忘却という幸福
辛い出来事があると、この辛さは永遠に続いてしまうのではないかという錯覚を覚え、早くその辛い出来事から解放されたいと願う。早くその時が来て欲しいと。
あるいは、いずれ忘れてしまうという現実を知っているからこそ、虚しさを抱き、忘れたくないんだとしがみつく。余計辛さが増す。
「辛い時は何かに打ち込むことが大事だよ」という助言をもらっても、頭にこびりついた辛い感情が払拭できないから辛いのである。
日々、ひとつひとつとやるべきことを丁寧にやる。ゆっくりコーヒーをいれる。仕事をする。あいさつをする。お風呂に入る。当たり前だけど、当たり前をやれた自分を振り返り、できてる自分をかみしめる。
そんな日々が続いていくと、ふと大丈夫だと実感できる瞬間もある。
色即是空 空即是色。何もない日常の中にこそ、価値が潜んでいることを身体で感じ、絶望の中から少しずつ光を取り戻そう。