見栄 (1分小説)
全裸になって、ケツのコンセントコードを根元から抜こうと手をまわした時、福田がニヤニヤしながら近づいてきた。
「おっと。シャワーを浴びる前に、ちょっといいか?」
相変わらずイヤな顔をしている。オレは、無視を決め込んだ。
奴は、黙ってオレの身体をグッと引き寄せ、耳元でささやいた。
「あいつ、清純そうにしてるけど、実は、タコ足らしいぜ」
さっき、オレに告白してきた美緒のことだ。
「女子更衣室で、あいつのケツを見た奴がいるんだけど、4つも穴があったってよ。コンセントプラグが」
ゲッ、どうせ、お前がのぞいたんだろうが。悪趣味極まりない。
「まあ、お前も、あいつのこと言えないっか」
今度は、オレのケツに付いているコンセントコードを、3本ともつかみ、勢いよくそれを振り回した。
もう我慢できない。
「やめろっ!」
「3本もあるなら、1本ぐらい、誰かにやったらどうだ?嫌味か?」
さすがにカッときて、右ストレートを一発、奴の腹にブチかましてやった。
倒れこむ福田。騒然となる、男子更衣室。
「わかった、悪かったよ」
彼は、背中を丸めて更衣室を出て行った。
モテない上に弱い、最低な男だ。
オレは、絡み合った3本のコードをキレイにほどいた。
1本目は、本命の「絵里香」用、2本目は、キュートな「加奈」用、そして3本目は、コンセントとプラグとの相性抜群「玲美」用。
バーンッ!
その時、勢いよく更衣室のドアが開いた。
見ると、本命の絵里香が、入り口付近で突っ立っている。
思わぬ女子の出現に、男子更衣室は再び騒然となった。
俺はあわてて、全裸のまま、ケツを壁に向けた。
絵里香は、俺の姿を見つけると、凄い形相をして突進してきた。
「あんたっ!」
あっという間に、コードを3本とも握られる。
あうっ♂
悪い気持ちはしないが、でも、こんなに大衆の前では。
頬を赤らめる。
「3本ってことは、あたしの他に、女が2人もいるんだ!?」
絵里香はコードを持ったまま、シャワールームまで俺を引っ張った。
やめて、優しくして♂
後ろに、つんのめりながら、ただ引きずられる。
絵里香は、無常にもシャワーの蛇口に手をかけた。
やっやめてくれ!!それだけは!
ジャーー、ジャーー、ジャーー…
勢いよく、水が流れ落ちる。
やめてくれ!!
「ショートしちゃいなっ!」
ジューアー、ジュアアー…
砂画面になってゆく視界の中で、ニヤニヤ笑っている福田の姿が、後方に見えた。
やっぱ…り
おま…えが…バラし…たの…か…
…この…太陽…電池ヤロー…め…
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