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#17肌感覚とぬくもり_オンライン生活の中で(下)
(#16肌感覚とぬくもり_オンライン生活の中で(上)つづき)
傳田氏の著書『驚きの皮膚』は、タイトルが示すとおり、私たちの皮膚感覚が想像以上のものであることに驚きを与えます。書店でふと手にとった本でしたが、「水ぬるむ」という季語をはじめとして、この頃「肌」の感覚に興味を惹かれたのは、コロナ禍以降、人と人との交流がパソコンの画面越しで行われることが一つの方法として固定化されたからかもしれません。特に大勢が参加する場合、リアルタイムであっても双方向性があるような無いような、顔が見えているのに何かが届いていない、響き合わないと感じます。人と人との間に流れる実感としてのぬくもりがありません。
そのような中、ある小学校の授業を見学させていただく機会に恵まれました。その日、私は小学校に向かうだけで心が踊りました。その上、授業のテーマが「ことばの規則を見つけよう」でしたから、私には興味津津です。
見せていただいだのは1年生から3年生までの1クラスを1時間ずつという貴重な時程においてでした。その日、3学年を通して取り組んだテーマは動詞述語文「○○が〜する」と、名詞述語文「○○が〜だ」の違いを見つけることでした。どの学年も最初は自分で考え、次に交流を通して学びを深め合うという展開が組まれていました。
響き合う、ぬくもりのある授業
まずは1年生。先生の指し示した課題に児童たちは、口々に考えたことを言葉にします。そのうち「〜する」という動詞述語文を「行動だ!」と見つける児童がいました。「行動」という規則を見つけて、子どもたちは「たしかにね!」「似てる!」と反応します。「つまり、わかった」という明るい声、「今、気づいたんだけど〜」という声が続き、内容が深まっていきます。
2年生では、「え〜わからない!」という声に、「○○がヒントだよ」とささやく声が聞こえました。ある児童の答えに連動して「同じ!」「そうそう!」が続くかと思いきや、「同じだけどちょっと違う」と問題を掘り下げようとする声が聞こえました。
3年生も教室が響き合っていました。「なるほど〜」「拍手!」「つけたし〜」の言葉が交わされ、活気とともに考察が深まり、教室があたたまってゆくようでした。
どの学年も動詞述語文の規則は見つけやすいのですが、名詞述語文については説明が難しいようでした。なかには動詞述語文と名詞述語文の相違ではなく「〜する」と「〜しない」という対義語に向かっていき、担当の先生はやや困惑気味の場面もありましたが、私にとっては子どもたちが「ことばの規則」を体当たりで考える姿に教えられることが多い授業でしたし、なんといってもこの響き合い学び合う姿、活気、ぬくもりに教室の原点を見出した思いがしました。
さて、これからの私の生活においても、オンラインでの交流は続きます。たとえ画面越しであっても、実感、響き合うための何かを模索していきたいと思います。
【参考文献】
傳田光洋(2015)『驚きの皮膚』講談社
エッセイは金曜日に発信します。
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