短歌と雑感|その2
三八五七七。初句の3文字という異様に少ない文字数にもかかわらず、初めて読んでもそれほど違和感を感じさせないのは、おそらく3つの句点が生み出す休符によるものだろう。この休符を挟みながら読むとちょうど5文字程度を読むぐらいのリズムになり、一呼吸置いてその後の句がスラスラと淀みなく音になっていく。初句の一文字一文字を空間に溶け込ませるような間を組み込み、独特のリズムを作り上げる詠み方は新鮮で面白いと思った。
短歌の内容に関しては、『ひ』という漢字の造形の違いが目についた。それぞれの漢字がそれぞれの年代の感性を表現しているように感じた。『火』は戦隊モノのリーダーの赤色を彷彿とさせ、習いたての漢字を使う小学生のわんぱくな感性を。『陽』は少し難しく複雑なものを選びたがる青年期の感性を。『日』はいろいろなことを経験した上で結局シンプルなものに行き着くような成熟した感性を。『ひ』という同じ読み方をする漢字の選択に、そういう人生の変遷を感じた。
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