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映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』
もう上映終わりそうだし行くか、と『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』を観てきました。
ドキュメンタリーと銘打ってはいるものの、キーファーの具体的な活動についてや作品解説はなく、多くは詩と哲学で構成されているので展示&アトリエ見学ツアーみたいでした。ヴェンダース好きだからと前知識なしで観るのはかなり厳しいかも!
もう1点、何年か前にゲルハルト・リヒター展が開催されたときに、アートや音楽が担ってきた反戦などの文脈を丸ごと無視して観てしまうのは如何なものかとモヤモヤを感じていたので、「アーティストが政治を語るな」とか普段から言ってるような人にも向かない映画だなと思いました。(アーティストは思い通りの娯楽を生み出す玩具じゃないので、それぞれ主張があったりなかったりしてあたりまえ)
もちろん作品の見方は観賞者に委ねられているし知識があるから偉いというわけでは無いのですが、こういったタイプの作品やアーティストは一歩踏み出して歴史や時代背景、コンセプトを調べてこそではないかと。
ちなみにこの映画にぴったりな『反戦と西洋美術』(著・岡田温司)という書籍がちくま新書から出ているので、「観る前になに読んだらいいの」という人にはこれがおすすめ。
【筑摩書房公式サイト 『反戦と西洋美術』】
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480075291/
私も昨年読みましたが、キーファーあたりを知りたいなら最後の4章だけでも目を通せば大丈夫です。
一応記載されているアーティストを一部抜き出すと
1章…ルーベンス、ジャックカロ、ゴヤ、ドラクロワ、ジョンテニエル、アレクサンダーガードナーなど
2章…パウルクレー、オットーディクス、マックスベックマン、ポールナッシュ、ノーマンロックウェル、ヴァロットンなど
3章…マックスエルンスト、パブロピカソ、リアグルンディク、ヘンリームーアなど
4章…河原温、草間彌生、オノヨーコ、ジュディスバーンスタイン、トミウンゲラー、ヨーゼフボイス、ゲルハルトリヒター、アンゼルムキーファーなど
と盛りだくさんで、新書にしては図版も多いし良書でした。中にはビルケナウでゾンダーコマンドを担ったのち生還した画家も紹介されています。
映画に話を戻すと、ヴェンダースの相変わらずの静けさは心地よいですが、まあ上映館少ないのも納得かも。普段から芸術に興味がある人にだけ向けた内容に感じました。もう少し間口広げてもよかったような……。
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