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時間との距離感 160円

  嫌な事があったとき、怒れることや泣きたいことがあったとき、気持ちを切り替えるのは簡単じゃない。簡単に切り替えられたら、思い悩んでいる人を見る機会はほとんどなくなるだろう。
  しかし不思議なことに、人間は大きな刺激を受けると瞬間的に今のことしか見なくなる。例えば突然目の前にゴキブリが現れたり、遠くで雷が鳴り響けば、ビクッと震えてあたりを見渡し、自分の身の安全確保するために動き出す。きっと生きるために人間の脳みそは大きな刺激で切り替えられるようになっているのだろう。

  そう思うと仕事終わりにビールを一杯引っ掛けるというのは理にかなっている。口に含むと脳みその近くでパチパチと刺激を受けて、喉から胃にかけて身体中を刺激する。こうして過去と未来から解放された脳みそにアルコールというモヤがかかる。こうなることで未来と過去だけでなく、現実からも解放された、何をしても楽しいという無敵の状態が完成するのだ。

  ところが問題はビールを飲むと集中力や思考力が低下して、科学的にはパフォーマンスが落ちるということが証明されていることだ。趣味多き私には、酔っ払っていると言う時間を非常に惜しいと思ってしまう。最高のパフォーマンスでゲームもしたいし、手が震えていない状態でプラモデルも作りたい、鮮明な意識で映画をみたいという欲張りなのである。

  だから私はある方法を編み出した。仕事が終わりへとへとで帰ってきたら、『ウィルキンソン ジンジャーエール』と今日すべき趣味を用意する。そして遊び始める前にジンジャーエールを一気飲み、刺激が消え去る前に、目の前の趣味に集中する。すると世界は、私と趣味だけになる…と言いたいが意外とそうはいかない。不安があれば、不意に頭によぎったり、過去の黒歴史が突然思い出されて、ああああああとなようなこともある。そりゃ酔っ払ってないんだから仕方がない。
   
  とは言っても過去にもとらわれず、未来も想像していない状態ってのも異常事態だ。たぶんそんな状態は、翌日辛い。だから程よく過去に囚われて、適度に未来に怯える状態が人のあるべき姿なのだろう。そういう意味ではジンジャーエールの刺激で気持ちを切り替えて、趣味に集中しようとするのは、程よい時間との距離感なんかもしれない。そしてそんな時間との距離感が160円。これは安い!

#炭酸が好き


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