いちばん身近なタイムマシーン
学生時代、実家は横浜にあって、大学は国分寺の方にあった。
色々なルートがあるのだけれど、時間に余裕のある時は、横浜から川崎に行き、川崎から南武線で立川に出て、そこから中央線に乗って行ったり、帰ったりすることがあった。
それは、川崎と立川がどちらも始発・終点で、待てば必ず座れるから。
一本、見送る。
乗る。
発車まで待つ。
カバンから買ったばかりの文庫本を出す。
移動が多いし、学生には高いので、文庫ばかり。
本屋でまずは装丁をみる。好きな感じ。
最初の数ページを読む。うーん、この感じは違う。
装丁をみる。好きな感じ。
最初の数ページを読む。好きな感じ。
優しい雰囲気の言葉。順序に気を遣っている気がする。この後に事件が起こる雰囲気ではないけれど、この主人公の思いが気になる。
レジに向かう。頭の中をさらけだすようで恥ずかしいので、ブックカバーは付けてもらう。
この店ではブックカバーの色を選べるのが良い。
この雰囲気なら、紺かなあ。
結果、装丁と似てしまったがいいか。
そうやって買った本。文庫を取り出す。
読み始める。
もう立川か。
あっという間。
誰に言うわけでもないんだけど、「ちょっと向こうの世界に行ってたので」という気持ち。
まるで瞬間移動。
ちょっとこちらの世界を歩こう。電車を降りると空気が気持ち良い。
多分、こちらにはないんだけど、あちらの世界のクロケット定食が食べたいなあ、とか思って、大学の近くの定食屋に入る。
鯖の味噌煮定食がうまそうで、頼む。クロケット定食はない。
というかここではこれとモツ煮定食しか食べたことがない。
出てくるまでの間、またちょっと行ってきます。