2023年8月 中欧に行ってきました【②オーストリア・ウィーン】
前回①羽田の悲劇でお伝えしましたが、飛行機の遅延があったためウィーンにいたのは実質四日。でも有名観光地だけを狙うなら三日もあれば足ります。
ただしアフターコロナの観光客数を舐めてはいけません。ウィーンに限らずヨーロッパの観光地では、レストランやカフェも含めて予約が取れるところはできるだけ事前に予約しておくべきです。満員・満席で入れなかったことが何回もありました。
それではウィーンのちょっとおもしろいところ、紹介していきます!
1.グルメ
ウィーンのカフェ文化は世界無形文化遺産です。
16世紀、ウィーン包囲に失敗したオスマン帝国軍がコーヒー豆を残して引きあげていきました。それを使ってウィーン初のカフェが開かれたのが、この文化の起源だとか。
1.1 カフェ・ザッハー
ウィーン・カフェ文化の最盛期の一端を担ったのが、こちらのホテル「ザッハーSacher」。1832年、ご存知ザッハトルテが生まれたカフェです。その後ザッハーに資金援助をした「デメル」が販売権を得てレシピを流出させたことから裁判沙汰になりましたが、結果どちらも売って良しということになったそうです。娘さんがレシピを持ちだした説は作り話。
「デメル」は日本にもあるので、せっかくだから「ザッハー」に行ってみました。高級感のある店内。セレブっぽい服装のご夫婦が、奥の謎の部屋に通されていました。う~その部屋の中が見たい!
カフェ「ザッハー」にはスィーツ以外の食事もあります。美味しかった!
気がついたら外に長蛇の列が。お店の人は「毎日のことです」と苦笑されていましたが、これを見て「予約しておいて良かった」と思いました。
Café Sacher Wien | Hotel Sacher Vienna
1.2 美術史美術館のカフェ
皇宮ホフブルクの向かいにある美術史美術館Kunsthistorisches Museumは、ブリューゲルやルーベンスなどを始めオーストリア最大のコレクションを誇ります。19世紀末に完工した建物そのものも豪華絢爛で、その一階にあるカフェが素敵!
食事メニューもあります。このカフェにはいつも観光客が列をなして並んでいるので、時間を無駄にしたくないなら予約をしておきましょう。
1.3 最古のレストラン・グリーヒェンバイスル
ウィーン最古のレストラン「グリーヒェンバイスルGriechenbeisl」は、モーツァルトやベートーベンも訪れた由緒あるレストランです。その割にお値段は普通。
レストランが創設された1447年頃(日本でいえば室町時代末期)、この界隈には東方貿易に携わった商人が多く住んでいました。そのためこのレストランは「グリーヒェンバイスル(ギリシャの料理屋)」とよばれるようになったそうです。
バイスルはイディッシュ語(東欧ユダヤ語)の「家」に由来するらしく、ウィーンの家庭料理店はよくバイスルと呼ばれます。「ご飯屋さん」みたいな感じですかね。
このレストランにはさまざまな飾りがあるので、入口の足元や壁も注意して見てください。
一番奥の部屋は「マーク・トゥエインの部屋」と呼ばれ、モーツァルト、ベートーベン、ワーグナー、そしてトウェインなどの著名人のサインがあるそうです。私が行った時には残念ながら貸し切りパーティ中で、奥の部屋には入れませんでした。ここが肝心だったんだろうに……
グリーヒェンバイスルには日本語のHPがあります。こちらで予約しておくのがいいでしょう。
2.三つの宮殿
ウィーンにはオーストリア・ハンガリー帝国の皇宮ホフブルク、そしてシェーンブルン、ヴェルヴェデーレという二つの夏の離宮があります。
2.1 皇宮ホフブルク
ウィーンの真ん中にあるホフブルクHofburgは13世紀に建てられ、1918年までこの国の中枢にあった宮殿です。この中にあるシシイ博物館Sisi Museumでいくつかの部屋を見ることができますが、大人気なので予約必須です。館内は写真厳禁です。
Sisis Aura spüren und erleben | Sisi Museum (sisimuseum-hofburg.at)
ホフブルク内には他に宝物館、大統領公邸、乗馬学校、図書館など様々な施設があります。
ホフブルクのイチオシは国立図書館プルンクザールPrunksaal。ヨーロッパに数ある図書館の中でも指折りの豪華さです。
Österreichische Nationalbibliothek - Startseite (onb.ac.at)
2.2 シェーンブルン宮殿
シェーンブルン宮殿Schloss Schönbrunnへは、ウィーン市内からU4のヒュッテルドルフ行きでシェーンブルン駅下車。駅からは徒歩7、8分でした。
シェーンブルン宮殿も世界遺産です。
女帝マリア・テレジアが財政難のため金の代わりに自身も好んだ薄い黄色でこの宮殿の壁を塗らせたことから、今もこの色は「マリア・テレジアの黄色」といわれます。
彼女以降ハプスブルク家が好んで逗留しただけあって、大きく優雅です。公開されている二階以外は、賃貸住宅として一般に貸し出しされているそうで……少しの間だけでも住んでみたい。
ここはとにかく人気。時間制になっていたのを知らず昼過ぎに行ったら、チケット発券時に15:40からと指定されました。
An Authentic Experience of Imperial Heritage | Schönbrunn Palace (schoenbrunn.at)
時間までの間、歩いて数分のレストラン「ヨーセフ2世Josef II」で食事。
ここは美味しいけど量が多い! 食べきれないので、夜小腹が空いた時に食べようと思ってテイクアウトをお願いしました。容器を持ってきてくれるので、そこに自分で残りを入れて持って帰りました。
多くのレストランでは同様の対処をしてくれます。
残すのは勿体ない! ぜひテイクアウトを活用してください。
Welcome to Joseph II. Das Schloss-Restaurant Schönbrunn (restaurant-schoenbrunn.at)
2.3 べルヴェデーレ宮殿
ベルヴェデーレ宮殿Schloss Belvedereへは、トラム(路面電車)D線アブスベルクガッセ行きで「ベルヴェデーレ宮殿」下車、徒歩3分くらいです。
上宮と下宮がありますが、上宮の美術館はオーストリアで二番目に大きい。ここにある有名な「接吻」を始めとするグスタフ・クリムト、エゴン・シーレ、クロード・モネなどのそうそうたる美術品は、ぜひ時間をかけて楽しみたいです。
またここはオペレッタ映画「会議は踊る」(1931)で有名な、フランス革命とナポレオン戦争の事後処理について話し合ったウィーン会議の場でもあります。あの映画のリリアン・ハーヴェイが可愛かった!
Belvedere Museum Wien | Besuch
3.フンデルトヴァッサーの建築物
3.1 フンデルトヴァッサーハウス
フンデルトヴァッサーハウスHundertwasserhausは、オーストリアの画家・建築家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(フルネームはもっと長い)の構想をもとに1986年に完成した集合住宅で、植物との共存を志したフンデルトヴァッサーの自由な想像力がふんだんに表されています。
トラムなどで色々な行き方ができますが、私は地下鉄U4のラントシュトラーセ駅から10分以上歩きました。
フンデルトヴァッサーハウスの周りには大勢の人だかりがあって、おみやげ物屋さんや屋台も出ているのですぐに分かります。それにそもそも、とても目に着く建物です。ここは普通の集合住宅として現在も使われているので、居住者や近隣の方々の迷惑にならないように気をつけましょう。
3.2 クンスト・ハウス
フンデルトヴァッサーハウスの東に接しているウンタレ・ヴァイスガーバー通りをまっすぐ北に5分ほど歩くと、クンスト・ハウスKunst Hausがあります。やはり遠目でもすぐに分かりますが、こちらは閉鎖中だったこともあってか、観光客は一人もいませんでした。
それにしても楽しそうな建物だなあ……中も色々凝っているそうなので、ちょっと住んでみたいですね。
フンデルトヴァッサーについては、こちらが詳しいです↓
Hundertwasser - Friedensreich Hundertwasser
この人は日本でもいくつか建築を手掛けています。
大阪にあるごみ処理施設はその一例で、ここは見学できます。
舞洲工場 - 大阪広域環境施設組合 (osaka-env-paa.jp)
4.中央墓地
中央墓地Zentral Friedhofは、世界でもっとも有名な墓地の一つです。
ここにも色々な行き方がありますが、とても広いので、有名音楽家揃いの32A地区を訪れたいなら、トラム11番や71番で行って中央墓地第2ゲート2. Torで降りるのが一番簡単でしょう。ゲートは1から3まであります。
32A地区には、モーツアルトの記念碑を中心にベートーベン、ブラームス、シューベルト、そしてシュトラウス父子(息子二人)などのお墓が揃っています。
そしてあの名作「第三の男」(1949)のラスト・シーンが撮影された並木道。
アリダ・ヴァリがまるでそこに誰もいないかのようにジョセフ・コットンを完璧に無視して歩き去る、これ以上ないくらい魅力的なシーンです。
この並木道は中央墓地内の教会カール・ボロメウス教会の裏側にあります。
Wiener Zentralfriedhof - Friedhöfe Wien (friedhoefewien.at)
ツェントラールフリートホーフ(中央墓地) - Google マップ
6.遊園地プラーター
中央墓地の並木道が出たら、プラーターPraterの話もしなければなりません。
プラーターは1873年のウィーン万博以来、現在も続くウィーン最大の行楽地です。大きな敷地内に緑地、競技場、見本市会場、そして遊園地や食事処、屋台などがあります。入園無料(ただし乗り物は各自課金)、ここが魅力です。
遊園地の内容は以前とは随分変わって、ジェットコースター系がかなり増えました。そのせいか地元の若者で溢れかえっています。気分転換に遊びたい方、小さなお子さん連れの方などにおススメです!
16、7年前に訪れた時ここは旧としまえんと花やしきを合わせたような昭和的風情で、来客も少ない雨の中メリーゴーラウンドでは何頭かの本物のポニーがグルグル回り、びっくり屋敷では切符もぎのおばちゃんが爆竹を鳴らしてお客さんを驚かせる役もしていました。でもそれじゃ、来客増加は見込めませんもんね。あのポニーやおばちゃんは、今どうしているんでしょう……
でもこれは健在!
「第三の男」ではこの観覧車のゴンドラの中で、オーソン・ウェールズがジョセフ・コットンにスパイの美学を語ります。見た目は多少変わりましたが、ゴンドラは当時の姿を模しているのか、それとももしや当時のまま……?
プラーターにも色々な行き方がありますが、私は地下鉄U1のプラーターシュテルン駅で降りて4、5分歩きました。
Prater Vienna (praterwien.com)
7.買い物はマリー・ヒルファー通り
地下鉄U3のツィーグラー通りで降りると、マリー・ヒルファー通りMariahilfer Straßeの真ん中に出ます。この辺りは地元ウィーンっ子が大好きなショッピング・ストリートで、週末になると大変な賑わいです。
洋服や雑貨、お土産などを探して歩くのもいいですよ。
おススメはタイラThailaという本屋さん。文房具や雑貨が豊富で、とても楽しいです!
Buchhandlung Thalia Wien – Mariahilfer Straße
Thalia Wien - Mariahilfer Straße - Google マップ
またこの通り沿いにあるマリアヒルフ教会Katholische Kirche Mariahilfも素敵です。この辺りの第6区はマリアヒルフという地名ですが、おそらくこの教会由来でしょう。
ヨーロッパはほとんどの教会が無料で入れますから、覗いて見てください。ただし神聖な場所です。静粛、脱帽を忘れずに。
8.聖ペーター教会とペスト記念柱
聖ペーター教会Katholische Kirche St. Peterはシュテファン大聖堂から歩いて3分です。NHK「世界ふれあい街歩き」で紹介されていたのを覚えていたので、入ってみました。
教会自体は12世紀からあったようですが、現在の建物は18世紀に造られました。東京と変わらない猛暑に疲れていたので、ちょっと失礼して中で休憩させて頂きました。涼しくて静かで、ホッとします。
聖ペーター教会を出たところに、ペスト記念柱Wiener Pestsäuleが立っています。1679年に猛威を振るったペストの終焉を記念して、皇帝レオポルト1世が建てさせたものです。
当時30年戦争で疲弊したウィーンを襲ったペストは、数万人の死者を出しました。その終わりが見えた時住民たちはどれほど嬉しかったことでしょう。コロナ禍を体験した今の私たちは、彼らの気持ちが少しは分かる気がします。
9. その他
他にもウィーンには見どころがたくさんあります。シュテファン大聖堂、オペラ座など最も有名な名所のいくつかは、今回はほとんど通り過ぎただけなので掲載しませんでした。
リングRingと呼ばれる旧市街の中心部は、全体が「ウィーンの歴史地区」として世界遺産になっていますから、ただ歩き回るだけで何かしら面白いものが見つかります。ガイドブックを片手に、ぜひぶらぶらしてください。
下の写真のようにオーストリアの旗があったら、そこは何らかの歴史や歴史的人物に関連した場所である証拠。がんばって説明書きを読んでみて下さい。新しい発見がありますよ!
また、フランス語で味付きパンを売っているお店のことを「ウィーン風パン屋viennoiserie」といいますが、その単語からも分かるように確かにウィーンはパンの種類が多いです。
チーズの種類も豊富ですから、ホテルで朝食に高いお金を払いたくない時は前日の夜にチーズとハムを買い、翌日の朝早く近くのパン屋さんでパンを買ってきて食べるのもいいですよ!
多くのパン屋さんは朝7時頃から開いています。早仕舞いするので、午後は気をつけてください。
それでは、長くなりましたがウィーンについてはこの辺で。
次回③は、ハルシュタットなど山の方のお話をしましょう!