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投資家インタビュー#2【後編】半年間の広報サポートの成果と振り返りーD4V牧瑤子さん
SUN METALONにシード期から投資いただいているD4Vのインタビュー。
SUN METALONは今秋、シリーズAラウンドでの31億円の資金調達など3本のプレスリリースを公開しました。その裏には、D4Vから半年間、広報支援担当としてご出向いただいていた牧瑤子さんのサポートがありました。
後編である本記事では、広報チームのマネジメントを担当した瓜生とともに、半年間の広報支援を振り返っていただきます。
前編では、当社への追加投資を決めたD4Vパートナーの太田明日美さんに、唯一のディープテック投資を決めた理由や創業初期の支援について語っていただきました。
◆プロフィール(敬称略)
話し手:牧瑤子(D4V シニアマーケティングマネージャー)
D4Vの広報およびコミュニティ関連業務を担当。今春から半年間、SUN METALONに広報支援担当として出向した。
聞き手:瓜生 康次郎 (SUN METALON 経営企画マネージャー)
総合商社、コンサルティングファームでの勤務後、2024年にSUN METALONに参画。経営企画のかたわらで未経験だった広報も管掌する。
■上書きする情報を出し、認知拡大を図った
――今年に入り、注力事業である金属リサイクル事業が成長軌道に乗り、量産体制への移行を目指せる段階となりました。今後の更なる事業規模拡大のため、顧客、採用候補者、投資家への情報発信に注力していくフェーズと判断しましたが、広報経験のあるメンバーが社内におらず、効果的な推進方法が分からず困っていました。太田さんにご相談したところ、牧さんの出向をご提案いただきました。
牧さん(以降略)
私としては初の出向なんです。当社でちょうど、今後はデザイン以外の面でもスタートアップ支援に力を入れたいねという話をしていたタイミングでした。私としても、今年は広報支援の強化を自分の目標として考えていました。
これまでも他社にスポットで広報支援に入ったことはあるのですが、オウンドメディアの運営やプレスリリース添削など手元の作業に従事することが多く、広報戦略を立てるところからがっつり入ったのは今回が初めてです。
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――ほぼ何もない状態から広報施策を進めていくにあたり、どのように計画を立てられましたか。
最初に感じた一番大きな課題は、SUN METALONに興味を持った人たちが会社のことを調べても、最新の事業概要がよくわからない状況だったことでした。
2023年春に金属3Dプリンタから金属リサイクルに注力事業を転換したということもあり、既出のウェブサイトや記事は3Dプリンタ事業について伝えるものばかり。
さらに金属リサイクルは事業内容や市場規模がわかりづらく、調べても全体像がなかなかつかめないより深く調べようにも、3Dプリンタ事業に専念していた当時の掲載記事などが出てきてしまって、今何をしている会社なのかがわからなくなってしまう。このためまずは、古い情報を上書きするために情報やコンテンツを打ち出していくことが必要だと考えました。
ちょうどシリーズAの資金調達のプレスリリースが控えているタイミングだったので、ただ発表するだけではなく、発信を重ねることで相乗効果のように正しい情報が伝わるタイミングを作り、それが山になり波になり、だんだんと認知が拡大していくサイクルができるといいなと考えていました。
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■成熟した雰囲気の中で情熱を持った人が多い
――我々広報チームだけでなく、エンジニアを含む多くのメンバーと話されてきたと思います。当社のメンバーの印象はいかがですか。
プレスリリース執筆前に事業を正しく理解したかったので、何度か川崎のオフィスにお邪魔し、何人かに声をかけていろいろと教えてもらいました。
川崎のオフィスは、一見落ち着いた、マチュアな雰囲気があります。
ところが社員の方と一対一でお話しすると、心のうちに燃えているものがある人が多いことに気が付きました。年齢層はそんなに高くない印象ですが、、大企業出身の方が多いためか、チームでの議論や意思決定は極めてロジカル。そこに個々人のモチベーションの高さが合わさって、大企業とスタートアップのいいとこどりの組織文化を作れているんじゃないかなと感じました。
大企業で技術や産業への熱い思いを持て余してしまった人たちもいるのかもしれません。そういう人たちもスタートアップで活躍できるのだということをSUN METALONのチームは証明してくれているように感じます。
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■伝えたいメッセージの調整の難しさ
――広報支援のなかで、どんなことがチャレンジングだったでしょうか。
メディアの方たちに注目してもらえるポイントをつくりながら、経営陣の思いとの温度感の調整を同時にしていくのは、想像以上に大変な作業でした。
PRにおいては、プレスリリースの文言など、言い切ってしまう方が楽なんです。
例えば今の事業内容や数年後のビジョンの話を「大企業と既存産業をぶち壊しします」などと大きく構えて言ってしまう方がインパクトも狙えるし、ストーリーを描くのも簡単です。
ただそこは、既存産業と共存したいという西岡さんの思いも反映する必要がある。そして、まさに事業そのものを形作ってる中でプレスリリースを書いていたので、最新の内容にすぐにアップデートしていかなくてはならない。
書いている間にも事業方針や打ち出したい内容のステータスが変わっていったので、プレスリリースの会社概要文だけでも、3回ほど大きな書き直しをしました。
新たなキーワードを創出し、それをもとに製品をアピールする手法も検討しましたが、足元の事業をきちんと説明していくというところに着地しました。
事業の目指すものが少しずつ変わっていく中で、届けたいメッセージの議論をしながらでないと調整が難しかったので、経営層の皆さんと近い距離でその作業をさせていただいたのはありがたかったです。
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■メンバーの人柄に助けられ、成果を残せた
――新しい見込み顧客の方からご連絡をいただくなど、牧さんにフォローいただいたおかげで広報チームとしてまとまりのある結果を出すことができました。広報の目標設定を上段から構造化して進めていただいたので、僕らも納得感をもって取り組ませていただけました。
当初狙っていた目的はおおむね果たせたのではないかなと思います。
日本経済新聞や業界紙など、10月中に複数のメディアにSUN METALONの事業内容の記事を掲載していただきました。
リサイクル事業に注力していることを広く伝えられたし、米国に本社を置くスタートアップであるという認知を広げることもできました。
(メディア掲載実績一覧)
他社だと社内で広報の目的があまり共有されず、協力を得るのに難儀することもあるのですが、SUN METALONではかなり他のメンバーの方が協力的でした。
その結果、資金調達のリリースを出した直後に広報チームの呼びかけに応じてメンバーのみなさんが勢いよくシェアしてくださり、いい初速が生まれました。その流れが美しかった。広報チーム内でも社内コミュニケーションの重要性が共有できていたのはよかったと思います。
あとは、皆さんの人柄に助けられたところも大きかったです。何気ないSlackの投稿にもスタンプで賑やかに反応してもらえたり、ヘルプを求めるとその場ですぐ分かりやすく解説いただけたりしました。
プレスリリースの配信日前後はかなり慌ただしかったですが、Slackの社内広報チャネルにメディア掲載などを報告し、反応をいただくのがモチベーションになっていました。
――半年間の成果を振り返ってみていかがですか。
うまくいき過ぎた感じはちょっとあります。こんなに普通はうまくいかないんですよ。メディアの方と連絡を取れても軽くあしらわれてしまうことも全然ありえます。
そういう意味では、資金調達の実績が優れていたことに加えて、SUN METALONのビジネスが時流に乗っており、社会に対して訴えかけるインパクトが大きい企業として注目されていることを実感しました。まだまだいけそうという感覚がありうれしいです。
――今後我々に寄せる期待をお聞かせください。
これまで広報の定型ともいえる施策を打ってきたことで、ある程度の基礎を整えられたと思います。
今後は粛々と、より自由な発想で、SUN METALONらしい広報を推進していくフェーズに入ります。定型への味付けの仕方は工夫次第なので、社内の方も巻き込んでアイデアを作っていけるといいですね。
SUN METALONは、グローバルで戦えるスタートアップだと思っています。
そこに、これまで私たちも参画してきたデザインやコミュニケーションが糧となり、手を抜かず最初から世界に目を向けて取り組んできた成果が花開くのを楽しみにしています。
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