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若草色の便箋、セピアの写真。
前略、この季節になると貴方を思い出します。夏の匂いがします。正確には、畳の匂いかもしれません。太腿にじわじわと汗をかかせながら、隣で正座をして、会話をしていたことがありました。その声は正しくそれの高さや幼さを保っています。残り香の如く、鼓膜にこびりついたままで。反芻できてしまうのです。今も尚。爛々と輝く星と、月と、真っ暗な空をも思い出します。お祭りで買ったラムネの味も、炭酸で刺激された舌が覚えてい
もっとみる若草色の便箋、シルクのリボン。
拝啓、春光うららかな季節となりました。巡り巡って、幾度目でしょう。あの時から、随分が経ちました。貴方は私を覚えているでしょうか。貴方が私を覚えていても、私は貴方を忘れるつもりです。時間が解決するなんて何を馬鹿なことを、と以前は思いましたが、それは決して虚構や欺瞞ではなかった。ようやく恋を忘れられそうです。
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『拝啓、春光うららかな季節となりました』から始まる手紙は若草色の便箋に9行、細々と