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System:低料金ということは、現場が死んでいるということ。

「安い」「低料金」をウリにする塾は少なくない。

露骨にウリにすることはなれど、

「これは相場と比べたら結構安いぞ」

という授業料を提示している塾も含めれば想像以上に多い。

だが、学習塾が激務だというのはこれまで述べてきた通りだ。

その上で低料金ということはどういうことか、ここでは紹介しよう。

例えば集団塾で週2回(月8回)・1コマ90分の授業を取るのに授業料2万円かかるとしよう。

(念の為、個別指導でこの額はまずありえない)

2万円を8回で割ると、授業1回あたり2,500円。

1回90分だから、時給換算すると1,667円。

もうこの時点で恐ろしい数字が出ているだろう。

いくらここに入会料や教材費を入れられるとはいえ、

それ以上に諸経費・税金・塾運営側の取り分がある。

そして実際には休日も働くから、それも含めて時給換算しなければならない。

さて、実際に塾講師の手元に入ってくるのは…と考えてみよう。

このように、数学どころか算数ができれば全員必ず100%理解できるが

集団授業の塾は大量の生徒を抱え込まないと現場の講師が過労と生活苦で死ぬ。

どんなに少なくても一クラス最低10人は入れないと、

講師の人件費を削るか会社が赤字になるかのどちらかになる。

「ウチは少人数制で…」

「今ちょっと人数が少なくて…」

というのは生徒側からすればより面倒を見てもらえるから助かるかもしれないが、

実際に現場で教える講師からすればたまったものではない。

「ウチは低料金がウリです」

「生徒さんがより通いやすい・続けやすい良心価格」

というのは親御さん側からすれば経済的で助かるかもしれないが、

実際に現場で教える講師からすればたまったものではない。

個別指導塾ならともかく、集団塾で閑古鳥が鳴いているというのは

一刻も早く手を打たないと現場の講師が死んでしまう。

そうなると可能性は以下2パターンしか考えられない。

- タダ働き、またはそれに非常に近いことをしている
- 最低賃金(または実質それ以下)でも雇えるレベルの講師しかいない

私が知る限り、割合は半々だ。

まず前者についてだが、

「この仕事が好きだから」ということで頑張ってしまう講師がやたら多い。

元々自分の担当教科に熱心な人が多いわけだが、

そこにある種漬け込んで塾側は大量の仕事を任せてしまう。

その大量の仕事は持ち帰ることになるのは先述の通りだ。

そしてそれに抵抗がなくなる。

こればかりは「感覚が麻痺している」と認めざるを得ない。

(理由としてはそうしないととにかく目の前の授業がどうにかならないからである)

「働いた時間・能力・成果に応じて報酬がほしい」

という冷静なスタンスの人にとっては絶望的に向かない業界である。

また、後者は生徒側にも関わる問題になる。

前者で述べた構造を優秀な講師はさっさと悟って辞めてしまうため、

「ここしか仕事がない」というハズレの講師しか長期的に塾に残らなくなる。

より下世話な話をすると、

会社側は

「この講師は優秀で、人を呼べるし、成績も上がるし、合格者も出る」

と判断すれば黙って給料を上げる。

それに伴って価格(授業料)に反映させる。

そうしないと競合他社に引き抜かれてしまうし、

授業料に反映させないと会社が赤字になってしまうからだ。

そうしないということは、

少なくとも会社は「お前はこの程度の講師」と判断しているということだ。

概してそれは正しい。

積極的にそんなレベルの講師のお世話になりたいのなら止めないが、

もしあなたが

「せっかく通うのだから、うちの子はちゃんと見てほしい…」

と思っているのなら

「低料金」を謳う学習塾だけは止めた方がいい。

料金が安いということは

実際に教える講師が死にかけているか、

それ相当のハズレの講師しかいないか、またはその両方だからである。


…筆者、透佳(スミカ)


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