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【短編】皆、手足があっても不器用だ。

今日心が転んだ。
スケジュール帳にはそんな予定はなかった。
けど、結構大胆に転んで、たくさん血が出た。
痛い。
涙が出る。

傷口がなかなか塞がらない。
血は止まったけど、傷口は消えていない。
怒りや、憎しみという荷物をその日から背負っているから、飛ぶのが億劫だ。
でも仕方がないから、飛ぶけど、前よりも飛べない。

目の前で、知らない者が大胆に転んだ。
血をたくさん流している。
泣いている。
とても可哀想だ。痛いだろうな。
僕もあの時痛かった。君も同じなんだね。
その者の横を綺麗で傷口も何もない者が通り過ぎた。
また違う者が通り過ぎる。誰もその者を見ない。
見ても笑う者がいた。馬鹿にしたり、眼を塞ぐ者もいた。お金持ちも、貧しい人も変わりなく。

その者は血が止まらなかった。
亡くなってしまった。
誰も助けなかった。

僕は、見ていた。
一緒じゃないか。

行動する一歩は手足があれば出来るのに、
痛いのも知っていて、同じ気持ちかもしれないのに、
求めていたのかもしれないのに、

失ったらもう助けられない。
だから次は助ける。

ごめんね。


皆、手足があっても不器用だ。

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