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やなぎだ けいこの店 #16「としょかん ライオン」
★「やなぎだ けいこの店」では、日々、我が家で選び楽しんでいる絵本や店主が読んだ本・最近おもしろいと思ったもの・こと・美味しいもの・やなぎだけいこレシピ、暮らしの中の発見・・・などなど、をマガジンにまとめ、紹介していけたらと思っています。★
今日のご紹介は・・・絵本「としょかん ライオン」
皆さんは、「図書館」と聴くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか。
・・・静かな空間
・・・ちょっと古い紙の匂い
・・・本と出逢う喜び
もしも、ある日、そんな図書館にライオンがやってきたら・・・あなたはどうしますか?
「としょかん ライオン」 ミシェル・ヌードセン さく ケビン・ホークス え
福島友美子 やく
図書館は、宇宙。
我が家の子どもたち、本が好きです。
そして、図書館も好きです。
選ぶ本も、三人三様。
静かにしているな、と思うと、絵本を眺めたり、漫画を読んだり、生き物の本を読んでいたり・・・。子どもたちが、こんなにも本を好きになると思わなかったなぁ・・・というのが、私の感想です。
本の世界にもいろいろあり、絵本から、図鑑、マンガ、歴史や科学の本、暮らしの本、思想の本、料理の本、写真集・・・
網羅しきれない世界だなと思います。
なんとなく、図書館の館内にいると、宇宙を感じます。
どこまでも広がり、終わることがない。
様々な惑星の叡智がそこにある、そんな感覚になります。
本のある街に住みたい。
私が産まれ育った地域は東京の下町で、歩いて行ける場所に図書館はなく、バスに乗って図書館まで行き来していました。幼稚園の頃、姉と一緒にバスで行く図書館は、ちょっと特別な場所だったように思います。
「大きくなったら、大きな本屋さんがある街に住みたい。大きな図書館の近くに住みたい。」と漠然とですが、思っていました。
姉と二人暮らしを始めた場所は、地下鉄の出口から出ると、すぐに大きな本屋さんがあり、駅から家までの道のりにも、大きな本屋さんがある場所でした。
仕事で疲れて帰宅しても、帰り道に本屋さんのハシゴをすることも少なくありませんでした。本屋さんに寄ることは、大きな気分転換でした。
その街には、大きな図書館はなかったのですが、その二軒の大きな本屋さんが、〈私の図書館〉になっていました。
札幌に住むようになり、車での行き来ではありますが、大きな図書館が頻繁に行ける距離になりました。何度行っても、その蔵書の多さに飽きることがありません。
子どもたちも本が好きなので、人生で今が一番、図書館を味わっているかもしれないな、と思います。
きまり、ってなんだろう。
図書館は公共の施設であり、そこでお互いに気持ちよく過ごすための配慮が必要になります。
「としょかんライオン」の中でも、そんなマナー(きまり)について、描かれています。
「としょかんライオン」には、〈きまり〉を守ろうとする、図書館員さんと、〈きまり〉は大事にしているけれど、ライオンも〈きまり〉を守っているのであれば、図書館に来てもよい、という、一見厳しそうに見えるけれど、実は、そうではない、図書館長さんが登場します。
私たちが暮らす日々の中にも、〈きまり〉とか〈約束〉とか〈ルール〉といったものが、沢山ありますね。
いつも私が考えるのは、
約束とは、一方が、「約束したでしょ!」という事柄ではなく、お互いに、「これ、守った方がいいね」と同意して、初めて成り立つのが、〈約束〉だということです。
子どもたちは、「約束ね、」と言われたら、その場では、「うん、わかった。」など、相手の気持ちも考えて、うなずいたり、同意したように見えることもあると思います。
あるいは、大人とのやや窮屈な場面を早く終わらせるために、同意することもあると思います。
私は、子どもたちに「約束だよ?」「約束したでしょ!」と言ったことがありません。何かして欲しいと思う時は、事情を説明して、「このようにお願いできないか」とお願いをします。
ルール、きまり、に関しても「なぜ、その決まりがあるのか」を理解していないと、自分以外の誰かに対しても、
「だって、ルールなんだから!」
「守らなくちゃいけないんだよ!」
・・・ということになると思います。
もちろん、明らからに誰かを傷つけるであろう場合は、守らなくてはならいルールもあります。どんなことがあっても、してはならないこともあるからです。
でも、「ルール先にありき」となると、もし、何かの事情で、ルールを守れない相手がいても、「ルールを守らなかったことのみ」にスポットを当ててしまい、相手を責めることが目的になってしまうことも多いような気がします。
そうなると、「ルールを守れない、なんらかしらの事情があったのかな?」と相手の状況を想像することは難しくなるのではないでしょうか。
「としょかんライオン」には、そのあたりのことが、とてもやさしく、さらりと、描かれていると思います。
ある場面で、〈きまり〉に厳しい館長さんがこう言います。
「たまには、ちゃんとしたわけがあって、きまりをまもれないことだって、あるんです。いくらとしょかんのきまりでもね。」
この一文を、何度もこころの中で、繰り返します。そして、その度にそれを忘れずにいようと思うのです。
私たちの生活は、〈きまり〉ありき、ではないと思います。
〈きまり〉が必要なときも、もちろんあると思います。
でも、どんなときも、その〈きまり〉がなぜあるのかを自分で考え、誰がか、〈きまり〉守れない時には、それを責めるではなく、なにか事情があるのかな・・・と想像する「自分の中の隙間」を用意して置きたいなと思うのです。
私たちの通う図書館にも、ライオンがやってきたらいいのにな。
みなさんの暮らしの色が増えますように。 店主・やなぎだ けいこ
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