林芙美子の『浮雲』を読んで
三年越しで習っているペン字の課題を通して、林芙美子という作家に出会った。
日本文学の著名な作家達の名前は(本は読んでいなくても)知っていたつもりだったが、今に至るまで彼女の本と巡り合うことはなかった。多分、私が本を多く読んでいたイケイケどんどんの80、90年代には、彼女の作品から滲み出る廃退的な空気が合わなかったのだろう。
林芙美子さんは1903年下関生まれ、極貧と戦争を経験しながら強く逞しく生き抜き、その間に文学に目覚めた。そして、27歳の頃に出版した『放浪記』で一躍流行