トルストイ 復活から冒頭 春
雨水の末侯2月29日~3月4日
🌱そうもく めばえ いずる (草木萌動)🌱
春を表現した文章に感動
トルストイ 復活 訳 中村白葉
何十万という人間が一つの小さな場所へ集まり、そこで互いにせり合って その土地をみにくくしようとどんなに骨を折ったところで、
また その地面に何もはやさないようにと、どんなに石を敷き詰めたところで、
また萌え出でてくる草を一本残らずたんねんに取りつくしたところで、
また石炭や石油でどんなにいぶしたところで、
またどんなに木を刈り込んだり、鳥や獣を追っぱらったりしたところで
ーーーー春はやっぱり春であった、都会の中にあってさえも。
太陽が暖めると、草はよみがえって、根こそぎにされなかったところならどこでも、
並木街の芝生の上ばかりでなく、敷石のあいだからさえ萌えだして、いたるところ青い色を見せてくるし、
白樺や、白楊や、みざくらなども、ねばりのある香りたかい若葉を開き、菩提樹ははぜた新芽をふくらましてくるし、
鴉や、雀や、鳩なども、春の喜びにみちて、はやくも巣の仕度をはじめ、日あたりのいい壁には、蝿がぶんぶんうなっていた。
こうして植物も鳥類も、昆虫も子供も、みな嬉々として楽しんでいた。