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光の写真、影の写真

普段、写真を撮るにあたって、心がけている考えをここに残しておこうと思います。


「光の写真」「影の写真」

意識しているのは、「光の写真」と「影の写真」。
これはライティングやシャドーという意味ではなく

光の写真:光景の写真
影の写真:面影、影響の写真

という意味で使っています。
これでもまだわかりにくいですよね。

もう少しかみ砕いて

光(光景)の写真とは、その場面やモチーフを瞬間的に伝えることが目的の写真として考えています。例えば、動物の決定的な瞬間や、景色、風景の写真、ピューリッツアーなどの報道写真などもここに入ります。
即効性が高いイメージ。

一方
影(面影、影響)の写真は、その場面やモチーフを伝えるというよりも、そのモチーフを通して、鑑賞者に何かを思い出してもらったり、感情を抱いてもらったりする写真です。なので、一瞬ではなぜそれを撮ったのかわからなかったり、抽象的だったり、ボケやブレも許容することになります。
繰り返しや遅効性の高いイメージ。


この感覚にたどり着いたのは、ある展覧会がきっかけでした。
それは、2023年に国立新美術館でやっていた「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」という展覧会です。

光をモチーフに(ここでの光はまさに光のこと)した作品が多く展示されていたのですが、その中に、ターナーの「湖に沈む夕日」と、ジョンマーティンの「ポンペイとヘルクラネウムの破壊」がありました。

それを見比べたとき、ターナーは「明るい印象だけど影だな」、ジョンマーティンは「暗いけど光だな」と感じたのです。

つまり、作者が伝えたいことが「物質的」なのか「非物質的」なのか、という感覚です。


写真の見比べ

実際の写真でもう少し。

例えばこれは、光(光景)の写真

コーヒーが注がれているという場面


これは影(面影、影響)の写真

車のフレームであることを伝えたいわけではない

影の写真は、言語化すると(それも野暮なのだが)、車のフレームのテクスチャを見せたいのではなく、子供のころに後部座席に乗っていたあの感覚、みたいなものにリンクしたい、という感じ。

また、光か影かは、二項対立ではなく、一つの写真の中で二つの要素がどちらもあって、その濃度の違いで印象が決まる、という感覚もあります。


そのため、キャプションやタイトルでもある程度鑑賞者を誘導することもできるのだろうと思います。

どんなタイトルがいいだろうか

例えばこの写真
「おはよう」
「寝坊の長男」
「のどやか」

というタイトルの違いでも、印象は揺れ動くと思います。

「寝坊の長男」だと光の要素が強くなり、
「のどやか」だと影の要素が強くなる感覚

「おはよう」は中間地点な気がします。

この写真の光と影の濃度から、何を感じ取ってほしいか、自分は何を思って撮ったのか、写真を見て自分は何を感じ取ったのか、という部分を、タイトルに助けてもらうことはできるのではないのでしょうか。

メインモチーフの奥にあるものを考える

この感覚を伸ばすために

この「光:光景」「影:面影、影響」の考え方は、
とても抽象的な概念だし、「気がする」の範疇を抜け出ないのですが、自分の中では、しっくりくる感覚でした。

なので、この感覚を伸ばすためにいつも考えていることがあります。

  1. 被写体に対峙するときの意識:光、影

  2. どのように(どんな機材で)撮るのか

  3. その1、2のために何をするか

1 被写体に対峙するときの意識:光、影

それぞれの写真は何が要素として強いか考えました。

光の写真は、光景を平面構成で伝えたいので構図が大事
影の写真は、光景の奥に何を感じたかを伝えたいので、自分自身の哲学性やポエトリーが大事

先ほども言ったように、一枚の写真の中にどちらの要素もあると思うので、どちらかだけなのではなく、両輪で育てるのが大事なんだと思います。

ただ、自分としては影の写真のほうが好きなので、哲学性やポエトリーに主軸は置きたいかな。

写真の中での光性と影性を考えながら

2 どのように(どんな機材で)撮るのか

ぼくの撮影は、生活の中の様子やストリートスナップであることが多いです。
その中で、好みは影性なので、
大事にしたいのは

空間性と一枚の全体感

空間性とは、その場所を想像できるような立体感、空間感を表現できること例えば中判のフィルム写真などにそれを感じます。

デジタルだと、foveonセンサーやいわゆる中判センサーで撮られた写真にそれを感じることが多いです。

全体感とは、メインモチーフと背景が分離しすぎていない感覚です。モチーフの主張が強いと、光性(光景や瞬間を伝えたい)が高まります。

同じ考え方で、
・低コントラスト(情報が分かれすぎない)
・ボケやブレの許容(情報がにじむ)
・写真一枚にかかるベール感(かすみ、グレイン、フィルム感等)

上記の要素が
自分の写真では大事なのではないか、と思い至りました。


3 その1、2のために何をするか

インプット、ツール、アウトプットに分けて考えます。

インプット①
「自分の光性を育てるために」
光性は構図が大事なので、たくさん平面アートを見る、分析するということに尽きると思っています。そのために、写真集や画集、展覧会に足を運ぶ。

インプット②
「自分の影性を育てるために」
根底となる哲学性やポエトリーを育てる。
特に宇宙、生命、永遠の視点など、答えがでないものに触れたり考えたりする習慣を作る。

ツール
「機材」
先にも書きましたが(いわゆる)中判センサーとオールドレンズを使うという選択。leica S 006とフィルム時代のオールドレンズ

オールドレンズでは、いわゆるレンズの持つ味と、ピントに気をつけて選定。

アウトプット
「撮りまくる」
インプットしたことを、ツールで、ひたすら撮りまくる。

量に勝る質はないという言質を信じて、毎日通勤にカメラを持っていき、最低4枚撮ってその日の断片(fragments)としてXにあげています。


どうだったでしょうか。

自分で書いていても、やはり抽象度が高くて伝わりにくいなあ、と思うのですが、自分の振り返りにはなったかな。

伝わりにくいけど共感はありそう、とポジティブに考えています笑

みなさんがどんなことを考えながら撮影しているのか、気になるなあ。



※この考えは、過去のポスト・ツリーをもとに再構成しました。


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