The peace is crafted by….
夢など無い。自分の名前さえ無い。そんな俺がずっと心に思ってきたこと、それは平和だ。
平和は、奥深く、罪深く、分からないものだ
それは何十年、何百年経っても思う事だろう。決して武器を捨てることだけでは導かれない、平和にしようと言って実現できるものではない。
貧富の差は、いつの世でも、どの国でも起こりうる問題だ。人々は満たされたい。何か手に入れたい。より良いものにしたい。それだけなんだ。それには罪はない。当たり前の行為だ。だが、何処かで踏み間違え、いつか争いになる。今までの歴史がそうだった。人々全員争い嫌いではないし、人々が全員貴族なんてこともない。人々は生まれた地位を憎み、毛嫌いし、幸せになれないと嘆き苦しんでいる。
みんなが幸せ=平和 ではない。だから、武器を捨てることや平和を訴えることでも、少しは平和に近づくことができるということだ。平和に反対する人は一人でも無くし、そういう犠牲が無くてはいつまでも平和になれない。俺がそういう存在であったのなら、排除すべきだし、俺も納得する。一人でも平和主義者を殺せば、俺は反逆者だ。死ぬ覚悟はできている。俺から見れば普通のことであるし当たり前だった。
彼女と出会ってからだった。もうけっこう前のことだ。
彼女こそ平和主義者だった。俺は彼女のことを信用していなかったが、今では彼女は俺の平和のよき理解者でいて、守るべき大切な存在になったのは確かだった。でもそれに関して俺の脳は無視していた。平和が全てだったからしょうがないことだ。彼女も平和が全てだったから良かったんだ。
あるとき平和という状態が続くことになった。
そうすると俺はすることを終えてやることが無くなったことになる。俺はそこで初めて彼女のことと向き合った。
こんなに彼女のことを想っていると知らなかったんだ。俺はよく分からなくなった。彼女を好きなのか嫌いなのか。俺は久し振りに彼女の元を訪れた。そしたら彼女は薄着で外に出ていた。雪の夜でしかも、お嬢様なのにも関わらずにだ。案の定倒れた。まぁ無理も無いことだが…。彼女を彼女の部屋に置いて、仕事があるといって(本当は無いが)帰った。
答えは分かっていた。でも目的がないと踏み出せないものなんだ。
彼女の誕生日には手紙を送っていた。毎回書くことが無い。そして彼女が読んでいないことを知っていたので毎回名前を名字つきで丁寧に書いているだけだった。でもそれはそれで良かったんだ。愛しい人の名前を書くのはこんなに楽しいからだ。ん?愛しい人?頭がついていかなかった。好きか嫌いかだけではない。俺はある人に昔感情で行動するのは悪いことではないといったような気がするが、俺は全く自分の感情が分かっていない。俺の中には平和ということだけが刻まれて、それ以外は全く悟りを開いたように何もない俺だった。
「俺にはお前しかいないのか」何もない空に話しても何も変わりやしないし、何も生まれてこない。
「お前は………お前は俺のこと」遠い昔から分かっていた問いだったが、改めて考えてみると、彼女が俺のことをどう考えているのかさえ分からなくなってきた。
愛とは奥深く、罪深く、分からないものだ。
手を広げて太陽を隠す。
「俺にとってお前は欠けてはならない太陽みたいなものなのか?」
「今では平和と同じように欠けてはならないものなのか?」
何回も何回も考えた。でも答えは分かっているんだ。最後には
「お前には俺がいなくては駄目だ。そして俺もお前がいなくては駄目だ」の結論に行き着いた。
俺は彼女の元に行くしかないと思った、そして何故か正装、そして薔薇を持って彼女に会いに行った。彼女はバッとドアを開けたので少し驚いたが、気を取り直して口を開いた。
”俺の側にいてくれないか”と。
彼女は口をポカンと開けてしばらく何も言わなかった。そして口を開けたかと思えば、今何ていったの?だそうだ。だからもう一度
”俺の側にいて欲しい”といった。
だが彼女はまだ理解していなかったらしかった。
だからもう”俺と結婚してくれ”それだけ言った。
彼女は、私死ぬ気がするわ。何かの罰ゲームでしょうと言った。
俺はもう一度言う気はなかったから、今言ったことを無しにすると言った。
そしたら彼女は慌ててこのように言った。
「ごめんなさい。ちゃんとした答えを言いますわね……。私、この日をずっと待っていたの。貴方がいつまでも平和のことしか考えていない方だと知っていたから、いつになるか………とずっ……と、待っていたの……。だから、今日……この…話をしてくれて嬉しかった。ありがとう。私ずっと貴方の側にいるわ。」
彼女は途中泣いていたが、最後の言葉を言う頃にはいつものようにたくましい顔していた。俺はそれが誇らしかった。