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soeji
お祭り
地方の大きなお祭りにやってきた。
鬱陶しい梅雨も明け、待ちに待った夏が来たのだからドキドキするようなシチュエーションが1つや2つあってもいい気がするけど、残念ながらそんなものはない。
知り合いのお店を手伝うために、電車で2時間半もかかる場所へと繰り出したのだ。深緑がどこまでも続く田舎にわざわざ来るなんて、私も物好きだなと思う。
滝のような汗が止まらない暑さの中、浴衣を着て団扇を仰いでいる人達がなんだか可愛らしい。
「きっと見てもらいたい人がいるんだろうな。」
普段は寂れた商店街であろう場所が、今日ばかりは煌びやかな装飾品や露店で埋め尽くされている。
カラフルなわたあめ
大量のやきそば
ぴかぴか光るおもちゃ
揺らめく金魚
全て今日だけの娯楽なのだろうと、なんだか空しい気持ちに襲われたのは私だけだろうか。
あまいような、焦げたような匂いが立ち込める中で、
T-シャツ姿の私は思ったことを形にできないまま、
作り笑いを浮かべて店の前に立ち続けていた。
written by:美波すみれ
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