君以外の全世界の人には君のことが好きだって云える。
頭を冷やすために、
誰も入っていない河に足だけ突っこんだ。
岸から見える水深は深く見えていたのに、
案外浅く、穏やかに見えた河の流れは、
思ったよりも勢いがよかった。
風が解かるところで、話がしたかったから、
鴨川沿いでハイネケンのプルタブの音を鳴らす。
初対面すらも関係なく、
本質の近いところで会話ができるのは
とても気持ちが良いことだった。
大げさかもしれないが、
久しぶりに、私は私の声を聞いた気がする。
2年ぶりに会った2つ年上の友人は、
5つ年上の友人とやってきた。
はじめましてのあいさつ代わりに
「お疲れ様。」と一日の終わりをスタートさせる。
当時と殆ど変わりないように見えたけれど、
彼の声にのせられたフレーズ達には
昔よりも魂が強めにトッピングされていた気がする。
それは本人にも自覚があるように見えた。
そんな風に感じ取ったとしても、特に詞にはしない。
「そこに何があったのか。」よりも、
「これからどうなるのか。」の方が、
断然、話は面白いからだ。
私の心を見透かす友人は
きっと、ほぼ全員に近い。
だいたいの人が強がりの私の「本音」を聴こうと、
あれやこれやと関わってくれる。
それが、どうにも申し訳なくなって、
最近は最初から本音で話すようになった。
その点に彼は大変驚いたようで、
「成長した」
と声をかけてくれたので、
調子に乗って、
「褒めて」と甘えておいた。
最終電車は、迷うことなく私をまっすぐと最寄り駅まで運んでくれた。