大人のADHDについて ADHDの原因は何ですか?①
大人の方のADHDの相談、治療を担当していると、時々「ADHDの原因は何なのか?」という質問を頂く。ADHDに限らず、こころの病気、精神疾患と言われるものの「原因」を説明するというのは少々難しい。
まず、そもそも「原因」はまだよくわかっていないのだ。今の時点では、「脳」の問題とされていて、治療薬も「脳機能を改善」すると言われているものになる。しかし、じゃあCTやMRIで脳の画像検査をすれば異常がわかるか、と言われるとそうではない。形態的な変化の報告もあるが、微妙な差であって「がん」みたいにわかりやすく見つかるものではない。
診断基準ですら、少しずつ変わっている。大人の発達障害を診断する、というのはここ数年でかなり活発化してきた状況なので、私が医師をしている間に、まだまだ概念や診断が変更されていく可能性は十分にある。
イメージとしては身長とか体型に近いのではないだろうか。世の中にはいろんな身長、体型の人がいて、例えば極端な高身長、低身長だと不便が生じるし、実際病気のせいでそのような身長の人もいる。しかし別に身体的に問題なく、高身長、低身長で問題ない人もいる。体型も、明らかな肥満や痩せ過ぎは問題になることがあるが、たちまちそれで健康被害が出ていない人もいる。何をもって正常とし、何をもって異常とするのか、そこが難しいのだ。
さらに厄介なのは、身長や体重ほど、脳機能は簡単に数値化できない。どれくらい平均値から離れているかの測定が難しいのだ。
私の診療所ではWAISという知能指数を測定する検査をしていて、これが脳機能をある程度数値化してくれる。しかしADHDと診断するのはこの検査だけでは難しい。ADHDと診断がつく人にもいろんなパターンがあるからだ。また、脳機能は何も発達障害の影響だけを受けるのではなく、他の精神状態の問題や体調の問題なども受ける。つまり、ひどいうつ状態にある人を検査して、平均からかなり離れた結果が出た時に、それが発達障害によるものなのか、うつ状態によるものなのか、その区別は難しいのだ。どうであれ「脳の機能が悪い」という結果で出てしまう。
続く。
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