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『罰ゲーム化する管理職 バクだらけの職場の修正法』小林祐児
小林祐児さんの『罰ゲーム化する管理職 バクだらけの職場の修正法』を読みましたので、紹介したいと思います。
■読もうと思ったきっかけ
私は年次的に管理職になる時期に差し掛かっており、管理職の心構えをしておきたく本書を手に取りました。先に管理職になっている先輩や知人の話を聴く限りでは良い話はほとんどなく、むしろ昇進することを断っているケースもあるくらいです。とは言え、管理職になりたいか・なりたくないかは、人それぞれであり、個々の事情も異なります。また、人事のことですから、本人が希望しても希望どおりになることもありません。私自身は、考えようによってはキャリア形成のチャンスのひとつになり得る、と前向きに捉えています。
■感想
まず、タイトルが衝撃的ですよね。
「管理職になることが罰ゲームになるなんて・・・」
これまで、管理職になることによって、期待できる上積み金額が長期的に減少してきており、むしろ人生を丸ごと狂わせる心身へのダメージに繋がり兼ねない状況になってきている、とデータも提示して説明されています。
確かに、私が20代の頃に持っていた管理職のイメージと今の管理職を比較すると、今はプレイング・マネージャーとして、自ら手を動かし続け、長時間労働をしている人が多い印象です。
特に危機的な状況と思ったことが2つあります。
1つ目は、職場の問題を管理職個人の問題に帰責させていることです。この場合にハマりがちな罠としては、管理職の意欲やスキルを鍛えて問題を解決しようとする「筋トレ」発想がある、と指摘されています。
2つ目は、働き方改革の影響です。これは、働き方改革の対象が、
・生産性の向上という本質ではなく、単なる労働時間の上限設定の問題、
・職場全体ではなく、メンバー層に限定
に狭小されたことにより、管理職が仕事を引き取らざるを得ない状況になっている、というものです。私の職場を振り返ってみてもまさにそのとおりであり、納得しました。
■管理職になるのは、「得」なのか「損」なのか?
本書では、「罰ゲーム化」に対するいくつかの修正法が提示されており、私自身が重要と思ったアプローチは、管理職と部下を同じ土俵に立たせる、というものです。
組織のマネジメントの問題を管理職の意欲やスキルの改善に費やすのではなく、部下にも同じトレーニングを行い、両者で共通認識を持てば、円滑なコミュニケーションが取れるようになる、と示されています。また、余裕がない管理職から、部下に権限を委譲したり、次のリーダーを育成したりすることも示されています。
管理職と非管理職のタイムパフォーマンスに関するデータもありましたので、金銭的な損得勘定で管理職を希望すると失敗するかもしません。管理職にしかできないことや感じられないこともあり、管理職になった「その先」にあることを想像する必要性を説いています。
とても印象的だった小林さんの文章を引用したいと思います。
管理職になるということは、今の仕事の先にまだ見ぬ何かを<想像する力>が入り込むことを促し、そしてその<想像力>こそを条件として、自らの仕事人生を「贈与する者」として位置づけなおすことである。
■最後に
長々とお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
昨日から長期休暇になる方が多いと思います。私も緊急対応がなければ、平穏な日々を過ごせそうです。
皆様にとって良き年の瀬になることを祈っています。