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母性
レジで支払いを戸惑う女性がいた。
どうやら電子マネーがその店で対応しておらず。
現金も持っていないようで混乱している様子だった。
足元には袋に入れられたドーナツをじっと見つめ無邪気に過ごしている小さな子どもがひとり。
生活感が明らかに漂うその女性とは対照的に。子どものほうは可愛らしい服で着飾っている。
"代わりに支払いますよ"という自分にその人は戸惑いつつ。同じく戸惑う店員を説き伏せて支払いをすると。何度も何度も感謝の言葉とお礼を言いつつ去っていった。
向かいの席に座った別の母親は。
ラーメンを小皿に取り分けて。それを食べる子どもを愛おしそうに眺めている。
薄化粧のその女性の傍に置かれたiPhone8の画面はバリバリに割れている。一生懸命に麺を食べる子どもはレースでできたおしゃれなドレスに身を包んでいる。
母性とはこういうものなのか。
向かいに座りドーナツを頬張りながらそう考える。
思えば。
自分の母親は決していい親とは言い難かったけれども。
宗教に傾倒する以前の母は。子どもながらに輝いていて。子どものために尽くしていると感じられたことを。幼心にも覚えている。
きっと今日の親子の母親のように。いろんなことで子どもを優先して育ててくれてたんだろうな。
子どもにとって幸せだった日々も。宗教に心奪われた母にとっては悩みや鬱々とした気持ちとの闘いだったのかもしれない。
宗教という棒切れで叩き続けてきた親を完全に許すのは難しいけれども。でも育ててくれたことには感謝している。
今日出会ったあの子たちが母親の愛に気づくことはあるんだろうか。
多難な人生になるのか。幸多き人生になるのか。他人の子どもに思いを馳せつつ。どうか自分と同じような思いをすることがありませんように。
そう願いつつ。今日の出来事をnoteに残す。
だて。