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”無くしたもの、もらったもの” ~世界一周旅日記~ チベット編 【第三章:第5話】雲と地平線の間

※前回までのあらすじ
外国人の入域が許可されていないチベット非解放地区。
そこを突破してチベットの中心地、ラサに辿り着こうと、
スミアキ、rio、デイブの3人は、
警察の目を逃れながら、
ヒッチハイクでラサを目指す。
途中、警察の検問に引っ掛かるも、
どうにか突破、しかし、急に車がストップしてしまう。


これまでの旅日記はこちらをご覧ください↓


12/15(無くしたもの、もらったもの)

12:00
「ドゥロロロ……ドゥ、ドゥ、ド……」
車のエンジンが、突然、止まった。


坂道を登っていたので、
車が後ろに下がっていく。

運転手がいそいでサイドブレーキをひく。
車が止まった。


運転手はエンジンをかけようとする。
「ドゥロロ…プスン、プスン…」


再度、エンジンをかけようとする。
「ドゥロロ…プスン、プスン…」


エンジンが、かからない。


運転手がバッテリーを指さす。
バッテリーがあがったようだ。


(他の車が通るのを待って、
その車に連結して、電力の補充を
するしかないな。)

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バッテリー修理中


しかし、
運転手には他の車を頼ろうとする様子がない。
口笛を吹きながら、
バッテリーをガチャガチャいじくっている。


たまに、バッテリーのコネクタ部分に唾をかけている。
唾をかけるたび、
バッテリーのコネクタ部分がバチバチを火花を発している。

(まさか、自力でバッテリーを回復させる気か?)


20分程して、
運転手が再度エンジンをかけようとする。

「ドゥロロロ、ドゥロロロ、ドゥロロロ……」

エンジンがかかった。


「チベット人は、車の故障はほとんど自分で直しちゃうからね。
日本のトラックドライバーも、この位、技術があればいいんだけどね。」
rioさんがつぶやく。



車は、また、おだやかな風景の中を進んでいく。
太陽が僕たちを照らし、春の陽気のようにポカポカしている。


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車から見える風景


次第に、うとうと眠くなってきた。
(そういえば、昨日、緊張していたせいで、
あまり眠れなかったんだよな。)

眠さのせいで、時おり、首がカクンと垂れる。


どの位、経っただろうか。


「ストップ!荷物が落ちた!」
デイブの叫ぶ声で目が覚めた。
一瞬で眠りの世界から現実の世界へ戻された。


頭がぼやけている。
何が起こったのか分からない。

だんだん頭がハッキリしてくる。
ハッ!として後ろを振り返る。


眩しい。目を細める。


真後ろのドアが開いている?


次第にハッキリと見えてくる。
開いたドアから、これまで走ってきた道が見える。
道の上に、点々と、荷物が落ちている。


車から外へ飛び出す。


荷物の半分くらいが落ちたようだ。
眠っていて気がつかなかった。
デイブも眠っていたのだが、
荷物の落ちる音で気がついたようだ。


いそいで、道路に落ちている荷物を集めて確認をする。


「ない!!
僕のバックパックがない!!」

バックパックの中には、
お金以外の全ての生活用具が入っている。


運転手が、すぐさま、
車にデイブを乗せたまま、来た道を引き返していく。


僕とrioさんは、
ガケから川にバックパックが落ちたのではないかと、
歩きながら、川をのぞき込む。


30分くらい探しただろうか?
やはり、川にはバックパックは落ちていないようだ。


しばらくして、遠くの方に、
バックパックを探しに行った車が、
戻ってくるのが見えた。


インドネシアで、
バスからバックパックが落ちた時にも、
無事にバックパックは見つかった。
今回も大丈夫だ。
デイブのニコニコした笑顔が想像できる。


車が到着した。
ドキドキしながら、
デイブの顔をみつめる。


その顔を見て悟った。
バックパックはもう戻らないことを。


デイブが言った。
「もし、無くなったバックパックが僕のものだったら、
僕はどんなことをしても探したいと思うだろう。
来た道を、もう一度戻って探そう。」

rioさんが言った。
「スミさん。戻ろう。」


ふと、思い出した。
バックパックには、
日本を旅立つ前に、
母親や友達からもらったお守りが入っていたことを。


時計は2:30を指している。
12:00に車のバッテリーがあがった時点では、
バックパックはあった。


2時間前後戻れば、
バックパックは見つかるはずだ。

僕もバックパックを探しに戻りたいと思った。


運転手にその事を告げる。
しかし、運転手の返答は以外なものだった。


運転手は首を縦に振らない。
そして、こう答えた。
「オレの荷物も1つ無くなった。
オレは自分の荷物を
もう諦めた。戻りたくはない。」


僕とrioさんとデイブの3人がいくら言っても、
運転手は首を縦に振らない。


rioさんが言った。
「しょうがない。この車で戻るのはもう諦めて、
ヒッチハイクをして、他の車を捕まえて、
今日、来た道を戻ろう。」


ヒッチハイクをするとなると、
また大量に時間を消費してしまう。
そんなことをすれば、
今日中にポメに着くのは無理になるだろう。

こんな非開放地区では、
滞在期間が長くなれば長くなるほど、
危険度は増してしまう。


rioさんはそんな危険をおかしてまで戻ろうと言う。
バックパックが無くなった痛みと、
rioさんとデイブの優しさが心にしみて、
涙が出そうになった。


(なんだよ、それ。
なんでそんなに親身になってくれるんだよ。)


気分が落ち着いた。
答えは出た。
次の言葉を発すれば、
永久にバックパックとは再会できなくなる。


でも・・・・それよりも大切なもの。


「もう、いいや。」
「なんか、無くしたものも大きかったけど、
それより、もっと大きいものを、もらった気がする。」


「本当にいいのか?」
デイブが、無理してるんじゃないのか?
というような表情で聞いてくる。


確かに無理はしている。
でも、これが原因で全員が警察に捕まるほうが嫌だ。


「大丈夫だ。
僕たちはチームだ。
チーム全員が警察にも捕まらず、
ラサに着くのが最優先だ。」


ようやくrioさんとデイブが了解した。
「ラサに着いたら、
靴下とTシャツとGパンをあげるよ。」
rioさんが言った。


「ありがとう。
友情の証として、大切にするよ。」
そう答えた。


「多分、お袋と友達のお守りが守ってくれたんだろうな。
だから、バックパックだけですんだんだ。」
僕は、ポツリと、
自分に言い聞かせるように独り言を言った。


車はポメへ向けて再度出発した。
このままポメまで順調にいくかと思われた。

が、


16:00
「ドゥロロ、ドゥロ、プスン、プスン」
また車が止まった。

(ふぅ~。今さらだが、ヒッチハイクをする車を間違えたか?)


どうやらガソリンぎれらしい。
運転手が顔をしかめている。

他の車が来るのを待って、
ガソリンを分けてもらうしかないらしい。

でも、この道路、車通りが、とても少ない。


長期戦を覚悟したのか、
デイブが道ばたでたき火をしだした。
寒いので、
皆、たき火で温まりながら車を待つことにする。


何台か車は通り過ぎて行ったが、
運転手が言うには、
ガソリンの種類が違うらしい。


待つことおよそ1時間、
5台目の車(ランドクルーザー)が来た。
運転手が言うには、
この車もガソリンの種類が違うらしい。


でも、これ以上、
もう、こちらも待つわけにはいかない。


長くお世話になったバンの運転手に、
お礼のお金を渡し、
ランドクルーザーを止め、
ランドクルーザーのチベット人の運転手との交渉をはじめる。


ランドクルーザーの運転手は、結構、
安値でポメまで連れていって
くれるという。

さっそくランドクルーザーに荷物を載せて、ポメへ向け出発。
さすがはランドクルーザー、
今まで坂道で時速2,30kmであえいでいたバンとは違って、
時速7,80kmのスピードでポメを目指す。



18:00
ポメに着いた。

ランドクルーザーの運転手は、
僕たちは外国人なので、
ポメからパーイーまでのバスのチケットは買えないので、
代わりに買ってきてくれるという。

ありがたい!!
今日中にパーイーまで行けるとは思わなかった。


18:30
パーイーに向けてバスが出発


19:00
道路工事のため足止め。


もう、こんなハプニングには慣れた。
いくらでも工事をしてくれ。


20:00
工事終了。再出発。


途中また検問がある。
バスを止めようと走ってくる警官が見える。


バスも早く目的地(パーイー)に到着したいのか、
中国人の言いなりになりたくないのか、
警官を無視して、検問を突っ切っていく。


バスは今までのうっぷんを晴らすかのように、
猛スピードで走っていく。


タンメをこえ、ルナンをこえ、ニンティをこえ、
どんどん主要都市を通過していく。

検問も、もう、いくつ通過したのか忘れた。



日が変わった24:00
パーイーに到着した。


宿はバスステーションの中にあり、
このバスに乗っている乗客が皆、
泊まる宿らしい。


宿では、身分証の提示も要求されなかったので、
「多分、大丈夫だろう。」
ということで、
この宿に泊まることにした。


明日にはラサに着く!


ラサ行きバスは、
宿の受付が言うには朝6:00発らしいので、
5:30に起きる。
ゆっくり寝なければ!!


就寝。

……
……
……
……
……

寝れない。
緊張と不安が入り交じって、
なかなか寝付けない。


暗闇の中、デイブのスヤスヤという寝息が聞こえる。
rioさんも寝れないみたいだ。
寝返りをうつ音が頻繁に聞こえる。

真夜中、3:30

やっと寝ることができた。

就寝。


<次号の旅日記は7月20日です!>

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