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視覚支援をするかは、教師個人で決めてはいけない

自閉症傾向や知的障害の子供のほとんどが、話し言葉のような音声情報よりも、視覚的な情報の方が理解しやすいことは、すでに明らかになっています。

よって、「わかりやすく伝える」ことは、我々現場に立つ教師は当然意識して行う必要がありますし、心がけているはずです。

「わかりやすく」とは情報に「受け取る側にとって理解しやすい」ように配慮しながら、「伝える」ということを意味します。

当然その「わかりやすさ」は1人ひとり違うはずですから、その子の特性に合わせた伝え方をする必要があるはずです。

では、教師はどのように考えて視覚支援を行っていけばよいのでしょうか?

クラスの誰でも使える支援として提供する

必要だと思われる視覚支援を、個人的に使えるように提供するのではなく、クラスの誰でも使える支援として提供するのはどうでしょう?

また、「Aくんは、こんなところに苦手な部分があるから、こんな道具を使って学習するよ」とあらかじめクラス全体へ伝えてしまうのです。

そうすれば、周りは納得しますし、「私も使いたい!」という子がいるのであれば、相談して使わせて構いません。自己選択・自己決定させるうえでも、視覚支援の具体的取組は全体へ共有しておくことは大切です。

主体的な学びへとつながります。

使わなければ、使わなくてよいのです。

「先生が使いなさいって言ったから使ったの」

だと受動的な学びになり、汎化に繋がりません。

自分が必要だと思った場面で自分の意思で使うことができるようになれば、学校生活の様々な場面で活用することができますし、将来的には、就労して社会生活でも使える支援として結びつけることができれば、自立につながるのではないかと思うのです。

視覚支援の代表格 「時間の視覚化」

例えば、視覚支援の代表的なものに、時間の視覚化があります。
具体的にはタイムタイマーが代表とされますが、時間がいつでもどこでも分かるようにする支援です。

「終わりが見えている」

というのは、人はとても安心するものです。私も、終わりが見えない仕事や運動はツライものがあります。

ランニングでも、「5周走ったら終わり!」とか「5km走ったら終わり!」となると、最後まで頑張れるものです。一方で、終わりなくダラダラと走り始めると、すぐに走り終わって歩き出すことが多いです。

「締め切り効果」という考えもありますが、終わりを可視化する視覚支援は、誰もが活動を安心して取り組む上で効果的な支援であり、自閉傾向のある子供にとっては特に見通しを持てたり、明確であったりすれば安心して活動できることにつながります。

「時間の視覚化」の実践例

実は、私も小型タイムタイマーを所持しており、作業中に25分セットし、25分作業5分休憩のポモドーロ・テクニックを実践しています。

授業でも、「10分間、プリントをしますよ」と伝えれば、自閉症の子供でも最後まで集中して取り組むことができます。終わったら、外でサッカーができるや、お絵かきができるなどのお楽しみがあれば、さらに効果的です。終われば、楽しみが待っていると考えることで、活動が苦ではなくなるのです。

「ぼくは、○枚までやるぞ」
「私は、○分間勉強をがんばるぞ」
「時間がいつでも分かるように、机の上に小さいタイマーがあるといいな」
「アナログ時計だと分かりにくいから、デジタル時計がいい!」
「タイムタイマーの方が、時間の確認がしやすいよ」
「タブレットでタイマーをセットしたほうがぼくはいいな」

「終わりを見える化する」

と言っても、上記のように、やり方はいくらでもあるのです。
自分に合った方法を選べばよいのです。
必要でなければ、使用しなくてよいのです。

クラスだと、タイマーをセットして、全員で「○○分までやりましょう」など受動的な時間制限のもとに活動するのはしょうがありません。全体指導ででは、個々の時間設定を設けることは、自由進度学習や習熟の時間でなければ無理でしょう。

「時間が見えるっていいよね」
「使いやすいと思った人は、小さいタイマーを使ってみるといいよ」

など伝えた上で、家庭へ通信等で「終わりの見える化」の方法(タイマーの種類や活用法について)を紹介する。習熟の時間や自由進度学習で、実際に試してみる。通級指導教室や特別支援学級で実践してみるなど、様々な方法が考えられます。

まとめ

「自分が一番いい方法を探してみよう」
「とりあえず、やってみよう」
「色々と試してみて、自分に合うかどうかやってみよう」

とトライアンドエラーを繰り返すことは大切なのではないでしょうか。
それが許されるのが、学校という場だからです。

・視覚支援の方法を子供へ示す。
・実際にやってみて、自分に合うかどうか試す。
・合っているなら、学校や家庭でやってみる。
・自分に合う支援方法として確立する。

でしょうか。視覚支援を使うかどうかは、教師個人で決めてはいけません。しかし、色々と試す場として、学校があると考えることで、将来にわたり、自分を助けてくれるスキルになるのではないでしょうか。

そのような思いを持って、我々教員は、支援を行っていきたいものです。

今日の記事は以上になります。
最後までお読みくださりありがとうございました。

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