あのスパイスカレー店「強い女」の店長が語る!スパイスへの情熱とこだわり《おがわのひとインタビュー》
こんにちは!スモリバ編集部です。
埼玉県小川町の魅力的で個性豊かな「人」にフォーカスしたインタビュー記事【おがわのひと】。今回のおがわのひとは、CURRY&NOBLE 強い女、小川町本店店長の勿体無子(もったいないこ)さんです。
1.『強い女』の由来と、勿体無子さんとお店の出会い
— まず初めに、店長さんのお名前と印象的な強い女という店名の由来を教えていただけますか?
まず本名ではないのですが…勿体無子(もったいないこ)と言います。
— 店名と同じくとても特徴的なお名前ですね。オーナーさんにつけていただいたとか?
そうなんです。私はもともとスパイスの勉強をしたくて、オーナーに弟子入りという形で働き始めたんですが、オーナーが「たけし軍団みたいな名前をつけたら面白いよね」と言い出して。私は当時から食いしん坊で、みんなが残したものをずっと食べていたので、そこから取ったみたいです。
あと、お店の由来については、いくつかあります。まず、このお店はオーナーたちが床屋さんをDIYして作ったんです。私はまだいなかったんですけど、当時はお風呂も寝室もなく、みんなでその辺に雑魚寝をするような環境で。それでも、とにかく完成までひたすら頑張るという、強い女性たちが集まっていたらしいんです。それで、その「女性たちが強かった」というのが一つ目の由来です。
それから、今もお店で曲を流しているアーティストの鈴木亜紀さんという方がいるんですけど、その曲をずっと聴きながら、亜紀さんをイメージしてお店を作っていたそうなんです。それで、「鈴木亜紀さんといえば、強い女性だよね」というところも一つだったり。あとは、「女性が一人でも気軽に足を運べるお店にしたい」という思いも込めてますね。
ですが、お客様それぞれの「強い女」を描いてほしいので、普段はあまり細かくは説明しないんです。
— 多くの強い女性たちの存在から来ているんですね。無子さんが働き始めたのはいつからなんですか?
21、22歳のときに、スパイスを学ぼうと思い、まずはカレー屋さんで働こうと思って、たくさんのお店を回ってたんです。その中で、強い女を訪れたのですが、当時はカウンターに数名お客さんが座ってるだけで、あまり流行ってなかったんですよ。でも、その雰囲気がすごく温かくて。カレーを食べた時に「うわ!ここで学びたい!」と思い、そのまま「働かせてください」と言いました。
その時にお店にいたのは別のスタッフだったので、オーナーとはその後の面接で初めて会ったんですよ。オーナーは音楽関係で有名な方だったので、ツイッターももともとフォローしてて。なので、会ったときには「本物の代々木原シゲルだ!」と思いましたね。
— 素敵な出会いですね。そもそもスパイスに興味を持ったきっかけは何だったんですか?
以前、父が病気で倒れたとき、食生活にものすごく制限をかけられたことがあったんです。「塩分、油分、炭水化物はこれぐらいに抑えてください」と言われて、その制限された食事が本当に不味そうで…。もともと料理人だった父に、どうにかしておいしい食事を届けたいと思い、初めて塩分をスパイスで補ったキーマカレーを作ってみたんですよ。
その時、これは何にでも活かせるかも、とスパイスの可能性を感じて。それから、スパイスを体のことを考えた漢方的なポジションで活用していきたいと思い、本格的に学び始めました。カレーも塩分や油分など最低限の必要なものがあるので、もっと健康食に寄せるためには和食と組み合わせるのが面白いのではないかと思い、今後そういった提案もしていきたいと思っています。
2.素材の味へのこだわり
— 味のこだわりや、ここに注目してほしいという点はありますか?
まず素材の味を楽しんでいただきたいので、カレーは無添加でスパイスと野菜の甘みだけで構成しています。副菜も小川町の野菜をできるだけ使うようにしていますね。小川町の野菜といえば、味が濃いとか甘みが強いとか、まさに素材そのものの味を楽しめる食材なので、こだわりというとそこですかね。
— その中でも特にこだわっている食材はありますか?
季節ごとの小川町の旬のお野菜を使うようにしています。もやしのピクルスはずっと人気なので、1年中出しているんですけど、他の野菜は時期によって変えています。今はぎりぎりナスがあるんですけど、これからはサツマイモとか根菜を使おうかなと思っていますね。
— プレートに並ぶ副菜の組み合わせやメニューはどのように考えているんですか?
美味しそうなレシピがあったらそれを真似てみたり、イメージしてみて合いそうだなと思ったら、自分の経験を頼りに、感覚で作ってみたりもします。それで、次はもっとこうした方がいいなと思ったら、ブラッシュアップバージョンも作ってみたり。
— 感覚で、というのはすごいですね。いわゆる同じ味はないといったところでしょうか?
そうですね。今は私が無水チキンカレーの仕込みを担当しているんですけど、まだレシピは完成していないんですよ。当時の店長から引き継いだレシピからも、だいぶ自分好みに変えました。スパイスもその時々の手に握った感覚で全部やっているので、1回ごとに味がちょっと違うんです。いつも変わらない味も良いと思うのですが、うちのお店はそっちの方がお客様にも楽しんでもらえるし、自分たち作り手のその時の気持ちや思いも込められるので、お互いに良い意味で飽きないかなと。
常連さんになってくると、「今回はブラックペッパーが多いね」など、気付くみたいなんです。クミンとかだったら比較的分かりやすいかもですが、ブラックペッパーの増減に気付くのはすごいなと思っています。
今後も引き続き思考錯誤しながら確実で美味しいレシピを完成させていきたいです。
3.小川町という拠点
— 出店場所に小川町を選んだ背景を教えてください。
これはオーナーの話になるんですけど、もともとは都内でライブができる飲食店を経営していたんです。そのつながりで、越生で音楽イベントなども手掛けるようになり、その地域の良さに惹かれ、周辺のまだあまり開拓されていない土地で、1から何かを始めたいと思ったそうです。そこで、拠点をどうするか考えたときに、「今、都内で商業が発展している場所は、もともと花街だったり、川沿いが多いよね。近くにも小川町という良い場所あるじゃん!」と、ピンと来たみたいです。
あとは、有機野菜が有名な点と、これから注目が集まりそうな場所ということで、小川町に決めたみたいですね。それが数年前なので、それから移住ブームも来たじゃないですか。すごいですよね。
— 先見の明があったんですね。こういう地域だとお客さまの層はどのような感じですか?
お値段的に自分へのご褒美として来てくれるご夫婦とか、デートで来てくれるカップルが多いですね。若い方よりも意外と中年層の方が多くて、おじいちゃん、おばあちゃんもちょっと増えてきました。あと、最近は東京のイベントにも呼んでいただけるようになったので、認知が広がって、強い女をきっかけに全国から小川町に来てくれる方が増えていることが嬉しいです。
4.内装から漂う手作り感
— 内装も素敵ですよね。おしゃれだけど、落ち着く。ここにはどんなこだわりがありますか?
まず手作り感ですね。店内の仕切りには小川町の民家からもらった大正ガラスの建具を使っています。椅子や机も小川町内のどこかで元々使われていたものをもらってきたので、自分たちで買い揃えたのは冷蔵庫くらいですね。この照明の流木も拾ってきた木ですし。
音楽はお店を作ってる時から一貫して鈴木亜紀さんの曲を流してます。優しいけど強いメッセージ性もあって、でも面白くて。都内だとなかなかチケットが取れない方なんですけど、ちょくちょくお店にライブをしに来てくださり、毎回満員なんです。
— この壁の絵も自分たちで書かれたんですか?
これは一昨年かな?「赤祭り」というのを2年連続でやったんですけど、実際に店内でいろんなアーティストさんにライブをしてもらい、その最中にライブペインティングもしてもらったんですよ。「赤をテーマにその時感じたものを表現して」とお願いしたら、涙を流しながら描いてくれました。こういう気持ちで書きましたというそのアーティストさんからの手紙も店内に飾ってあるので、よかったら見てください。
— 「カレーは肉料理です。」のキャッチコピーに加え、ポップの細かいフレーズも気になります。
バズらせたいんですよ(笑)インスタでタグ付けするときに使ってもらいやすい特徴的なワードを散りばめる、というのを意識してポップを作るようにしてますね。強い女という名前自体もそうなんですけど、素通りしてもなんとなく記憶に残ってしまう、ふと思い出してしまうということを大事にしてます。
5.次の挑戦と看板商品
— 今後挑戦してみたいことはありますか?
お店としては限定カレーをもっと細かいスパンで出していって、その中でも人気のメニューは冷凍販売をしていきたいと考えています。
それと、なかなか工場との折り合いがつかずに実現できていないのですが、レトルトの無水チキンカレーをどうしても作りたいという夢がありますね。あと一歩のところでなかなかうまくいかないんですよ。
— あと一歩のところで…それは悔しいですね。
工場からは水がないとカレーは作れないと言われてしまうのですが、うちはお野菜の水分だけで煮込むことを徹底していて、そのうまみは水では代用できないので…。もしレトルトが実現できれば、道の駅などにも置いていきたいです。『太田ホルモン』さんの味噌のように、『強い女』といえばこれだよね!という看板商品を作りたいと思っています。
— とても楽しみにしています。本日はありがとうございました!
笑顔が素敵な勿体無子さん。その明るさと気さくさに、大いに魅了された時間でした。スパイスへの情熱や想い、言葉の節々から、お店の表す『強い女』像とは勿体無子さんのことではないかとも感じました。
店内では食欲をそそられるスパイスカレーのいい香りと、店内の温かい空気感にほっとします。彩りも鮮やかで食べる前からワクワクが止まりません!一つひとつの副菜も食べるたびに驚きがあり、またすぐに食べたくなる味。お店ももう少しで6年を迎えるとのこと。今後も進化し続ける『強い女』さんを応援していきたいと思います。