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7月の短歌から10首
微笑んで人の会話を木のように聞く君だけが晴れの日よあれ
余りにも夏らしい日が現れて記憶がどこか贋作になる
この国は衰退すると言っていた そうなのだろう電灯に雨
寝転んだ畳に容赦なく垂れる気温の外でヒグラシの声
両の手で花瓶を上げて底を見る ここに生きてく理由を置いた
重そうなガラスの皿で桃が出てそのひんやりの記憶が祖母だ
煮詰められ小瓶に分けて出荷され社会制度と戦わされる
調べれば「
6月の短歌から10首
確実に左へ行けば冒険が始まる朝に右へ出勤
教科書のようにのんきな眼差しで「想いの強さ」などと供述
踏み締めたケヤキが折れて僕らには朽ち果てるほどの猶予がない
雨粒の如く潰える命あり ワイパーで拭く高速の夜
木星へカカシを摘みに行きましょう冷やし中華が始まる頃に
紫陽花と墓地に優しい雨が降り濡れた先から日曜になる
魂の返却期限を過ぎており死ぬまで隠すと決めた夏至の日
尾根がまだ夏の陽射
5月の短歌から10首
大雨に高架をくぐる一瞬の静けさに似た君のくちびる
道端をくり抜いて翔ぶクロアゲハ 精一杯が影であること
人生をカメラ目線でゆく人だ初注文で濃いめと言える
想像を超えると謳う広告に想像力を限定される
セキレイが3飛び1落ちで滑る空間の線くぐっても空
ふと気づく焚き火の中で燃え残る枝が誰かの救いらしいと
悪人のいない地球の警察で青く大きい蛾を護る部署
希望とは絶望の中以外では活きない仕様
4月の短歌から10首
髭剃りと歯磨きの順入れ替えて今日は世界のB面になる
セキレイが50度ほどの角度にて見下ろす部屋の会議は続く
水仙を見て少年が溺死する逸話をつくるひとがいたのだ
春霞 アプリの位置を変えてみる確かなものは無くても慣れる
残るものだけが思い出になるから桜はアップで斜めの花
あの日々が青春だったこの日々も人生だろう 積まれたコップ
ランドリー向かう深夜の排水溝 吹雪いた後の花びらに泥
潔い
2月3月の短歌から10首
生きづらさ感じるほどに生死には要望もなし 雪は止まない
閉鎖したパチスロの裏積もる雪 すべての終わりはこの音域
その先に希望かなにかありますか 道際に立つ鹿に問われる
雪が降る無口な白で ほんとうは青になりたい欲を抑えて
運命を紐付けてやる中世のひとの正しさ 山で観る星
丁寧な暮らし営む蟻などを踏みしめ藪を軽トラが往く
倉庫掃く寒風の中ゾリゾゾと 竹箒から確かな矜持
春近し心躍らず