カフェイン、正しい理解と上手な摂取
カフェインは一部の食品に自然に含まれる興奮剤の一種で、世界中で「最もよく使われている薬物」ともいえるでしょう。これがない日は考えられないという方も多いのではないでしょうか。
コーヒーはもとより、緑茶や紅茶、エナジードリンクや炭酸飲料、総合感冒剤や咳止め薬などの医薬品、ダークチョコレートやキャンディー、眠気防止用のガム等々、今やカフェイン含有の製品は巷にあふれています。
カフェイン摂取がスポーツにおけるパフォーマンスの向上に影響することが、多くの研究で分かっています。一般社団法人日本スポーツ栄養協会は、国際スポーツ栄養学会(ISSN)によるカフェイン摂取に関する11項目の見解を紹介しており、参考になるかと思います。
また、イングランドのプロのサッカークラブに行ったカフェイン使用の実態調査では、36のクラブ中35クラブがカフェインを選手に提供しているという結果も示されました。チームスポーツにおけるカフェイン利用の実態という点から、興味深い内容です。
カフェインの作用
カフェインは中枢神経系刺激剤として作用します。また、神経伝達物質であるアデノシン受容体をブロックし、脳の興奮性を高めることによって運動機能の改善に寄与すると考えられています。そのため、気分や生産性の向上に影響することから、アスリートにとっては運動パフォーマンスの向上・持続に効果的と知られています。
カフェインの効果
カフェインの効果としては、次のようなものがあると言われています。
覚醒効果
疲労の軽減
鎮痛作用
筋肉の収縮力のアップ
脂肪燃焼(※遺伝なども含めて個人差がある)
精神的な集中力や活動性のアップ
利尿作用
気分の改善
スポーツ選手がよくカフェインを摂取するのも、これまでの研究でその「エルゴジェニック効果」または「パフォーマンス向上」が報告されているためです。研究では持久力、高強度運動、パワースポーツにも効果があることが示されています 。具体的な競技では、サイクリング、陸上競技、ボート競技などでカフェインの使用頻度が高いとされます。
デメリット
メリットがある一方で、500mg/日を超えた過剰摂取は頭痛やめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠などの副作用につながることがあるため注意が必要です。さらに「消化器管の刺激により下痢や吐き気、嘔吐することもあります」(農林水産省)。
600-800mgを摂取した場合には、米国ではNCAA(全米大学体育協会)の禁止物質として陽性反応が出る可能性もあります。
また、例えばコーヒーには「カフェイン以外にも多くの化合物が含まれており、腸を非常に刺激する可能性がある」(Science of Sports)という点もデメリットとして指摘されています。
カフェイン摂取量の目安
ではどの程度なら安全でしょうか? カナダ保健省や欧州食品安全機関(EFSA)などは、健康な成人の場合、1日当たり400mg以下なら問題はないとしています。これは、コーヒーカップで4杯分、コーラ10缶分、エナジードリンク2杯分のカフェイン量相当です。あくまでも1日の最大目安量ですので、1 回当たりでは200mg 以下に抑えるとよいとされています。
アスリートの場合は、体重1kgあたり3〜6mgのカフェインを摂取すると運動能力が向上することが分かっています。9mg を超えるとパフォーマンス上の利点はなくなり、逆に胃腸や心拍数などの問題が出てくるようなので、やはり適量を超えないことが大切です。
うっかりすると、朝コーヒーを飲んだのにトレーニング中や練習後にまたエナジードリンクを飲んでしまい、気づいたらカフェインの過剰摂取をしていたなんてことにもなりかねません。体内に取り込む飲食物のカフェイン含有量をぜひ意識してみてください。
タイミング
一般的にはカフェインの効果が現れるまでにおよそ20分~30分、血中濃度がピークに達するまでに約60分~90分かかるとされています。この間、カフェインは身体の中で消化、吸収され、肝臓を通過しているというわけです。
大事な競技や試合でカフェインによる筋力へのエルゴジェニック効果を期待したいなら、タイミングとしては「1時間前をめどにカフェイン摂取するのがよいかも」という研究結果が示されています(効果が出るまでの時間には個人差あり)。
もっと早く効果を得たい場合はカフェイン入りのチューインガムがお勧めです。胃で消化される代わりに、口の中の膜を通して吸収されるため、より早く体内に吸収される傾向があります。
また、カフェインは体内にとどまる時間が長く、半分の量になるまでにおよそ6時間かかると言われています。さらに「就寝直前の1 回当たり100mgのカフェイン摂取は、一部の成人で睡眠障害を引き起こす可能性がある」(オーストリア保健・食品安全局)という指摘も。質の良い睡眠で身体の回復を図るためには、午前や昼間など早めの摂取がよいでしょう。
効果的摂取を!
カフェインの適切な摂取時間、量、製品の種類を理解すれば、アスリートもパフォーマンスを最適化するための方法を身につけることができます。ただし、季節や気候、既往歴、カフェイン耐性や習慣などによって、効果に個人差が出るのも事実。また同じカフェイン入り製品でも、時間の経過とともに効果が異なるケースもあります。自分にとって効果的な摂り方をぜひ見つけて、今後のパフォーマンスアップに役立ててほしいと思います。
あなたにとってカフェインが適切かどうかわからない場合は、スポーツ管理栄養士に判断を仰いでください。
文・久保田久美
編集・翻訳者/サポートスペシャリスト
Sunbears マーケティングチーム
【参考文献】
・農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
・一般社団法人日本スポーツ栄養協会「サプリメントはいつ摂取すべきか? エルゴジェニックエイドの時間栄養学」2019年09月11日
・「コーヒーと健康 ~カフェインと脳の働き~」栗原久氏
・International society of sports nutrition position stand: caffeine and exercise performance, Journal of the International Society of Sports Nutrition
・Caffeine Use in Sports: Considerations for the Athlete Journal of Strength and Conditioning Research
・Caffeinated Drinks and Physical Performance in Sport: A Systematic Review
Caffeine and sports performance: Is it worth the hype? By Dr. James Morehen
ヘッダー画像:Tyler Nix撮影、Unsplashより
コーヒー画像:Jessica Lewis撮影、Unsplashより
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