なぜ、全校で特別支援教育を推進するのか? ~その背景要因について考える~

最近、全校で
「特別支援教育を推進しよう」
という動きが活発になってきています。

勤務校でも、
ベテランの先生が
現在の子供たちと関わる中で
当たり前のように
「特別支援教育が大切だよ」
と話している姿がよく見られます。

実際、様々な自治体で
特別支援教育をベースにした実践が
盛んに行われています。

では、なぜ特別支援教育が
ここまで広く認知される
ようになったのでしょうか?

特別支援教育を推進しようと、
通常学級の先生たちにまで
求められているのでしょうか?

私自身
特別支援教育を推進する立場です。
当たり前のように
「特別支援って大事ですよ!」
と日々訴えてはいるのですが
「どうして、特別支援教育を推進するの?」
という根本的な問いについて
あまり深く考えたことがありませんでした。

そこで、
今回、その背景要因について
考えてみることにしました。

令和4年9月13日永岡文部科学大臣が
会見を行いました。
国連の障害者権利条約において
初めて日本へ勧告がなされた際の
文科省大臣としての回答です。
その会見で話されたことを基に
いかにインクルーシブ教育推進を強調する
日本としての考えや手立てについて背景要因を
探っていきたいと思います。



インクルーシブ教育の実現のために 

①通級指導担当教員の基礎定数化

通常学級で学習や対人関係で
困難を抱える子供に対して
13人に1人の教員が担当することで、
個に応じた配慮を推進しようとする
ねらいがあります。
現在、通級指導担当教員は
各自治体によってバラバラです。
10人に1人を基準として
通級指導担当教員を配置する自治体もあれば
どんなに人数が増えても
1人で対応しなければならない自治体もあります。
私は後者なので
20人以上を1人で担当しています。
前任者は30人以上を1人で担当していました。
もはや空き時間はなく
1人ひとりに丁寧な支援は難しいでしょう。
しかし

「やるしかない!」

と学校中を走り回っています。

・通常学級での様子の参観
・通級指導
・クールダウンの場所としての活用(子供による)
・不登校支援
・通常学級担任の悩み相談窓口

本校では、全て通級指導担当が担っています。
もちろん、管理職や小人数指導担当が
協力はしてくれますが
基本的に通級指導教室が担当しています。

私は、嫌々やってはいません。

通常学級担任が最前線で
多くの子供の教育、指導、保護者対応を担ってくれていますので、
後方支援としての立場を最大限やるという気持ちでやっています。

通常学級と通級指導の連携・協働
が、学習や対人関係で困難を抱えている
子供に対しての最も有効な手立ての1つであり
特別支援教育の推進のためには
欠かせないと考えています。
その中心が通級指導教室担当なのです。
だからこそ、通級指導教室担当の基礎定数化で
指導者が増えれば、それだけ救える子供の数も
確実に増えていくでしょう。

②特別支援教育支援員の財政支援

早急に行っていただきたいです…!
特別支援学級に在籍する子供で
交流学級に行きたくても行けない子供は大勢います。

しかし、1人ではなかなか行けなくとも
支援員さんが付き添えば行ける子供がいるのも事実です。

しかし、支援員さんの人数が足りないのです…

支援員さんは子供の特性をよく理解し
必要に応じた支援を行ってくれます。
交流学級に行っても、安心して学習に取り組む
ことができるのです。

ぜひ、財政支援を拡充して
多くの支援員さんを配置してほしいですし、
個人的には給与も増額になれば
魅力的な仕事として周囲へ認知されるのではないでしょうか。

③特別支援学級で半分以上過ごす必要がない児童については、通常学級に在籍を変更することを促すとともに、特別支援学級の在籍者の範囲を、そこでの授業が半分以上必要な子供に限る

この内容が言及されたことを、
皆さんがどれだけご存じかは分かりません。
しかし、この内容が意味する
背景を知っておくべきです。

実は、国連の障害者権利条約において
初めて日本へ勧告がなされたのです。
詳細はぜひ調べてみていただきたいのですが
教育新聞では

2014年に国連の障害者権利条約を締結してから、初めてとなった日本への勧告で波紋が広がっている。特に学校教育では、「障害のある子どもの分離された特別教育が永続している」として、中止を求めるとともに、インクルーシブ教育に向けた国の行動計画の策定を求めた。

教育新聞HP 「国連・障害者権利委員会勧告の波紋 日本の特別支援教育の行方」

上記のように記事が書かれています。
現在の日本の特別支援教育を批判し、廃止を求めたのです。
現在の日本の特別支援教育は、
通常学級と特別支援学級の存在は、
障害の有無や能力の高低で学びの場を分ける

「分離教育」

の考え方に基づいており、
障害者権利条約に基づく
インクルーシブ教育に反しているというのです。

「インクルーシブ教育とは、障害の有無を問わず、あらゆる生徒が同じ教室で学ぶこと」
「誰もが一緒に学びながら、個別のニーズを満たすことができる教育制度の構築」
「教育制度は個人のニーズに合わせるべきであり、個人を教育制度に合わせることではない」

障害者権利条約 手引き

手引きにも、このように書かれています。
これに対して、永岡文科省大臣は

・特別支援学校や特別支援学級に在籍するお子様が増えている中で、多様な学びの場において行われる特別支援教育を中止することは考えていない。
・特別支援学級に在籍する児童生徒が、大半の時間を通常の学級、普通学級で過ごし、通常の学級で学び特別支援学級において障害の状態等に応じた指導を十分に受けていない。
・個々の児童生徒の状況を踏まえずに、特別支援学級では自立活動に加えて算数や国語の指導のみを行うといった不適切な事例が散見された。
・特別支援学級で半分以上過ごす必要のない子供については、通常の学級に在籍を変更することを促すとともに、特別支援学級の在籍者の範囲を、そこでの授業が半分以上必要な子供に限る目的としたものであり、むしろインクルーシブを推進するものだ。
・勧告で撤回を求められたのは大変遺憾。引き続き、通知の趣旨を正しく理解していただけるよう、周知徹底に努めてまいりたい。

令和4年9月13日 永岡文部科学大臣 会見録(抜粋・一部改変)

と会見されました。

③の内容は、
・半分以上を交流学級で過ごす子供に関しては通常学級へ学びの場の変更を促すこと。
・特別支援学級に在籍する子供が本当に特別の教育課程が必要であり、特別支援学級での指導が必要な子供に行き届くようにすること。

が目的だと考えます。

「半分以上交流学級に行けるからと言って、学習や対人関係で困り感を有する子供を何も個に応じた配慮をせずに通常学級へ戻すのか!?」

と思われるかもしれません。
じゃあ、どうする?
実は、そのための通級指導教室なのです。

①通級指導担当教員の基礎定数化(13人に1人)は
特別支援学級に在籍する児童を減らす一方で、
通級指導の充実を図るための手立てなのです。

特別支援学級に在籍しており、
半分以上は通常学級で過ごせている
子供に関しては
通級指導教室へ学びの場の変更を促すのです。
そのためには、
通級指導教室担当教員の増員は欠かせません。

④インクルーシブ教育の推進のために

国連からの勧告を受け、日本が世界に向けて
インクルーシブ教育推進のための取組の重要な部分は
通級指導教室の充実なのです。
特別支援学級で半分以上過ごす必要のなり子供について
通常学級に在籍を変更することを促しています。
それでも、特別支援教育の推進を推し進めるためには
通級指導教室が重要になってくるのです。
つまり、通級指導教室は今後の教育の核なのです…!

今回は、
国連の障害者権利条約に関する日本への勧告や
永岡文部科学大臣の会見から
特別支援教育の推進の背景要因について
考えてみました。
通級指導教室の学校における役割が
さらに高くなってきたということは
嬉しいと感じる反面
重責を担うというプレッシャーを
感じている所です。

私自身、
在籍校で特別支援教育を
推進する役割を担っているので

世界や日本の最近の動向について理解し、
先生方へ説明することは非常に重要になってきます。

皆さんも、上記の動向を理解した上で

じゃあ、どうする?

と自分自身に問いかけて、できることから
初めていきましょう。

私は
通級指導教室担当として
特別支援コーディネーターとして
できることをしていきます。

今日の記事は以上になります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。



























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