新刊『昭和のグラフ誌を飾った近江の歌枕 信楽・安土城・幻住庵』と『地球一周してみたら 聞こえた大自然と人々の鼓動』の編者・溪久(たに・ひさ)さんが滋賀県庁で記者会見を行いました
▼大津市の元高校教諭の遺稿を妻が編集し、写文集と旅行記の2冊を出版
2019年に亡くなった大津市の元高校教諭・溪逸哉(たに・いつや)さんの遺稿を妻の久さんがまとめた本が2冊出版された。1970年代のグラフ誌に掲載されたエッセーと写真を再構成した『昭和のグラフ誌を飾った近江の歌枕 信楽・安土城・幻住庵』と、夫婦で出かけた船旅の紀行文を編集した『地球一周してみたら 聞こえた大自然と人々の鼓動』だ。
▼昭和のグラフ誌に載った信楽・安土城・芭蕉史跡の写真を半世紀ぶりに
逸哉さんは大津商業高校の教師時代、1973年から1975年にかけてグラフ誌「フォト」(社団法人時事画報社発行、2001年休刊、2009年事業停止)に信楽や安土城跡、幻住庵など松尾芭蕉の史跡に関する文章と写真を投稿した。没後、本棚で掲載誌を見かけた久さんが出版社に持ち込み、「陶器のふるさと 信楽」「英雄覇業の跡 安土城」「この一筋につながる 幻住庵の碑」の3篇から成るセピア調の写文集として半世紀ぶりに甦った。信楽の茶畑にたたずむわらぶき屋根の家屋など、懐かしい昭和の風景が掲載されている。紫香楽宮跡の新たな知見については甲賀市教育委員会事務局歴史文化財課の協力を得て註を付した。
▼地球一周の船旅から帰国後、難病が再発。再参加はかなわず遺稿を一冊に
逸哉さんは2013年に胃がんによる胃の全摘出と国指定の難病「後縦靱帯骨化症」による頸椎の手術を受けた。術後のリハビリも兼ね、夫妻で2015年4月から7月にかけて105日間の世界一周の船旅に参加。24の寄港地からマヤ文明の遺跡(グアテマラのティカル遺跡)などを巡った。船旅に魅了された夫妻は再度参加を申し込んでいたが、逸哉さんの病が再発し、かなわなかった。
久さんは「夫はふるさと近江を愛し、国内外の訪問地の自然や歴史、文化などをわかりやすく紹介した文章を遺していました。多くの人に読んでいただければ」と話している。2冊とも全国の主要書店やネット書店で発売中。問い合わせはサンライズ出版(0749-22-0627)へ。