創作ノート 10
第8章は、そこまで手直しはなかった。
森のエピソードが宙に浮いていたので、「私」の気質と状況に対する伏線と、黒岩さんの家を見に行くことになった契機になったことを書き込み、森のエピソードを閉じた。
森は気持ち悪い人物だが、こういう人はざらにいる。ストーカーとは逆に、次から次へとターゲットを変更するタイプの男性である。これはこれで質が悪い。そして、森は実在の人物であり、日野春と同じ高校で、現実の日野春から高校の時の森のエピソードを聞いた。それはそれで行動原理が同じで笑ってしまうのだが、なんらかのきっかけで中退してしまったのだという。今はどうしているかよくわからない。
越門とか山谷とか、何か使うかもしれない人物を複数挙げておいていたが、山谷は消した。越門だけ残したのだが、志村さんのことを現実に好きだったのは山谷の方である。これは、あるときに日野春から「今同窓会やってるんだー」と電話が来たときに、チラッと山谷に代わって話していたときに、志村さんもいて、山谷がポロっとそのときに言ったことを私が覚えていただけのことである。まだ志村さんが結婚も移住もしてなかった時代だから、30代になったばかりの頃だろうか。若かった。小説内では山谷の代りを越門が務めている。
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こうやって内容を詰めていくと、全体的に構成が緩い。緩くて笑ってしまう。さすが商業作家さんたちは、キチンと商品を作られていることが理解できる。何人もの他者の眼を通さないと設定のズレや、小さなほころびに気づけないんじゃないか。そんな不安がある。なるほど、学びを得た。