カオス状態の社内営業ポータルを見直したい【イノーバ社長 宗像淳のB2Bマーケティング相談室】
おはようございます。
イノーバ代表の宗像です。
突然ですが、B2Bマーケティング相談室を始めました。
課題感としては、日本と米国のマーケティングレベル差が10年位開いていると認識してまして、このギャップを真面目に埋めたいと思っているからです。(「日本をマーケティングで元気に!」というのがイノーバの目指すゴールです)
御相談:カオスの社内営業ポータルを何とかしたい
最近、ある大手のお客様から営業向けの社内ポータルをなんとかしたいのだがという相談を受けました。
要件のポイント
御相談の骨子は以下の通りでした。
BtoBとBtoCのビジネスをされている。BtoCは代理店網がしっかりしており、代理店のつなぎ止め営業が中心
昨今、BtoB強化の方向性があるものの、BtoBの営業は、今までOJT中心であり、トップセールスマンのノウハウの可視化などがされてこなかった。
しかし、コロナでOJT型の育成が機能しなくなっており、2:6:2の法則でいうところの、上位2割以外が機能しなくなっている。
社内のイントラネット活用に注目したものの、コンテンツが散在しており、とても情報を探せる状態にはない。
整理したいと思っているが、どこから手を付けていいのかわからないのでアドバイスが欲しい。
宗像の考察
今回のお悩みは、大手企業のあるある課題ですね。
営業ポータルというのは、一定規模以上の会社ですと、持っているケースが多いと思いますが、商材のカタログ・パンフレットや提案書等の資料置き場所になっていて、廃墟と化しているケースが多いように思います。
今回、注目しておきたいのは、コロナをきっかけにOJT依存の人材育成が崩壊したという点です。今はの20代、30代の若手社員は、「目に見えるスキル」の獲得や、「キャリアプラン、キャリアロードマップ」を求めています。OJT依存の営業人材の育成は、実はコロナ前から破綻しており、離職率の高さを生んでいたのですが、コロナで目に見える形で痛みが表面化してきているという事だと思います。
ただ、正直今回のご相談、どうしようかなぁと思いました。一般のBtoBのウェブサイトでしたら、先進事例などを紹介して、こういうのを参考に御社も検討してみてください、という話ができるのですが、社内ポータルは、あくまで企業の中のもの。サイボウズさんのグループウェアなどの事例はありますが、あくまでグループウェア切り口であり、今回のように「営業ポータルどうすべきか?」という情報は思いの他少ない。そこで、海外の先進事例をあたる事にしまして、調査したところ、見つけたのが、セールスイネーブルメントポータルという考え方でした。
社内ポータル=セールスイネーブルメントポータル
セールスイネーブルメントって何?という人もいるかもしれません。セールスイネーブルメントは、近年注目されている「営業の人材育成や営業プロセス改善を組織立って行おうという取組み」です。初めて聞く方はぜひ注目のキーワードですので、ぜひ調べてみてほしいと思います。イノーバの過去のコラム記事も一応紹介しときます(内容少し古いです。書き直さないとですね。。。)
BtoBの営業力を包括的に改善する一手、セールスイネーブルメントとは何か?
https://innova-jp.com/btob-salesenablement/
参考までにSales Enablementの検索ボリュームの推移を提示します。セールスイネーブルメントは職種として完全に確立しており、各企業の取り組みが進んでいることが読み取れました。
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セールスイネーブルメント観点で情報収集したところ、色々参考になる考え方が出てきまして、無事お客様にアドバイスできそうなことが分かりました。(せっかく時間を頂いて、大した話じゃなかったなと思わせてしまったら、申し訳ないですからね。。。)
アドバイス内容
では、私のアドバイス内容をご紹介します。
お客様は、まだ社内での検討段階で、アドバイスをご希望されていたのもありまして、現状では、以下のようなアプローチをとってみることをお勧めしました。
1 現状の可視化
現状の社内ポータルのコンテンツの抽出をし、それを捨てる捨てないも含めて分類整理しましょう)
2 あるべき姿の定義づけ
営業の社内ポータルで何をすべきなのか?どのような情報を出すべきなのかを定義しましょう。
3 現状とあるべき姿のギャップ分析
上記1のコンテンツ棚卸と、2のあるべき姿の定義づけができると、現状とあるべき姿のギャップが分析できます。コンテンツの歯抜け状態がわかりますので、コンテンツの重要度・緊急度などで、優先順位をつけてコンテンツの整備計画を立てるとよさそうです。
4 社内ポータルのサイトの再設計を行う
3までやると、初めてコンテンツ設計などができるようになると思います。社内ポータルに限らず、一般のB2Bサイトもそうですが、サイトは常にあるべき姿を描くべきです。そうしないと「デザインを今風にしただけ」の見映えだけをカッコよくするサイトリニューアルに陥りがちだと思います。
サイトはあくまでコンテンツが主であって、コンテンツを踏まえた、情報設計、導線設計が後からついてきます。
あるべき姿を描くためのフレームワーク
あるべき姿を描くためのフレームワークとしては、米国でセールスイネーブルメントツールを販売しているHighspotのブログに紹介されていたフレームワークが参考になるかと思います。
a)マーケ部の各種資料、b)製品関連情報、c)事例、d)営業ツール(見積り、価格表etc)、e)製品デモツール(デモURL、動画)、f)競合情報、g)営業のトレーニング用の動画etc、h)ニュース(業界情報、自社・競合・クライアントに関するニュースなど)
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また、Highspot社は、イントラネットの分析に関する枠組みも紹介していました。さすが、セールスイネーブルメントの進んでいる米国だと思います。ぜひぜひ参考にさせてもらいたいところです。
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現状分析にお勧めのツール/手法
Screaming Frog
なお、上記の1の「現状分析」段階においては、Screaming Frogというコンテンツを棚卸できるツールが便利です。(Screaming Frogって何?という方のために、アユダンテさんのリンクを貼っておきます。)
https://ayudante.jp/column/2021-03-22/11-00/
クライアントPCにインストールするタイプですので、アクセス制御がされるイントラネットのコンテンツの棚卸しにも活用できます。またポータルに限らず、一般のB2Bサイトでも利用可能ですので、ぜひ活用頂きたいところです。埋もれたお宝コンテンツの掘り起しなどに活用できます。
Google Analytics
併せて、Google Analyticsなどによりみられているコンテンツの抽出も行いたいところです。こちらのお客様はGAが入っていないかも?とのことなので、まずGAでデータを貯めてみることをお勧めしました。GAですとページ間の遷移なども分析できますので、トップページからどのページに遷移しているのかなども分析が可能です。
ヒートマップツール
あるいは、ヒートマップツールなどを活用するのも有用ですが、現状の散らかっている状態では少し早い気がしますので、後回しでもよいかもしれません。
営業アンケート
上記は、ツールを使って調査する例ですが、実際に利用者である営業の声をきくのも重要です。アンケートは2回実施するのがおすすめです。1回目は現状の良い点、悪い点、2回目は、ある程度、あるべき姿が描けた時に、どのコンテンツが役に立ちそうか?という観点での調査です。
トップセールスマンのノウハウをどうコンテンツ化するのか?
次に大事になるのは、中身をどうやって整備していくのか?という話になります。個人的にお勧めしたいのは以下です。
売れてる営業マンと売れてない営業マンに商談同席
受注した提案書・失注した提案書を分析する
お客様へのインタビューを行い、受注した場合の決め手が何だったのかを抽出する
ベストプラクティスの共有会
このあたりは、別途記事を作って深堀したいと考えています。
社内ポータル活用の上級編
我々のお客様で、社内ポータルにMA(マーケティングオートメーション)を活用されている例が居るのでご紹介したいと思います。
そちらの会社さんは社員数もかなり多く、しかも、マーケティング系の会社で専門知識が必要なビジネスをされている会社さんです。
ポータルサイトはあるものの、実際に見られているのかわからない、GAは入れて分析はしているけれども、どうも見られていない気がするというのが課題感でした。
MAを社内ポータルに入れるメリット
MAを社内ポータルに入れることによって以下のようなメリットが見込めます。
誰が閲覧しているのか、誰が閲覧していないのか、一人一人のレベルで特定できる。
部署や職種などのタグ付けをして閲覧傾向などを分析できる。
閲覧傾向から、本人が興味がありそうな情報をお勧めする事が出来る。
重要な情報を閲覧していない人については、閲覧されるまでリマインドメールを送り続ける等の施策ができる。
非常に素晴らしい取り組みです。他の会社にもぜひ真似してほしいと思います。
(MAベンダーの会社様、社内ポータルでのMA活用、とても大事だと思いますので、事例作りですとか、市場啓蒙などぜひご一緒させて頂ければとてもうれしいです。日本企業の生産性アップにダイレクトに効くのではないかと思います。)
結び
いかがでしょうか?参考にしていただけたでしょうか?
今回は、社内の営業ポータルのお話でしたが、マーケティング=情報を届ける、態度変容させるという事でいうと、営業ポータルは、まさにマーケティングのお話だという事に気づいていただけたでしょうか?
そのように考えると、先進的な会社が、社内ポータルにMA(マーケティングオートメーション)を活用する意味も見えてくるのではないでしょうか?
日本は、1ドル150円の円安で、未曾有の国難、危機に直面していると思います。かつてのオイルショックやリーマンショックに匹敵するような大きな外部環境の変化だと思います。
今回の危機を乗り越えるためには、日本企業の知識や知恵、創造性などを解き放つ必要があるように思います。今回の社内ポータルの事例をぜひ参考にしてもらえたらと思います。
さて、こんな感じで、今後、宗像のマーケティング相談室を定期的にやっていけたらと思っています。初回なので、簡単に書こうと思いましたが、想いがほとばしりまして(笑)、長々と書いてしまいました。お付き合い頂いて感謝です。
ありがとうございました。