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”スカボローフェア” ~世界一周旅日記~ チベット編 【第三章:第9話】雲と地平線の間
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12/29(心強い3人の味方)
朝7:30
ティンリ行きのバスに乗り込む。
8:30
8時出発の予定だが、
まだ出発しない。
人数が、まだ、そろってないのだろうか?
9:00
警官がバスに入ってきた。
おっとっと。
いそいでフードをかぶり、
平静を装う。
警官はキョロキョロまわりを見回し、
2,3分ほどでバスを出ていった。
9:30
やっと出発。
バスから撮った風景
13:00
ラツェに到着した。
検問がある!
警官がバスに入ってきた。
えっ?
いつもの警官とは様子が違う。
警官が1人1人の身分証をチェックしている。
まずい!
やりすごせるのか?
身分証の提示を求められたら1発で終わりだ。
寝たふりをする。
(身分証の提示を求められたらどうしよう。
どう見ても、僕はチベット人には見えない。
話しかけられたら中国人のふりをするしかない。
香港人のふりをして北京語が分からない素振りをしてみようか。
"ここの辺りの中国語は北京語である。
香港人達は広東語と英語を話すので北京語は理解ができない。")
だんだん警官が近づいてくる。
目をうっすら開ける。
隣のチベット人が身分証を提示している。
心臓がドキドキして、
息があらくなってくる。
起きていることに気付かれないよう、
息を止める。
運が、尽きたのか。
しかし、
警察は、
そのまま、
通り過ぎて、
僕には話しかけずに別の人の身分証を確認に行ってしまった。
(・・・・・・、ふぅ〜、助かった。)
16:00
バスはティンリに到着した。
ティンリは小さい村で、
高度が4000メートル以上ある。
エベレストのベースキャンプまではティンリからおよそ100キロメートル。
そのため、とても寒い。
バスの停留所らしきものは見つからない。
(ここからは、ヒッチハイクをするか。)
ヒッチハイクをするために町のはずれに向かって歩き出した。
すると、道ばたに座る3人のチベット人が話しかけてきた。
「どこに行くんだ?」
「ネパールに行きたいと思う?」
「そうか、そうか。俺たち3人も同じ方向だ。
俺たちはニャラムに行くんだ。」
「この村にはバスはないの?」
「バスはない。ヒッチハイクで行くしかないよ。
まあ、取り敢えずここに座りなさい。」
一緒にヒッチハイクをすることにした。
19:00
ヒッチハイクをはじめて3時間。
たまにしか車は通らない、
そして、通る車はエベレストに行く車ばかりで、
ニャラムやネパールへ行く車は見つからない。
さすがに寒くなってきたので、
今日はティンリのゲストハウスに3人のチベット人と一緒に
宿泊することにした。
安い部屋だった。
1人あたり、200円程度。
セメントの壁で覆われた部屋に、
無造作に、ベッドが6つ置いてある。
閑散としていて、外より寒い気がする。
めいめいが好きなベッドを選び、
同じ部屋で寝ることにした。
ゲストハウスの受付に、
「トイレはどこですか?」
と聞くと、
「トイレはないので、
外で、建物の影にかくれて用を足しなさい。」
と言われた。
ゲストハウスのオーナーはチベット人、
お客さんは僕たちと、あと2人のチベット人。
外国人は珍しいらしく、
夜は、僕をかこんでちょっとした宴会になった。
宴会といっても、
飲むのはお酒ではなくバター茶。
ギターが珍しいらしく、
ギターを弾くたびに拍手がおこった。
12/30(弱気)
朝、起きるとビックリした。
昨日紙コップに入れて飲んでいたお茶を飲もうとしたら、
なんだか、紙コップが固い。
あんなに熱々だったお茶が全部氷になっている。
なんて寒さだ!
朝8:00
ヒッチハイク開始。
昨日と同じく、エベレストを目指す車ばかり。
ヒッチハイクをしている場所、この道路で、たまに通る車をひたすら待つ
13:00
とうとう1台の運送用トラックがヒッチハイクを承諾してくれた。
このトラック、ニャラムまで行くらしい。
空きスペースの関係上、
1人だけこのトラックに乗ることが出来るということ。
3人のチベット人達は、僕に、
「俺たちは大丈夫だから、お前が乗ったらいい。」
と言う。
どうせなら、せっかくここまで一緒に頑張ってきたのだから、4人で行きたい。
僕は、
「スーガレン。スーガレン。(4人で行こうよ。)」
と繰り返した。
そうこうしているところで、
運転手が、僕の持っているギターを見て首を横に振った。
どうやらギターを入れるスペースがないらしい。
どのみち、このトラックに、僕は、乗ることができなかったようだ。
16:00
いまだ、ヒッチハイクは成功していない。
チベット人達3人はヒッチハイクを諦め、
「歩いてニャラムまでいく。」
とニャラムへ向けて歩いて行ってしまった。
ここからニャラムまではおよそ160km。
重い荷物も持っているのに、
なんてチベット人はタフなんだと思った。
タフな3人衆がいなくなった代わりに、
僕は、1人、ポツンと、
文明から忘れ去られた、
ほとんど人を見かけることがないこの町に、
とりのこされた。
羊飼が羊をつれて通り過ぎる。
ヒュー、ヒュー、という冷たい風の音、
その音以外、何も音がしていないこの場所で、
チリーン、チリーン
と羊の首につけた鈴の音が響く。
(寂しいな。)
よく分からないけど、
スカボローフェアの曲が頭に流れた。
20:00
あいかわらずヒッチハイクは成功していない。
日も暮れてきた。
今日も、昨日と同じゲストハウスに泊まることにした。
昨日とは違い、今日は1人だ。
騒ぐ気分にならないので、
すぐ寝ることにした。
この村に電気はない。
真っ暗な廊下をロウソクで照らしながら、
自分の部屋に行く。
ガランとしたセメントの壁がむきだしになった部屋。
部屋には6つのベッドが置かれている。
誰もいない。
昨日までは、
他のベッドに一緒にヒッチハイクをしていた、
チベット人3人衆がいたが、
今日は1人だ。
それとも今日からずっと、なのかな・
明日は、大晦日か。
日本は楽しいんだろうな。
飲み会とかしてるんだろうな。
飲み会か・
温かいオレンジ色のライト。
店をうめつくすたくさんのお客さん。
お客さん達の話し声、笑い声。
楽しかったな。
「はぁ。」
ため息がこぼれる。
ここは寒い。シーンとしている。
心細い。
眠れない。
泣きそうになってきた。
大晦日にはネパールにいる予定だったのに。
僕は、まだ、エベレスト近くの辺境の村で、
ヒッチハイクをしている。
マイナス思考が止まらない。
いつ、この村を出られるんだろう。
このままここで、力尽きてしまうのかな?
もう二度とこの村を出ることはできないのかな?
日本は温かいだろうな。
何で、
旅になんか出たんだろう・・・
12/31(大晦日)
8:00
大晦日・・
ヒッチハイク開始。
相変わらず、車はつかまらない。
10:00
ティンリの村から300メートルぐらい離れた地点に、
小さな集落が見える。
いつ車が通るか分からないから、
この道路を離れたくないけど、
少しだけ、
気分転換に、
村を離れて、
そこまで行ってみるか。
もしかしたら、ヒッチハイクに関しての新たな発見があるかもしれない。
とことこ集落まで歩いていく。
ふと、なんだか気になって、
ティンリの村を振り返ってみる。
んっ?
何だあれは?
・・
・・
バスだ!!
バスがティンリの村に止まっている。
なぜ、バスが?
ティンリの村にバス停はないはずだ。
と、いうことは、たまたま何かの用事で立ち寄っただけのバスか。
鼓動が早くなり出した。
(頼む。お願い!)
何をお願いしてるかは分からない。
バスがエベレスト行きでありませんように。
バスがヒッチハイクを許してくれますように。
バスがまだ出発しませんように。
バスが・・
とにかく全ての可能性に対して祈った。
今まで、ダラッとしていた体に、
力が入ってくる。
体が熱くなってくる、
息が荒くなってくる。
明らかに自分自身の気分がガラッと変わったのが分かる。
バスを見据えて、僕は、一直線に走り出した。
100メートルくらい走っただろうか?
鼓動がおかしくなってきた。
心臓が飛び出しそうだ。
まずい、これが高度4000メートルなのか!
<次号の旅日記は10月10日です!>
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