読まない手紙

私の目には青い情景に佇む貴方の横顔が見えるわ。

また貴方は手紙をくれた。私の誕生日には現れず、手紙だけくれるなんてナンセンスよね。

私はその手紙を読まず机に置いて、

「読んでない手紙がまた増えてしまった」と思う。

貴方が話すことがあまり好きで無いことは知っている。そして私は何年も貴方の手紙を見ていない。一文も、一言も、私の名前を全て書いているのか、一部なのか、親愛なるがついているのか、それとも淡々と名前が書いてあるだけなのか。

毎回誕生日おめでとうと書いているのか、去年や一昨年の内容の続きを書いているのかさえ知らない。でも知る必要がない。

私にとって手紙が来たって事はただの時間の経過でしかないの。

人々は言葉にしなくては分からないという。でも反対も同じじゃない?手紙にしたって分からないのよ。

私は貴方に誕生日を祝って欲しい訳じゃない。それを分かって欲しい。

私は貴方の愛の言葉を並べた手紙が欲しい訳じゃない。それも分かって欲しい。貴方は今どこにいて、何をしているの?生存していることは分かっているのだけれど…。

ある年の雪の日、相当昔の話になってしまったけれど…、それが貴方に会った最後の日だった。とても寒くて凍えそうだった。

その時ちょうど熱を出して、でも雪を見たかったの、多分薄着だった。コートもマフラーもしていなかった気がする。で外に出たの。そしたら意識が朦朧として(相当凄い熱だったと思うわ)倒れたの。

そしたら、貴方が助けてくれて、私の部屋まで送り届けてくれたの。でも私意識がなくて、貴方は起きるのを待たずに仕事があるといっていなくなってしまったの。

私はその時嬉しくもあり、悲しくもあったわ。私は

「貴方が一人で何でも出来てしまうから助けなんて要らないんだわ。」とその気持ちを圧し殺した。

「貴方が生きていればそれでいい。」

そして1つの自信が芽生えた。貴方はどこにいても、私に何かあったら助けに来てくれるだろうと、貴方はぶっきらぼうでめったに現れず、人に迷惑をかける人だけれど、正義感が人一倍あることを知っている。世界が貴方に反対しても、私は貴方に賛成する。そして私はもうあのときのように若くはないのよ、分かっているわね。

日付を見ると、今日は貴方の誕生日ねと気づく。

お客が来たという。こんなに早い時間になんだろう?そして誰だろう?と―もうおそらく私は分かっていた。

急いで階段を降りて、逃げてしまわないように、帰ってしまわないようにと願った。

ドアを勢いよく開けると、ぶっきらぼうの目が少しだけ動いた。

彼は整った服を来て赤い薔薇を持っていた

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