ボクサーは認知症になりやすい?
先日の記事で、認知症になるリスクファクター(危険因子)として頭部外傷を挙げた。世間一般的にも頭部外傷がアルツハイマー病のリスクになると知られているが、世に広く知られることになったきっかけは「ボクサー脳症」ではないだろうか。
ボクサー脳症とは
現役引退後、数年~十数年経過してからは症状が出現する。
漫画『はじめの一歩』を読んだことがある人であれば、「パンチドランカー」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。ボクシングなどで頭に繰り返し衝撃が加えられた結果、動きが緩慢になる、手が震える、言葉が出にくい、足を引きずるなどの身体的症状と、集中力・記憶力・判断力の低下といった精神・知能障害が出現するものだ。
ボクシング以外では・・・
Q1. ヘディングは認知症の原因になる?
A1. サッカー選手(ヘディングを多用する場合)は、認知症を発症するリスクが1.6倍に高まることが報告されている。ちなみに、ヘディングの少ないゴールキーパーは、一般人とリスクに差はないようだ。
Q2. 頭をたたく芸風の芸人はどうか?
A2. つっこみで頭を叩かれる芸人が認知症になりやすいかどうかについての論文は見つけられなかった。ただし、認知症の夫から長年暴行を受けた婦人が認知症を発症し、剖検(死亡後に解剖すること)にてアルツハイマー病の変化が確認されたという報告はある。ボクシングにしても認知症の夫からの暴力にしても、力いっぱい叩かれ続けた結果認知症となっており、手加減して叩いている芸人では、リスクはそこまで高くないのではないかと考える。
日常生活における認知症のリスク
前回の記事で、若年期・中年期・高齢期のリスクファクターとして、Lancetで提言されている12個を載せたが、食事や睡眠など、テレビや雑誌で取り上げられるようなものに関しては記載がなかった。どのような日常生活がリスクとなり、予防にはどんな生活をしたらよいのだろうか?
食事
脳の炎症酸化ストレスを抑制する抗酸化物質やオメガ3脂肪酸を多く含む食事が望ましい。具体的には魚や野菜、果物、オリーブオイルなどである。
睡眠
アルツハイマー病の原因とされている異常蛋白「アミロイドβ」は睡眠中に排出されるため、睡眠不足は認知症のリスクとなる。
知的活動
脳の神経回路を活性化し、認知機能を維持するのに読書やパズル、学習などの知的刺激が効果的である。
健康診断
高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)などの生活習慣病は認知症のリスクを高める。定期的な健康診断を受けることでこれらを早期に発見し、治療を始めることができる。
ストレス
現代人が抱える大きな問題の一つ、ストレス。
ストレスの溜まった状態が長く続くと、脳の神経細胞や神経伝達物質の機能が低下し、認知機能の衰えが進むと報告されている。
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