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極楽浄土ー4(極楽に住む鳥・その1)
さて今回は極楽にいる鳥の話。
仏になれるのは「人」だけ。本来動物は「畜生」の分類だから、極楽に行くことはできないはずだが、何故か鳥だけは存在している。
しかし、鳥なら何でも良いわけではない。ということで、どんな鳥がいるのか見てみよう。
『阿弥陀経』には「極楽には、いつも色とりどりの珍しい鳥がたくさんいて、昼夜三度ずつ優雅な音色で啼いている」とあり、その鳥は白鵠・孔雀・鸚鵡・舎利・迦陵頻伽・共命之鳥で、これを「極楽の六鳥」というらしい。(なお、経典によって「三鳥」だったり、「十鳥」だったりすることもあるようだ。)
まず「白鵠」。これは「鶴の一種で、白鳥または天鵞ともいう」といわれている。鶴と白鳥は違うと思うのだが……「天鵞」の「鵞」は鵞鳥だし。
「鵠」は「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」の「鵠」で、大型の白鳥「クグイ」のことだから、元々は白鳥を指しているはずなのだが、「白鵠」の部分が「白鶴」になっている経典もあって、曖昧だ。
西本願寺御影堂内陣の祖師前の前卓は「六鳥彫の前卓」といわれ、極楽の六鳥が彫刻されている。そこに彫られた「白鵠」の説明には、「全身白色で、頸が長く嘴に黄赤色の瘤をつけた鳥で、とても高いところを飛翔するので天鵞とも言われ、雁よりも少し大きい」と述べられているという。
私としては、天空高く飛ぶ吉祥な鳥のイメージから、鶴だということにしておきたい。
次の「孔雀」は皆よく知っている、あの羽の美しい孔雀だ。しかし孔雀の素晴らしさは羽だけではなく、『増一阿含経』には「孔雀鳥は九法を成就す」とあるらしい。
その特徴は、下記のとおり。
(1)顔かたちが端正である
(2)音声が清く澄んでいる
(3)歩き方に秩序がある
(4)時を知って行く
(5)飲食に節度を知る
(6)満足することを知る
(7)一心に物事を考え思う
(8)睡眠は少ない
(9)小欲にして報恩を知る
また、インドでは孔雀は毒蛇や毒蜘蛛を食べても平気でいられると昔から言われており、この解毒力が神格化されて、「孔雀明王」となり信仰を集めるようになった。
このようなことから、極楽に住むのに相応しい鳥と考えられてきたようだ。
さて、「鸚鵡」。仏教説話にはオウムが登場する話がいくつもあり、たとえは『雑宝蔵教』の「オウムの消防」という話では、「ヒマラヤの竹林が火事になり、そこに住むオウムが体を水に浸して竹林に水を撒いたが、到底追いつかない。オウムの志を感じた帝釈天が大雨を降らして火事を消した」となっている。
他の話でも「善い行いをする鳥」として描かれているようで、姿の美しさと合わせて極楽に住む鳥となったようだ。
だが、一番の特徴である「モノマネが得意」ということを忘れてはならないだろう。おそらく極楽の鸚鵡は、仏様方の話をそのままそっくり覚えて伝えることができるので、ありがたい説法を語る鳥として存在しているのではないかと思う。
日本語で話してくれれば良いのだが。
四番目の「舎利」。サンスクリット語の「シャーリー」の音写で、九官鳥の類であるらしい。現在インドでは、「マイナ鳥」と呼ばれているようだ。
全身が黒色で、頚部と脚とが黄色を帯び、くちばしはだいだい色で、鶉ぐらいの大きさ、あるいはスズメの二倍ほどの大きさという。
この鳥も、鸚鵡のように人の言葉を暗誦できる利口な鳥ということなので、仏の言葉をそのまま伝える鳥として選ばれたものと思われる。
ここまでは、この地球上にも存在する鳥だったが、残り二つはこの世には存在しない想像上の鳥である。
まずは「迦陵頻伽」。サンスクリット語の「カラヴィンカ」の音写で、「好声」「好音鳥」「妙音鳥」などと訳されている、鳴き声が最高に美しい鳥だ。
現在、インドでブルブルと呼ばれるナイチンゲールの一種とされる鳥が、実在の鳥の中でもっとも迦陵頻伽のイメージに近いと言われている。
中国や日本では、人頭・鳥身の姿で表されることが多く、天人が空を飛びかけるように描かれる。(ネットで「迦陵頻伽」を検索すると、たくさんの絵や像が出てくるので、ご参照下さい。)
『大智度論』には、「迦陵頻伽は生まれる前の、まだ卵の殻の中にいるときから、すでに美しい声を出す。その妙音は他の鳥より優れている」と紹介されているらしい。
仏典では、仏の澄みきったさわやかな声、人の心をやわらげる美しい声が、しばしば迦陵頻伽の鳴き声に例えられ、その声を聞く人は飽きることがないという。
さて最後は「共命之鳥」だが、長くなってきたので一旦ここで記事を分けることにする。あまり時間を置かずに次も投稿する予定なので、しばしお待ち頂きたい。
<参考>
『阿弥陀経のことばたち』
著者:辻本敬順 発行:本願寺出版社 2001年
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