倒産する恐怖
「雇われていた方が楽」
いつも強気な夫が弱音を吐いた。
スタートアップから急成長させてきたビジネスは、
さらなるステージへと向かっているからかもしれない。
次々とやってくるトラブルに、
超ポジティブな夫もさすがに弱音を吐いた。
「もうダメかもしれない」
「会社を潰しちゃうかも」
「初めて怖いと思った」
流れるように口から出てくる弱音に、
こちらも泣きそうになる。
私まで泣いてはいけないと思い、涙をグッと堪えた。
ビジネスにまつわる格言はたくさんある。
「ピンチはチャンス」
「諦めたらそこで試合終了」
「逆境は乗り越えられる人にしか与えられない」
ありきたりな言葉だけど、私が信じている言葉をかけた。
夫に語りかけるたびに、どれもよくできた言葉だなぁと思う。
弱気な姿勢は商談で見抜かれるし、
まして、諦めてしまったらその先はない。
とにかく前に進まなければ、暗闇からは脱せない。
私も、必死に働いている時のことを思い出した。
アメリカにいる夫に電話で励まし続け30分。
「そうだよね・・」と前向きになってくれた。
経営者って聞こえはいいけれど、
我々には想像できないくらい大きな責任と重圧と戦っている。
妻もまた、同様に。
写真:震災の影響が残る熊本城(2021年10月撮影)