薬草・薬樹デビュー 61 松③ 生薬名 松脂 気味苦 性質 温 帰経 心、脾、腎 中村臣市郎マツ考② 松脂大収穫
1度でいいからアカマツ林が見てみたい。
毎年行く長野には植林されたカラマツ林があります。マツはマツでもマツでない。秋になると黄葉し、落葉するカラマツ。その黄葉した稜線が美しくて大好きな景色でうっとりと眺めるのでした。
カラマツは薬樹ではないらしい。
中村臣市郎先生の想像を絶する山中生活体験から
驚異の循環器疾患と鎮痛剤「松・赤松」
2023.02.21
山間に生えている樹皮の赤い赤松であった。
単なる松林ではない。
どれも樹齢400年にも達する櫨木、大木が蒼空を割って赤竜のように幹が螺旋状を描いてそそり立っていた。
これは凄い、と唇を噛む。
首を左右に降りながら松林を獲物はないかと探索した。
とその時であった。
一番大きな赤松の根本の上の樹皮が大きく割れてそこから白いジャムような濃密な液体が湧いて幹の下に向かって流れて肥圧して固形になっている。
むろん赤松の樹液である。
見事な松脂である。
これは物凄い、と唖然としてしばらく凝視してため息を飲む。
松脂は消炎、殺菌、鎮痛作用があり打撲傷や関節痛などの湿布薬として使われているものだ。
この量だとここだけでもバケツ半分ほどあるな。
泥で汚れた歯を剥きだして唾をはく。
まだないのか、と辺りを見回す。
すると背後の三本の幹や太藺枝に樹皮の裂目から松脂が水晶の原石のように凝固している。
まさに薬物の塊だ。
竹で作ったヘラで樹皮にしがみついている濃密な粘土質の松脂をこさぎ落とす。
猛烈な松脂の独特な芳香が空気中に充満した。
これは食料というよりも打撲や裂傷などに外用薬として使おう。
これはえらいものを見つけたな。と低い声で呟いて丁寧にヘラで松脂をうまくすくいとり竹筒に落とした。
松脂は油の塊であるから照明にもなる貴重品であった。
緊急時の光として重要である。
あるいは薪の火がなかなかつかない時に松脂をまけば火に勢いがつくことになる。
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驚異の循環器疾患と鎮痛剤
松 赤松
マツ科、マツ属
薬用部
枝、葉、樹皮、マツ節、松笠、松柱
少なくともその全体が薬用になる。
松は古くから木造建築、船材として使われてきた。
赤松は大型のものは高さ30m、50mにもなる巨大な大木に成長する。
幹の樹皮の色が鮮明な赤褐色でそれで赤松と呼ばれる。
大きくなると樹皮は堅く肥圧しその形は独特な亀甲状に割れる。
葉はしなやかで細く長皮針形、深緑色である。
枝の先端に赤紅色の雌花が1ないし3個つく。
雄花は別の新枝に一個ずつつく。
球果は卵状円錐形、木質で堅い。
種子は長さ5ミリほどの倒卵形で15ミリほどの皮針形の翼がついている。
成分
樹脂はロジン成分のジテルペノイドのアビェチン酸、ピマリン酸、精油、テレピン油成分、ピネン、カフエン、フラボノイドのクエルセチン。
松脂の採集という保存
夏、7月、8月に幹に傷をつける。滲出した生松脂を集める。
これがマツショウシと呼ばれるものだ。
俗にいう松脂である。
これを乾燥したものを松脂(しょうし)という。
さらに松脂を水蒸気蒸留を抽出したものが精油で主成分はテレピン油、その残渣をロジンと呼んでいる。
葉は採集はいつでもいいが新鮮な松葉を採集し、水洗いして陰干し、または生を用いる。
松笠は秋に採集し日干しする。
花粉は春に採集し陰干ししてビンで保存する。
樹皮は生のうちに刻んで陰干しして乾燥させる。
薬用部位の効用
松葉
動脈硬化、高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳血栓の予防と治療
松笠
動脈硬化 、リウマチ、神経痛、腰痛。膝関節炎、筋肉痛、などの痛み
樹皮
動脈硬化、神経痛、コレステロール、リウマチ、腰痛
松柱頭
春先に伸びた新芽、若芽
高血圧、動脈硬化
松脂
筋肉痛、肩こり 外用
松節
リウマチ、神経痛、腰痛、関節炎、筋肉痛
使用法
松葉
陰干しして換装させ刻んだ松葉 5グラムまたは10グラムをコップ五杯の水で20分煎じて食間に三回飲む、
注意、サクラ松を服用する場合は必ず原糖、キビトウ、テンサイトウ、ハチミツのいずれかを適量加える、
これは胃の損傷を防ぐ為である。
松葉酒
まず新鮮な松葉300グラムから400グラムをホワイトリカー1.8リットルを広口ビンに入れてテンサイトウ、キビトウ、ハチミツなど100グラムを加えて冷暗所で3ヶ月熟成させる。
松葉は取り除き1日盃2杯ほどを飲むとよい。
松葉酒の効用
冷え症。血液の浄化と循環の促進。高血圧。高血圧コレステロール。血液の動脈硬化、健胃、食欲不振、滋養強などに。
あらためて文献を見たがその効能の広さに驚いた。
特に解毒、殺菌、打撲や裂傷、筋肉痛、滋養強壮剤として利用すれば何かと重宝する。
これはいいと呟いて松葉1キログラムも採集した。
特に松脂を乾燥させれば打撲や怪我などの傷に有効である
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中村臣市郎先生の山ごもり体験は苛酷。ひとつひとつ自らの体で薬草薬樹を試して、創傷や病気に役立てています。このことを後世に伝えて大切にしたいと思っています。