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見世物小屋の花魁人魚 -最終幕-
見世物として張見世に飾られている間、人混みの中をひっきりなしに飛び跳ねてはこちらを見る青年。
「私がそんなに珍しければ見ればいい」
「どうせ貴方もこの群衆の中の一人なのだから」
さして気にも止めなかった。
そしてひとしきり格子の外の見物客が散り散りになった後、その青年はこちらへ近づいてきた。
その青年は花屋のようだ。
そして肩に担いでいた桶から一輪の蓮を取り出し、格子越しに手渡された。
「貴女がここ来てから、何と美しい方なんだと思い貴女に合う花を探していました」
「きっとお似合いになられると思います。では·····」
あまりの突然の出来事で一瞬理解が出来なかった。
しかし、気づけば人魚の目から涙が零れていた。
『私は·····美しい·····??』
ホロホロと零れる涙は蓮の花に落ち、瞬く間に綺麗な蓮が咲いた。
もし、またあの青年に出会える時が来たら、沢山の蓮の花を送ろう。
それが悲しみによって咲いた華でも。
一縷の望みを託し、今宵も「見世物小屋の人魚」として生きる。