インバウンド的小江戸を歩く ~川越~

俺たちの川越は、駅前ではなく、混雑する駅周辺を迂回する環状道路に沿ったロードサイドをいう。だから別に、川越だからといって、何があるわけでもなく、そこはやっぱり埼玉なのであった。だから小江戸小江戸とかいってアピっているけれど、なんてことはないだろうと思っていた。

しかしこのたび下の子が、どうしてか授業で川越が取り上げられたので、せっかくだから行ってみたいという呼びかけをしてき、渋っていた我々も「まあじゃあ付き合ってやるか」という気持ちになり、「どうせ今日は雪なんだろ」というやけっぱちの気分で、インバウンドど真ん中の小江戸に行ってやることに決めた(偉そう)。

雪は降らなかった。朝から小雨が降りしきる中、コメダで朝食をとった後、傘をさしながら、菓子屋横丁に向かった。とにかく、下の子はここに行きたがっていたからである。

身も蓋もないことを言ってしまうが、インバウンド的小江戸とは、JR川越駅から札の辻交差点くらいまでをさす、と俺は思っている。例えば、この辺。

雑なイメージで申し訳ないが、近隣住民の感覚はそんな感じである。

そして、駅前ではヤンキーに絡まれるのに注意せよ、そう40年前は教えられた。

その父親が若かりし頃のショーケンにカツアゲされた小林くんもまた、川越の百貨店で不良にあとをつけられたから、私に忠告してくれたのである。

ただ、正直、インバウンド的小江戸に行くのにわざわざJRから始めるのは効率が悪いと思う。

むしろ、東部東上線の川越市駅、ないしは西武新宿線の本川越駅から行った方が、近いはずである。

この三つの駅の関係が近隣住民以外にはわかりづらいので要注意である。

観光地化された小江戸とは、はっきり言えば、このあたりを指すのではないだろうか。ただ、それでもリアル江戸は川越城本丸御殿あたりなんじゃないかと思っている。だって、ここが実際江戸時代でも稼働していたんだから。

我々も、川越城は行ったし、喜多院もまあ、行かないことはない。

それは必ずしも、テーマパークされた空間ではなく、実際に必要と教養とに合致するようなリアル江戸だったりするからだ。

しかし、今回は敢えてよそ行きの顔をしたテーマパーク的小江戸空間で雨の中食べ歩く、という暴挙に出てやると近隣住民のくせに、思いなしたのである。

いや、告白すれば近隣とは言えない。ただ、ちょいと車で行けるくらいの距離感に、我々はいる。

そう、今回は先の地図で言う左上の超インバウンドな小江戸空間に、足を踏み入れたのであった。

この空間、意外に広そうに感じるが実際は、直径で2キロない。だいたい早歩きで南端から7分くらいで北端に着けるくらいの感覚である。

黄色が菓子屋横丁領域。
赤が「時の鐘」領域。
緑がコエドテラス領域である。

まあ、分け方は、目分量なので、好きに歩けばいいのだと思う。今回我々は、南端のコメダでちょっとモーニングを食してから、松本醤油店の脇の細い街路を通って、菓子屋横町を目指した。

雨だし、まだ10時前だし、こんなもんである。人で溢れかえるのは、表通り。中心から一本外れて、朝なら、少子高齢化大国日本だから、こんなものであろう。それにしても寂しい、いや寒い。

うなぎ屋が見える。川越だけじゃなく案外埼玉県はうなぎ屋がたくさんあるけれど、ここは変な猫がいる。

なんかいる

そこから少し歩くと菓子屋横丁。初めての経験である。

説明です。なるほど。

軒を連ねる俺らの知ってる駄菓子は「稲葉屋」あたり?書かれてないけど、新たに東京あたりのプロデューサーが立ち上げた店もありました。

入ります。だいたいの店は10:00開店で、直後はそこまで人はいません。雨だしね、寒いしね。

右のコーンが置いてある店舗は、ちいかわショップになるようです。

インバウンドなのか、流行に阿ってるのか、よくわからないけれど、とにかく土産屋界隈は、芸能人ショップとかキャラクターショップとか、案外流行に晒されやすい空間でもあります。

憎まれ口ばかり叩いているようですが、心は案外楽しんでいて、それはキレイだからです。食べ歩きを始めます。

抹茶あらた

まずは、ここ。これは、ニュープロデュース店で、さっきのマップには載ってない。「抹茶あらた」。こののれんの奥に引き戸があって、中でちょっと休める。四人掛けベンチ一台のみだが。

稲葉屋本舗

次に駄菓子屋。「稲葉屋本舗」。

菓匠右門

芋けんぴを買い、「菓匠右門」。奥はそばとうなぎ屋。時間が合えば行きたい。

亀屋

ここで苺大福、辛みもち、芋羊羹の切り端(300円)。

芋ようかんの切れ端をアウトレット

これね。

次に、飴屋の松陸。寛政年間より始まったそうです。

買ったのはちゃんとした芋ようかん。三回塗りの麩菓子。二回塗りのは他のお店にありました。はっか糖も。

いちご飴。

老舗のいちご飴。
思ったよりうまい。

今日初購入者だったから、製造工程を確認、出来立てを食べました。外側のパリパリとした飴部分がちょうど良い薄さで、歯にもつかず、くちどけもよくて、邪魔しない感じ。そして中のいちごはジューシー。おお、思ったよりもうまい。これは良い。

インバウンドだなんだと不満げに歩くよりも、楽しもう。

わらびもち。
いも恋

で、わらび餅と「いも恋」。「いも恋」は結構、芋感強し。芋好きはいいね。

ちょっと休憩しようと、狭山茶を。長峰園。

狭くて急な階段を登ります。

すると、ちょっと広めの、お茶を楽しむスペース。横並びです。4人掛け×2、2人掛け×2。お茶を焙じる香りが楽しめます。

メニュー

こんな感じ。

メニュー2

こんな感じ。これらの上のやつは、お菓子をいくつかから選べます。

頼んだのは、「きぬさ」「かおりくらべ」「さやまきっさこ」「もののふ」。そんな頼んだのかよ、という感じですが、レポートするつもりで。

白湯が出て来ます。白湯ってカルキ臭いと思っていたけど、これは全然違う。鉄瓶のミネラル感がちょっとあるかな。

「かおりくらべ」は、まず、こっちが出て来て、もう一つは、焙じたものをあとから出て来るので、タイムラグがあります。こちらの香りを楽しみつつ、あとからのものを待つのがよいです。

お湯はおかわり自由なので。

さて、「もののふ」賞味します。

葉っぱを眺め、

一周お湯をかけます。

お湯を一周かけて、

蓋をする

蓋をして、砂時計が降りるまで待つ。

で、注いで飲むと、おっ、出汁ですね、出汁。まろやかだけど、一杯目はめちゃ密度が濃い味わいがする。旨い。

40度のお湯、50度のお湯、80度のお湯、90度のお湯を順番に出してくれて、味わいの変化を楽しむ。

まあ、子連れで行くんじゃない感じですね。

緊張感を持って抽出しないと、ちょっとぐだぐだになっちゃうと思いました。

それでもまあ、手摘みのお茶ってこういう感じなのか!と思いましたけどね。円い。渋みが円い。最後まで円い。

これでいいね、子供たちがよろこぶし、ベーシックな狭山茶だ。あと、お菓子。

薄茶。ごちそうさま。

若干、小降りになりましたよ。

正直、ここ歩行者天国にしてくれたらと思うけど、幹線道路的なところに小江戸を加工したんで、順序が逆ですね。仕方がない。ただ、歩くスペースに人があふれるので、結構あぶないです。

長峰園の隣の、出し巻き卵屋に捕まりました。一本300円。

奥に見えるキューポラみたいなのが、コエドテラスです。

次に捕まったのが、ソーセージとか、肉系売ってるミオ・カザロ。

黒豚まんま美味しいです。

長いソーセージも食べました。寒いから、温かいものが食べたくて。

ちょっと寒さをしのぎに、インバウンドばかりじゃなくて、ちゃんと勉強もしないと、と重要文化財大澤家住宅に入ります。230年前に建てられたものらしいです。ということは1800年代?まあ、古いですが、近代みたいなものですね。ナポレオンの登場くらいな頃です。充分古いか。

覚書を読んだら、1792年に建てられたそうです。フランス革命直前くらいね。柱がちゃんと一本の木からとってあって、しっかりしてます。まあ、地震も大きくはなかったという土地柄にもよるかもしれませんが。

このあと、玉こんにゃくを食べました。金笛のアンテナショップで。写真は撮ってませんが、牛筋としっかり煮込んであって、美味しかったです。今回は、弓削多か松本醸造で醤油を買おうと思うので、金笛はまた今度。

そこから少し南下すると、しあわせ稲荷小路があって、カップルにはイイ感じです。結構、カップルが入っていきました。マジで?

奥はこんな感じ。

戻ります。

また捕まりました。今度は味噌屋で、みそまんじゅうみたいなやつ。

いやー、うまいね。うまいけど、みんなで分かちあうので、俺のところに来るときは破片ばかり。腹減った、と言いました。

結構、混んでます。

時の鐘に行きます。ここよりも高い建物を作ってはいけないというけれど、どうなんでしょう?

「一部で、「時の鐘」の高さ16mを超えてはならない地域が定められています」とあるね。

時の鐘

下から見上げます。ふーん、コエド、コエド。

スタバ

スターバックスも小江戸仕様です。那須もそうだっけ。

で、弓削多醤油は、今日やってなかった。おい!と思いましたが、まあ、そういうものです。

近江屋長兵衛本店

で、豆腐屋で、お昼ご飯を。「近江屋長兵衛本店」。

ちょい裏から入って、席に座ります。四人掛け(合席ありそう)×1、一人掛け×4、トイレあり。入り口、分かりにくいです。出口から入っちゃだめよ。

席から売り場を

とうふ盛り合わせ(580円)。

われわれはおぼろどうふセットにしました。あんかけの出汁のかかったおぼろどうふが御飯の上にある。お茶漬けのように食して、盛りっとした豚汁と、おからドーナツがちょっとついてくる。豚汁も美味しいね。豆腐が入っていて、これはここの豆腐だろうと。

おぼろ豆腐セット(850円)

温かい、生き返る。

古い建物。「陶舗やまわ」。

少し南下して、さすがに寒くて、雨なのにめっちゃ混んできたので、裏道に逃れよう、と。行きに通った道に戻り、最後の松本醸造店に。

売り子のおばちゃんのやる気がイマイチ感じられない雑さをちょっとだけ気にしつつも、美味しい醤油を買いました。

さて、家で、駄菓子屋で買った五家宝を開けました。

正直、昔の五家宝は、メシャッという食感といい、甘さがダイレクトに感じられないとか、いろいろ思い出があるわけですが、大人になって、食べてみると、やっぱり、洗練されて来たなと思います。

まず、メシャッした食感、甘さが直接こない、という特徴はそのままですが、あんまり歯にくっつかないような中のもち米のクオリティと、徐々に広がる優しい甘さの、食感から味わいへの流れは、よろしいと思いました(偉そう)。

でも、この3つで、1000円だぜ。そういうもんか。地元だから、あんまりありがたみを感じないんだよね。

飴家「玉力」。これも老舗。

今日は飴玉の風船づくりはやってなかった。もうちょっと先の店舗だけど。

菓子屋横丁入口です。

また、来たいな。

アッ、まんまとインバウンドにとらわれちまった。

なんだろう、インバウンドだろうとなんだろうと、みんなが楽しそうに歩いているのはいいよね。

ゴミ箱もちゃんとあって、あんまり汚くなかった。

あんまりギスギスしてなくて、楽しかったよ。

ちょっと暖かい時期の方がいいね。


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