場シーンではなかった。
僕がイメージしていたのは、あの家で仏壇に手を合わせて、「室井さん、なんで先行っちゃうかなあ」と言いながら、出されたお茶を泣き笑いの表情を浮かべながら飲む、ちょっと出世した青島だったのに。
それだったら、もういっそ、潜入捜査員にでもなっててほしかったよ。
ファンが観たいのは「懐かしいあの姿」ではないんですよ。
室井とはまた別の年の取り方をした青島なんです。
髪もオールバックにして、黒い公用車で乗り付けてきてほしかった。
あーあ、そういうところがやっぱりフジテレビ。