知っているけど知らない味
最近のかき氷は進化している。ふわふわな氷はもちろん、シロップだけでなく、フルーツやあんこ、見た目もオシャレで高価なかき氷が増えている。そんなオシャレかき氷を未経験な人は、祭りの屋台でカップに入ったざらざらな氷に、ブルーハワイやイチゴの定番シロップがかかったものしか知らないだろう。
だから私はかき氷が嫌いだった。なぜ甘いだけの氷を食べるのか、なぜ溶けたらただ薄まったシロップになるだけなのにそんなものを食べるのか、不思議でならなかった。しかし、今ではそんなかき氷は流行らなくなり、もっと映えて、オシャレで、美味しさを追求されたものが主流になっている。
最近では、喫茶店でもそんなかき氷が提供されるようになった。私の隣のテーブルでは、おばあさん二人組が甘いものを食べたいと話し、かき氷を注文していた。メニューにオシャレなかき氷が載っているのは知っていたが、おばあさんたちがそれを注文するとは思っていなかった。
本来はただの純喫茶のはずが、そのお店のかき氷は本格的な抹茶味で、そのサイズ感に驚かされた。山盛りの天丼くらい高く盛られたかき氷。その上にはあんこやソフトクリームが載っていて、もはや氷が主役というわけではない。そのボリュームはかなりのもので、しかもとても美味しそうだった。
抹茶とあんこの相性は間違いないし、さらにソフトクリームが加わることで、味のバランスが一層引き立っていた。私はそんなかき氷を食べるおばあさんたちの幸せそうな顔が羨ましかった。このかき氷を一人で食べるのは少し辛いだろうし、男一人でオシャレかき氷を楽しむのはもっと辛い。
かつて嫌いだったかき氷が、今では美味しそうに見える。しかし、その美味しさを味わうには、かつて一緒に祭りに行っていた友達のような連れが必要だ。この味を分かち合える仲間がいれば、もっと幸せを感じられるのだろうか。