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許された男


あるところに物や人を捨てられなくて困っている男がいました。

物を捨てられない彼の家はゴミ屋敷のようになっていました。

暇を持て余す女の人たちは
そんな捨てられない男の世話をすることで、
暇を潰すことができたのでせっせと男のお世話をしました。

男が捨てられないゴミを整理し、身の回りの世話をするという生きがいを見つけた女たちは、どんどん活き活きとしていきました。

男は女たちがなんでもやってくれるので、
一人では何もできないようになっていきました。
男はだんだんと息苦しさを感じるようになりましたが、女たちは決して男から離れようとはしませんでした。
彼女たちは生きがいを奪われたくなかったからです。

人を捨てられない男はどんなことをされても人に嫌だと言えなかったので、
だまって彼女たちに従いました。

女たちに自由をすっかり奪われた男は、
あまりの苦しさに身動きが取れなくなってしまいました。

「誰か助けてください」

そう助けを求めると、一羽の鳩がやってきました。

「君が僕を助けてくれるの?」

男が言うと鳩はアカシヤの方向へ飛び立っていきました。
男は鳩を追いかけてアカシヤへ旅立ちました。
そこには男の記憶がありました。
遠いはるか昔、男がまだ別の男だったとき、
男はたくさんの物を躊躇なく捨てていました。
いらないものはなんでもゴミ箱に捨て、物を大切に扱うということができませんでした。
また、男は人もたくさん捨てていました。 
自分にとって役に立たないと思った人たちをどんどん捨てていたのです。
そしてもう好きではなくなった女の人たちもゴミでも捨てるかのように冷たく突き放していたのでした。

ああ、なんてことを僕はしていたのだろう。
神様、どうか罪をお許しください。
わたしが捨てたたくさんの物や人、女性たち、本当にごめんなさい。
あなたたちを捨ててごめんなさい。
泣きながら男は謝り続けました。

すると、男を案内してきた鳩が美しい女神に変わりこう言いました。
「あなたの罪は許されました。元いた場所に帰りなさい」
男は記憶のある場所から元いた自分の家に帰りました。

すると不思議なことに、今まで捨てられなかったゴミを整理することができるようになっていたのです。

家に居座っていた女性たちに対しても
「今までお世話をしてくれてありがとう、もう一人でも大丈夫、出て行ってください」と伝えることができました。

生きがいを失いたくなかった女性たちは、怒り狂って男を責めましたが、
男は何度も「出ていってください」と伝えることができたので、
女性たちはしぶしぶ家を出て行き、
男はやっと自由を取り戻すことができました。

めでたしめでたし。

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