WAIS(知能検査)結果に凸凹があると誤解されがち
30代を超えてASD(自閉スペクトラム症)と診断された女です。
必ずというわけではありませんが、発達障害者は知能検査の結果が凸凹していることが多いと言われています。
私の場合も、言語理解と知覚推理のIQに22差がありました。
また、一つのIQ指標の中でも下位検査と呼ばれる検査内容とそうでない検査があるようなのですが、その一つの指標の中でも点数に大きな差があったようです。
(言語理解は文字通り、言葉の理解力や知識。
知覚推理は簡単に言うと、図形の読み取りとか視覚による理解力、単純に言うとパッと見て分かるようなことに関する知能です。)
出来ることと出来ないことの差が大きい場合、何かを出来なかった時に周囲を混乱させてしまうことがあるそうです。
私も覚えがあります。
仕事内容を言葉の枠組みでうまく捉えて教えてくれる人…例えば理屈っぽい話し方をする男性から仕事を教えてもらう場合、私はその話をすぐ理解できます。
逆に、言葉よりも動きを重視した教え方をする人…「とにかく、一度やってみて覚えてみようか」みたいな教え方をする人が凄く苦手です。
実際私は、こういう教え方をする女性の上司の言っていること(教えてくれようとしていること)が全く理解できず、困った末に理屈っぽい男性社員に話を聞いて仕事を覚えようとしていました。
この行動を女性上司に気付かれた結果、「分からないフリをして男性に話しかけに行く奴」ということにされてしまいました。
これはこの女性上司がちょっと変わった人だったからでは?と思われるかもしれませんが、
同じ職場の別の男性社員から「鳴っている電話に気付かないフリをしている」と怒られたこともあります。
私はどうやら過集中状態になると近くで鳴っている携帯電話の音に気が付かなかったりしているようで、それが定型発達の人から見ると「気付かないフリをしてる」という風に見えてしまうのです。
(これはIQの凸凹というより、ASD的特性ですが)
普段は理路整然と話をしているのでぱっと見は頭が良さそうな、すごく真面目そうに見える新人が、鳴っている電話に出ない。
コイツ仕事を舐めているな?周囲に甘えているな?そんなふうに見られてしまいます。
この「気付かないフリ」は30年共に過ごした家族からも指摘されることがあるので、困っています。
その他にもトラブルはありました。
同じ職場で男性社員から地理に関することを口頭で説明されたのですが、私は全く地図が読めないというか、地理が全般的にとても苦手です。
そのため、地理に疎いことを説明し、Googleマップ等を使用させて欲しいと頼んだのですが、これも「それくらい自力で覚える努力をしたら良いじゃないか」とその人を怒らせてしまいました。
その人からすると、他の話はスムーズに理解できる人が突然「地名が覚えられない」とか「地図の話されても分からない」とか言い始めたらそのギャップに驚いてしまうのかもしれません。
地理の苦手さを克服する努力は過去に何度もしていて結局時間の無駄でした。
しかしながら、その努力した過去は私からしか見えない1視点からの記憶でしかなく、それをいくら説明したところで相手は納得がいかない。
実際に努力している姿を見ていないわけですから。
だから一旦、時間の無駄だけどもう一度時間をかけて本当に努力しても地理が分からない姿を見せる必要があったようです。
私としては、無駄な時間を教育に割くよりも、Googleマップという対処法でさっさと解決したほうが合理的だろうと判断してしまいました。
これはASDらしい一方的な視点を相手に押し付けているシーンでもあります。
この行動の結果として、私は「努力するのが面倒くさくてゴチャゴチャ言っている新人」という評価を受けるようになってしまいました。
私は知覚推理(視覚による理解力。地図を読む能力などもこれにあたると思われます)が低く、また、ワーキングメモリ(一時的な記憶力みたいなもの)も低いため、地理の話を長文で説明されるような状況はかなり負担が大きいです。
頭の中に苦手な地図を思い描きながら、その地図上に出てきた地名を一つずつ記憶しながら話を聞く…
どう考えも無理ですよね。考えるまでもなく、時間の無駄です。でもそれは相手に言葉で説明するほうがもっと無駄でした。
(特性を伝えてから働き始める障害者雇用なら別だとは思います。そのため私は今、障害者雇用を検討中です。)
知能検査に凸凹があり、なおかつASDという特性があるとこういうトラブルにしょっちゅう見舞われます。
出来ることと出来ないことの差が激しいことを長年の経験から理解していた私は、相手の立場や考えを想像せずに「それは私は苦手なので出来ません」と空気を読まずに伝えてしまっていました。
これは空気の読めなさでもあるし、時間の無駄を嫌う合理性へのこだわりから来るものでもあります。
このように言葉でペラペラ喋り、さほど破綻していないことを言う人間が、突然地図が読めないとか時計が読めないとか言い始めるのですから、周りは「なんで!?」となってしまいます。
私は時計を読むのも結構苦手です…
得意なことだけが飛び抜けていると、優秀な人間に見えてしまったりします。
知能検査の項目に「処理速度」と呼ばれているものがあります。
これは、単純な作業を正確に素早く行う能力の指標だそうです。
私の場合、言語理解と同じくらい処理速度の能力が高めだったため、例えばパソコンやスマホでの文字の入力がかなり速いです。
(LINEの返信の速度は友人に引かれるレベル。
「メモ帳とかに先に文章を入力しておいて、小分けにしてLINEに貼り付けてるんだよね?あの速度で文字が入力出来るわけがない」と言われました。
そんなめんどくさいことするわけ無いじゃん…と言うと驚いていました。)
事務職をしていた頃、書類を作る速度が爆速だったので、シゴデキ(=仕事ができる人。アホっぽくて好きな略語です)だと勘違いされていました。
結果として色んな仕事をポンポン回されてしまいます。
私は物事の優先順位を考えて組み立てるのがとても苦手なため、「優先順位は無視して、全ての仕事を全力で爆速で終わらせる」ことで、次々回ってくる仕事を無理矢理ねじ伏せてきました。
脳筋プレーのシゴデキです。
1週間後までに作れば良い資料を20分で終わらせる、みたいなことをしてしまうので、私の机には常に仕事が回ってきていました。
自分の体力の管理が出来ないため、一日中全速力で駆け抜け続けて、最終的にはヘトヘトに疲れ切り、ストレスを溜め込みまくっていました。
とにかくアンバランスなんです。
私は事務をやっていた当時、周りから見ると「めっちゃ書類作成速くて便利な人」でした。
しかし、私の主観では「何から手を付けていいか全然判断がつかない。間に合わない、間に合わない、速くやらなきゃ、速くやらなきゃ」と常にパニック状態のバーサーカーでした。
そしてASD(自閉スペクトラム症)なので、人とのコミュニケーションに苦手意識があり、このしんどさを周りに伝える方法が分かりませんでした。
私がASDの診断を受けて良かったなと思うのは、WAISで自分の得意不得意を客観視できるようになったこと、他人視点に立てない事実を受け入れられるようになったことです。
ただ、これも人によるようで、私の場合は自己認識と結果に大きな差はなく検査結果には納得がいきましたが、中には自己認識とかけ離れた結果が出てショックを受けてしまう人も居るようなので、注意は必要かと思います。
能力値にバラツキが全く無い人間というのも逆に存在しないわけで、誰だって、苦手なことを得意なことでカバーして生きています。
発達障害者だからこんなことが苦手だから出来ないよ!みたいな話をしたあとでこんなことを言うのは手の平を返すみたいで恐縮ですが、
「程度の差はあれど、周りの人も苦手なことで困ったりしている」
という事実を忘れず、「自分だけが辛いんだ」みたいな思考回路に陥らないように気をつけましょう。
この考えが相手に伝わってしまうと、めちゃくちゃトラブルの原因になります!