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頚部伸展の代償動作 簡易評価

今回は頚部伸展時の代償動作について解説したいと思います。

上位交差症候群

まず、頚部の機能低下で代表的な上位交差症候群というものがあります。

不良姿勢による筋の不均衡が起こす機能障害のひとつです。


上位交差症候群

このような猫背姿勢が持続的になることで筋機能の亢進・抑制が起こります。

上位交差症候群はチェコのJandaにより提唱されました。(1988)

姿勢により持続的な緊張により短縮するグループと伸張されて弛緩することで筋力低下が起こるグループがX字に交差することで筋のバランス障害が起こる事を発表したのです。

頚部ー胸部のアライメントとしても頭頚部の前方偏位、胸椎の過剰後弯が見受けられ、体表上でも外耳孔からの垂線が肩峰を通過しません。

この時、上位頚椎は伸展、中~下位頚椎は屈曲位の相を呈します。

このように頭部が前方に突出することで頭頚部を支持する深層筋群の弱化が起こり、それと同時に表層の大きな筋が代償的に過剰に働きます。

このことから頚部の伸展時に可動性の減少に関わる3つのポイントが挙げられます。

頚部伸展制限の3つのポイント


頚部伸展制限を考える時に意識するのは後方の支持機能です。

上位交差症候群の場合、大きく3つのことが支持機能に影響します。

①頚部深層伸筋の弱化
不良姿勢による過収縮が持続することで頚部伸筋および背側支持筋の筋力低下を起こします。
また、痛みが持続したり、強い痛みを感じることでタイプII線維(速筋)の活性化が起こり、筋の痙攣などが頻発します。
慢性的な炎症などは脂肪浸潤を増加させ、脂肪による伸展制限や筋力低下にもつながります。

②僧帽筋上部線維の代償
不良姿勢は胸椎の後弯を増強させ、肩甲骨の安定を妨げることからも僧帽筋中部~下部線維の弱化を招きます。
頚部の支持筋が筋力低下を起こすことで、僧帽筋、肩甲挙筋など肩上部の筋が収縮を起こし、頚部の安定を図ります。

僧帽筋の代償は肩甲骨の上方回旋を伴い、大胸筋や胸鎖乳突筋の亢進も見られます。

これにより肩甲挙筋、菱形筋は機能低下を起こし、肩甲骨を不安定にします。これらの筋と筋連結するのが前鋸筋です。

③胸腰部の前弯減少

不良姿勢によって脊柱が伸展しにくくなることで骨盤の後傾、ハムストリングスの過緊張などが起こります。

前鋸筋・腹斜筋は筋連結しているため、これらの機能低下は脊柱の支持機能にも負の影響を与えます。

また僧帽筋下部は僧帽筋上部の過収縮により抑制されてしまうために、肩甲骨の下制を妨げ、胸腰部の立ち上がりを十分に行えません。

僧帽筋上部の代償を評価する

座位

座位は重力の方向が垂直になるため、日常の生活時の再現に役に立ちます。

僧帽筋上部による肩甲骨の上方回旋を抑制すると頚部伸展がしやすくなるかをチェックします。

腹臥位

腹臥位は重力が患者の体の腹側全面にかかります。
腹臥位になることで頭頚部の挙上時に支持できるかという筋力を評価できます。
この時に僧帽筋上部が硬くなるということは首だけではなく、僧帽筋や肩甲挙筋も加わっていることから僧帽筋上部の代償があると評価できます。

僧帽筋下部促通評価

僧帽筋下部の促通不良は僧帽筋上部の亢進を助長します。
腹臥位で上肢を挙上する時に肘が曲がったり、肩のゼロポジションを維持できない場合、僧帽筋下部線維の促通不良が考えられます。

仰臥位

仰臥位での僧帽筋上部評価です。
仰臥位では筋の伸張によるエンドフィールを確認することで僧帽筋の伸張性から過収縮を評価できます。

胸部の過剰後弯を改善する

胸部の過剰後弯に対しては前鋸筋と外腹斜筋の筋連結を賦活します。

体幹が屈曲位となり前鋸筋と外腹斜筋が機能低下を起こします。

この動きを観ることで、体幹部の回旋機能を確認できますし、腹側部の筋力も評価できます。

まとめ

・姿勢を評価し上位交差症候群の確認
・頚部深層筋群の評価(屈筋も含む)
・肩甲骨の不安定性評価(僧帽筋上部の代償)
・胸腰部の過剰後弯(前鋸筋と外腹斜筋の筋連結)

これら4点を評価してみると理解が深まるかもしれません。


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