SUOLA(スオラ)創刊号の制作秘話~傷口に塩を塗るようなNGレシピ集~
皆さんこんにちは。
『SUOLA(スオラ)』の創刊号で恋ヶ浦の塩を使ったレシピをご提案する記事を担当した、フィンランドの首都・ヘルシンキに住む吉田みのりです。
SUOLA(スオラ)という名前について
SUOLAというネーミングの由来はフィンランド語から来ています。その意味はズバリ「塩」。タイトルに塩という名前をはっきり掲げるなんて、なんて大胆な!という驚きは私たちももちろん感じています。
メンバー全員そこまで強く意図していたわけではないものの、結果的にものすごく塩推しの雑誌となりました。しかし、「物事がスムースに行くときは宇宙からの大きなメッセージが送られているという意味なので、そのままの流れに任せた方が良い」という考えをひそかに信じている私自身としては、突然の塩との濃い関係が私たちを思ってもみなかったようなかなた遠くまで連れていってくれるんじゃないだろうかというような期待も抱いています。
それがどんな場所なのかは今は全く予想できないのですが。これもご縁(ご塩)ということで…。それに、塩って本当に大事な存在なんです。そのことは創刊誌のコラムでも触れています。
ボツになってしまったレシピを大公開!
前置きはさておき。今回の創刊号の特集のひとつである宮崎の恋ヶ浦の塩の塩工房から、私が住むフィンランドに試作品用の塩が届いたのは8月のことでした。そこからレシピが出来上がるまでに約1ヶ月を要しましたが、こうして皆さんに美味しい塩を活かすレシピをお届けできる日が来たことを、とても嬉しく思います。
実際に完成したレシピは創刊号をご購入いただいた読者の方々の元にいずれ届きますが、今回のこのnoteでは、完成にたどり着くまでに生まれては消えた、試作の段階でNGになってしまったお料理をご紹介します。ボツになってしまった試作品など、なかなか見る機会ないと思うのです、普段。失敗したのに、さらにその醜態を晒すなんて、傷口に塩を塗るとはまさにこのこと!という感じもあり、ちょっとお恥ずかしい裏話なわけですが、せっかくの機会ですので思い切って公開します!お手柔らかにお願いします。
≪1.ゆず塩コショウとそら豆の直火焼き≫
レシピの主役は何と言っても塩ですので、個性豊かなゆず塩コショウの美味しさとピリ辛さを活かす料理は、旬でみずみずしい野菜とシンプルに合わせるしかない!と思いました。また、ゆず塩コショウの美しい橙色・赤・黄色の塩と、そら豆の健康的な草色がぴったりなのでは、と思いました。庭で自家栽培しているそら豆がちょうど収穫できた頃でしたので、全ては整ったと思っていました。そう思って…しまったのです…。
張り切ってそら豆を皮ごと炙っている様子(この張り切りが伝わるでしょうか…)
出来上がったそら豆さんたち(このホクホク感が伝わるでしょうか…)
出来上がったそら豆を食べてみたところ、美味しい!でもこれは果たして…レシピにしていいものだろうか?炙って塩をかけただけですぜ…?そんな迷いもあり、メンバーに打診したところ「創刊号の発売時期って秋ですよね…」。あっ。と、なりました。
ネットで検索をかけたら「そら豆の旬は4月から6月にかけての時期になります」と出てきました。そうですよね。そりゃ、そーだ。というわけで、美味しさには全く問題がなかったのですが、季節のことを考慮してそら豆さんとはお別れとなりました。でも本当にとっても美味しかったです!イメージは帰国するたびに行く、谷中の『筆や』さんのそら豆でした。
見てください、『筆や』のマスター高山さんの美しいそら豆を
そういえばこの一品をいただいたのもまさに4月でした。フィンランドと日本て、旬の季節がずれてるんですよね。知っているようで、普段つい忘れてしまう事実。フィンランドは寒い。日本は遠い。ヤモリは爬虫類。イモリは両生類。地球はひとつ。
≪2.ブルーベリー塩と鶏の白レバーパテ≫
世の中の大抵の人は、レストランや居酒屋に入ってメニューや今日のおすすめに鶏の白レバーパテがあったら迷わず注文するタイプの人間と、興味なく素通りするタイプの人間の二つに分かれると思うのですが、私は間違いなく前者の人間です。
鶏レバーパテは自宅で作っても美味しいんですよね。自分で作るならブランデーにしたり赤ワインにしたりと、使うお酒も変えられるし、量も好みで変えられる。「今日は大人の味に仕上げよう~」とか言い訳をつけて、ついついお酒の量を多くしちゃったりもするわけですが。ブルーベリーの塩が届いたとき、すぐにレバーパテが頭に浮かびました。ブルーベリーの酸味と甘味がレバーパテのコクと塩気に合うに違いない!と考え、夫のベンヤミンとともに嬉々として料理に取り掛かったのですが、なんだか違和感…。
ブルーベリー塩と鶏の白レバーパテ・第一弾
作ってみて気づいたんですけど、塩だったんですよね、ブルーベリー塩。ブルーベリーじゃなかったんです。当たり前だけど。だから塩気の強いパテがさらにしょっぱくなりました。
どうしたらもっと美味しくなるかなと思って、ちょうどその時期は森にわんさかと野生のブルーベリー(ビルベリーという、ブルーベリーの野生種)が実っているので、ちょっとジョギングついでに摘んできて、パテに添えてみたら甘さと酸味が加わって美味しくなるのではと思い、採ってきました。さらにみずみずしいスパイシーさを加えるために、生姜の千切りも加えたりして。
ブルーベリー塩と鶏の白レバーパテ・第二弾
ジョギングついでに森で摘んできたブルーベリーとエディブルフラワー、生姜の千切りを乗せたら、確かに美味しいしさらに可愛くなったんですけど、これはもはや塩の良さを活かしていないのでは?ということに気づきました。なんでしょう…明太子にうまい棒・明太子味を加えているようなこの感じは…。これぞ味のトートロジーとでも言いましょうか…。ブルーベリーにブルーベリーを合わせるなんて…そんな不必要なことを恥ずかしげもなくグッド・アイディアなどと考えていたなんて…。
この件をメンバーに伝えたところ、「付録でお送りする塩は3種になるから、ゆず塩コショウとさくら塩を使う予定なら、3つ目はごく汎用性の高い白い塩(黒潮水晶の塩)の方が良いかもしれないですね」というお言葉をいただき、ブルーベリー塩さんとはお別れを余儀なくされたのでした。しかしこれからもステーキにつけてみたりと、味わいを楽しんで研究を重ねたいと思っているところです。
終わりに
このような試行錯誤を繰り返し、今回ご提供する6つのレシピが生まれたのでした。その6つはどれも自信作!スープ、前菜、スナック、メインディッシュ、デザートと、良い塩梅のラインアップになりました。
レシピ作りをするときは、より多くの人に、できるだけ美味しく、時に不思議で、時に人生における最大の喜びを感じられるような瞬間が生まれるようなとびきりのものをお届けしたいと常に考えて動いています。重い責任が伴う作業ではありますが、気に入っていただけた時の喜びはひとしお。特に今回は私の生まれ故郷の宮崎(私は宮崎生まれ、6歳の時に東京に引っ越しました)からの美味しい塩ということで、郷土愛をめいっぱい込めてレシピを考案しました。
結晶が美しくてカラフルな3種類の塩(黒潮水晶、さくら塩、ゆず塩コショウ)は、タトゥーシールブランド『opnner』の岩谷香穂さんが手掛けたイラストがデザインされたオリジナルパッケージに入っています。塩を使い終わった後も、インテリアや小物入れとして箱を使って欲しい、というメンバーたちの想いが込められています。
SUOLA(スオラ)について
\10/17(土)、予約注文スタートしました!/
マガジン『SUOLA(スオラ)』の創刊号と、サンゴの海から作られた『恋ヶ浦の塩』がセットになったBOXです。ご予約後は、購入者限定のSUOLAコミュニティにも参加できます。
コンセプトは「はぐくむ人に」。ありのまま、多様なまま、健やかに生きる。そんな未来の種をお届けします。
予約サイトはこちらをどうぞ。
皆さんと、ゆっくり、楽しく、はぐくんでいけたらと思っています。
(SUOLAレシピ担当・吉田みのり)
みまさまからのSUOLAへのサポートは、遠方取材などさらに充実した創作活動や、安定したコミュニティ運営基盤づくりなどに大切に使わせていただきます。